他のスクール生からの妬み嫉み
コロナ禍、リモートワークの普及による運動不足やストレス解消を目的にゴルフを始めた人が大勢います。女子プロゴルフ人気も相まって、令和のゴルフ人口は増加の一途をたどりました。
しかし、ブームが一服したいま、“リタイア”するゴルファーも少なくないようなのです。道具を揃えて握り方からゴルフスイングを覚え、ようやく初心者マークがとれそうな頃。「楽しくて楽しくてしかたがない」時期にやめてしまうなんて、いったい何に嫌気が差したのでしょう?身近にリタイアした人がいる知人に話を聞いたり、X(旧ツイッター)の呟きを読んだりして、その理由やいきさつを追ってみました。
そこで分かったのは、リタイアする理由は人それぞれですが、意外に多いのは“人間関係”が元でゴルフから離れてしまう人が多いことでした。
そんなケースを2つご紹介します。最初は30代の女性です。
「コロナ禍で時間ができたので、週1回、1クラス6~7人のゴルフスクールに入会しました。1クール3カ月を何回か更新した頃から月に1回くらい、レッスン後に時間がある人でお茶を飲む流れができたのです。最初は次のラウンドレッスンの予定や持ち物確認、ルールの復習などをしていたのですが、だんだん井戸端会議的な話題もでるようになって……」
「あるとき50代の女性が『あなたうまくなったわね。先生も、あなたにはよく教えているもの』と言い、その人の相方的存在の女性が『いいわね、若い人はすぐ気に入られて』と、追い討ちをかけてきたのです。『そんなことないですよ。でも一生懸命レッスンしてくれる、いい先生ですよね』と返しましたが、その人たちは私が先生にひいきしてもらえるように振る舞っていると決めつけ、陰で私の悪口を言い始めました。先生が私の打席でレッスンする回数や時間を計ったり、わざと一番目立つ打席に私を入れさせたり、ちょっとした嫌がらせを受けるようになっていったのです」
「それに気づいた年配のご夫婦が『あんなの気にしないほうがいいよ』と励ましてくれたのを支えに、悪口にも嫌がらせにも耐えていたのですが、しばらくしてそのご夫婦が隣の区へ引っ越すためスクールをやめることになりました。そこで私も、スクールとともにゴルフ自体をやめることに決めたのです。今では悪口2人組に会うこともないし、嫌な思いをすることもありません。たまに練習場の近くを通ると不愉快な記憶が蘇りますが、スクールもゴルフもやめて面倒な人間関係から解放されたので、よかったと思っています」
押しの強い新参者の出現でグループが変質
もう一つは40代の男性のケースです。
「“ツイゴル”(X=旧ツイッターを媒介としたゴルフ仲間の募り方)で知り合った数人でLINEグループをつくり、なんの取り決めも縛りもない、ゆるいゴルフの集まりに参加していました。誰かが「何日にゴルフに行きたい」と言い出したら、その日都合のいい人が参加表明する。仲間を連れてきてもいい。気が進まない時は既読スルーしても何も言われない。ところが、50歳くらいの人が入ってきて様子が変わりました。もともと私はLINEが苦手で自分の意見をすぐ返せるタイプではありません。『何日の件、一人足りません!〇〇さんは仕事休みだよね?』『〇〇さん、今ゴルフが上向きなのに行かないのはもったいないよ!』といった“押し”を跳ね返せず、ぐいぐい仕切ってくる、マウントをとってくるのに反感を感じつつ従いました」
「やがてその人が毎回車を出すようになって……。『待ち合わせは○時に△駅です。交通費は1人4000円。全員の荷物は無理なんで、誰か2人はキャディバをゴルフ場へ送っておいて下さい』。そんな調子でLINEが来ます。ほかの人の最寄り駅などお構いなし。指定場所へ行くのに2回も乗り換え、乗り継ぎ時間の関係で30分近く待たされたこともありました。女性がいると、帰りはどんなに不便でもその女性の最寄り駅のいくつか手前で降ろされます」
「私の不満を感じ取ったのか、その人がある日のゴルフに参加した数人で別のLINEグループをつくりました。それを知った時は『ああ、外されたんだ』とショックでしたね。でもだんだん馬鹿らしくなって、もういいやと思ったんです。仲間の進言によって私も別のグループに招待されたけれど、参加は見合わせました。元のグループからも退会。もうゴルフはやりたくないです」
スクールにしてもツイゴルにしても、そこで知り合った年齢も環境も違うさまざまな人とゴルフを楽しみたいと誰しも思うところでしょうが、人間関係が絡むと思うようにいかないこともあるようです。
ほかの理由でリタイアしたケースは、こんなふう。
「全然うまくならなくて心が折れました。運動神経にはわりと自信がありますが、周りの人はどんどん上達して真っすぐ飛ばすのに、一人だけ置いていかれる。ついには私より少しあとに始めた妻にも追い越され、ゴルフは自分に向いていないと悟ったのでやめました」
「思っていた以上にお金がかかる。プレー費、交通費、車を置いてから仲間との食事代も馬鹿にならない。ウエアも結構揃えたのに、季節ごとにいろいろ必要になる。友人の結婚式に続けて呼ばれた月は特に出費がかさんで悲惨だった。それを機に今はゴルフを休んでいる」
どの人もリタイアの決断に至るまでには切実な叫びや悩みを乗り越えていること、またゴルファーを取り巻く環境に社会の縮図があることを感じます。
とはいえ、せっかく始めたゴルフをやめてしまうのは残念です。ケガや病気をした、経済的に苦しい、心から楽しめない、といったときは無理せずゴルフから離れるのも手だと思います。いつかまた気が向いて、“お一人様ゴルフ”にふらりと参加してみたり、家族や旧友とラウンドしてみたり、フェアウェイを駆け回ってみたりしたい! そう思える日が来るといいですね。