よく行くコースですらどの人か知らない…ゴルフ場の「支配人」ってどんな仕事をしてるの？

　ゴルフ場には、利用者のチェックインや施設の案内を行うフロント係のほか、各組のラウンド状況を統括するマスター室、コースの手入れや修復を担当するコース管理まで、さまざまな職種のスタッフが勤務しています。

　そして、そのようなスタッフ全員をまとめ上げる重要な仕事を担う「支配人」と呼ばれる役職が存在します。しかし、普段ゴルフ場を利用するにあたって、支配人と会話をしたり具体的な仕事内容を知ったりすることはあまりないかもしれません。

　では、ゴルフ場の支配人はどのようなことをしているのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏（株式会社TPC代表取締役社長）は以下のように話します。

「支配人と言えば、ホテルや高級レストランにいるイメージが強いですが、ゴルフ場の支配人も似たような役割を果たしています。主な業務内容として、正社員のほか契約社員やアルバイトも含めたゴルフ場で働く従業員全員の労務管理が挙げられます。従業員によって早番や遅番、中抜けなどシフトスケジュールは多様ですし、セルフプレーを基本としていてキャディーがオプションとなっているゴルフ場では、キャディーのローテーションにおけるマスター室へのアドバイスや最終チェックも行います」

「さらに打球事故やカート故障をはじめとしたトラブルに対するマニュアル管理、レストランでは食中毒防止の監督、雑菌の繁殖を防ぐために浴場での水質検査まで業務内容は多岐にわたります。また、ゴルフ場運営に欠かせない集客や売上などの業績に関する責任を負ったり、施設や利用客の安全を確保したりするのも支配人の大きな役割となっています」

「非常に仕事が細かい人は、過去に蓄積した膨大なデータベースを駆使して『前年比でどのくらい利用客数が増減しているか』や『このような天気の日は予約枠がかなり余るから、料金を割引して一人でも多くの人に来てもらおう』などと逐一分析しつつ適切な采配を振っています」
　
　支配人はすべてのゴルファーが最初から最後まで快適にゴルフ場を利用してもらえるように最善を尽くすだけでなく、従業員に適切な労働環境を提供することにも日々努力しているといえます。

　また、一部では「営業支配人」や「レストラン支配人」のように部署ごとに特有の支配人がいて、さらにその上で各支配人をまとめる「総支配人」を設置しているゴルフ場もあるようです。

　では、支配人が実際に利用客の前に立って自ら接客をするようなことはあるのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「なかにはフロントなどで挨拶を率先してする人もいますが、多くの場合1日を通してお客さんが支配人と触れ合う機会はほとんどないでしょう。今ではチェックインから精算までかなり自動化が進んでいるので、従業員自体と接することも少なくなりつつあります」

「それも新しいビジネススタイルではありますが、館内を回ってユーザー目線で設備の不具合や管理が行き届いていない箇所がないか確かめながら、お出迎えやお見送りなどで積極的に利用客とコミュニケーションを取るのが、支配人のあるべき姿ではないのでしょうか」

　さらに、ゴルフ場の主催のコンペが開催された際には表彰式の司会を務めるときもあるほか、メンバーが収めた年会費の管理、同じ地域に属する別のゴルフ場の支配人との会議などもあり、ゴルフ場従業員の中で最も忙しい仕事といえます。

　ゴルフ場支配人の年収はおよそ400万～800万円と幅があり、「意外と低い」と思う人も多いかもしれません。そのうえ、ゴルフだけでなく経営に関するあらゆる知識や経験を持っていないと任せられないので、本当に大変な仕事といえるでしょう。