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プロV1は3層でテーラーメイドは5層を採用… ゴルフボールの構造は何がベスト? それぞれの「層」はどんな役割なの?
ゴルフボールの中でもツアーボールと呼ばれる種類は一般的に3層、4層、5層の構造になっています。単純に考えると3層より5層の方がレイヤーは多いので高性能なボールに感じてしまいますが、実際はどうなのでしょうか。
テーラーメイドが5層構造を採用する理由
ゴルフクラブは見ただけである程度の違いがわかります。メーカーによって形状やデザインも違いますし、ウエートポジションやフェースの素材も違います。
そして、ゴルフボールは白い球体。もし、ロゴがなかったら、異なるメーカーのボールを外見だけで判断するのは難しいでしょう。しかし、内部構造は全く違います。1ダース2000円代のボールはほとんどが2層構造(2ピース)です。

プロゴルファーが使っているツアーボールになると3層、4層、5層のボールがあります。例えば、世界ナンバー1の「プロV1ファミリー」は「プロV1」が3層、「プロV1x」が4層です。日本でタイトリストに続くシェアを誇るブリヂストンは「ツアーB X」も「ツアーB XS」も3層。日本の女子ツアーで大活躍している「スリクソン Z-STARシリーズ」は3モデルとも3層です。ただし、2021年モデルまで松山英樹選手が使っている「Z-STAR XV」は4層でした。そしてテーラーメイドの「TP5」と「TP5x」は5層構造です。
3層、4層、5層で何が違うのでしょうか?
そこで、市販されている大手メーカーで唯一5層構造を採用しているテーラーメイドのボール担当・田中桂さんに話を聞きました。
――3層でも4層でもなく、5層構造にしている理由は何ですか?
田中桂さん(以下、田中) それは5つの層にそれぞれの役割を持たせることで、全ての番手において最高のパフォーマンスを発揮させるためです。ゴルフの場合、クラブは14本あります。一番遠くにボールを飛ばしたいときはドライバー、150ヤード前後からグリーンを狙うときはユーティリティーやアイアン、グリーン周りではウェッジ、そしてグリーン上ではパターを使います。でも、ボールは1個だけです。本当はボールにもドライバー用、アイアン用、アプローチ用、パター用があればよい。でもルール上、それは許されていません。だからこそ、テーラーメイドは5層の構造をフル活用することで番手別に理想のゴルフボールになるような性能を追求しています。

――5層それぞれの役割とは?
田中 一番内部にあるコアはほぼドライバー専用の層です。5層の中でも最も軟らかい層。ヘッドスピードが速いドライバーだからこそ、一番内側にあるコアの性能によって弾道、スピン量、打感が変わります。2層、3層はコアより軟らかくすることによってフェアウェイウッド、ユーティリティー、そしてロング・ミドルアイアンでフルショットしたときに理想的な弾道、スピン量になるような設計にしています。4層目はやや硬めにすることによってアプローチでのスピン性能を高めています。最後の5層目(ウレタンカバー)は軟らかくて薄いカバーになっているのですが、4層目との組み合わせによってアプローチやパターの打感に影響します。これだけ細かく番手別に性能を追求できることが5層のメリットです。
――逆に5層にすることのデメリットはあるのですか?
田中 本音をいうと価格です。5層構造にするということはそれだけコストがかかります。
人気ツアーボールは何層を採用している?
一方、ツアーボールの主流になっているのは3ピース。世界ナンバー1ボールの「プロV1ファミリー」はボールの製造過程における製品チェックとボールの均一性によって、世界トップレベルのゴルファーから絶大な信頼を得ています。PGAツアーの使用率は約70%、日本男子ツアーでも使用率は50%を超えています。
その信頼につながっているのがボールの均一性です。タイトリストは自社工場で生産するのはもちろん、製造チェックや検品の精度を高めることによって世界ナンバー1の均一性を出しているといわれています。ちなみに3層の「プロV1」では1個のボールができるまでに90項目以上の検品項目数があり、4層の「プロV1x」になると120項目以上になるそうです。タイトリストはボールに関する特許を数千以上持っていますが、そのほとんどが精密製造に関するものです。
ちなみに「プロV1」の「V」はベニア(積層)という意味。2000年に誕生した初代「プロV1」は中間層を作り、3層構造にしたことでゴルフボールに革命を起こしました。
また「スリクソン Z-STAR XV」は2021年モデルまではデュアルコアの4層構造でしたが、2023年モデル・2025年モデルは3層構造にしています。その理由について開発担当者の神野一也さんは次のように話していました。
「もちろん4層構造によるメリットもあるのですが、3層構造にするとコアを限界まで大きくできます。コアを大きくすることはボールスピードアップにつながります。『XV』は飛距離性能を重視したツアーボールなので3層のメリットを優先しました。ちなみに4層のメリットとしてはコアを2層にして硬さの違いを出すことでアイアンのスピン量を高めることができたのですが、コアを1層にしてもその中で外側を硬く、内側を柔らかくすることによって同じような性能を実現しています」
ブリヂストンは「ファイズ」シリーズなどで4層構造のボールを作っていますが、「ツアーB X」と「ツアーB XS」はともに3層構造。その理由としてはブリヂストンの特許であるコアに水を入れたハイドロコアを採用したことによって、コアの中で内側を軟らかく、外側を硬くできるようになったからです。
ブリヂストンのボールはハイドロコア以降、PGAツアーではタイガー・ウッズ、ジェイソン・デイなどのトップ選手が使うようになりました。
各メーカーのコンセプトを考えると3層、4層、5層にはそれぞれのメリットがありますし、興味深いのは各メーカーのゴルフボールにはゴルフクラブと共通する個性があることです。
カーボンフェースという革新的なドライバーを開発し続けるテーラーメイドはボールにおいても最もチャレンジングな5層を採用しています。伝統や王道を重視するタイトリストは一貫して3層構造、4層構造を貫いています。ダンロップはクラブ同様にボールでもボールスピードにこだわった3層構造。ブリヂストンは独自の設計による3層構造を採用しています。
白い球体に見えるゴルフボールも3層、4層、5層によってそれぞれ特徴があります。その特徴を知っておくだけでゴルフボール選びのヒントになるのではないでしょうか。
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