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- 「目が右利きか左利きかで持ち球が決まる」は都市伝説!? 利き目のスイングへの影響 ゴルフ好き眼科医の見解は?
利き目がどちらかでスイングの傾向が決まるという説があります。いわく「利き目が右ならフック系」「利き目が左ならスライス系」。しかし、「自分は逆だけどな……」と疑問に思っていた人もいるのでは? 眼科医に見解を聞いてみました。
利き目とは“目の使い方の習慣”のこと
唐突ですが、筆者はドライバーやフェアウェイウッドが自分なりに得意クラブと認識していて、持ち球はフック系です。一方、アイアンショットは苦手で、まともに当たることが少なく、ダフりが多いのが悩みのタネです。
それは利き目である右目に頼ってボールを見るあまり、ダウンスイングで右肩が下がってクラブがインサイドから降り、ボールの手前をダフっているからではないかと自己分析をしていました。反対に、利き目が左目でボールを上から見る傾向がある人は、アイアンが得意な反面クラブがアウトサイドから降りやすく、スライスも引っかけも出るなどと考えているかもしれません。

こうしたスイングの悪い癖は利き目のせい? そう疑うアマチュアゴルファーは少なくないと思いますが、どうやら、利き目がスイングや球筋に影響するというのは都市伝説のようなのです。
利き目は“優位眼”とも呼ばれるものです。人口調査等によると、人の約90%がいわゆる「右利き」で、そのうち約70%は右の目が利き目。「左利き」の人の多くは左の目が利き目であるといわれています。ただ、そうしたデータがある一方、利き手と利き目との因果関係やメカニズムは解明されていないようです。
眼科の専門医の立場から「人には優位眼はありますが、それが右か左かによってスイングの癖や球筋の傾向が決まることはありません」というのは、小嶋良宏医師(千葉県・館山病院眼科部長)です。利き目とスイングの関係をゴルファーでもある小嶋先生に聞いてみました。
「利き目は目の使い方の習慣のようなものであって、その人が“より使っている”ほうの目を優位眼といっているにすぎません。例えば、利き目が右目の人はものを見るとき左目を使わず右目だけで見ているのではなく、必ず両目でを見ています。また、利き目のほうがそうでない目より機能が優れているとか視力が良いとかいうこともありません」
「人は二つの目でものを見ることで立体視ができます。3D映画で画面が立体的に見えるのは、両目で見ることで縦、横、高さという3次元の世界を認知できるからです。もし片方の目をつむってもう一方の目だけで見たら、飛び出して見えませんよね。縦と横だけの2次元となり、奥行きがなく平面になってしまいます。人間は両方の目でものを見ているから位置関係や遠近感を認知し、そして行動することができるのです」
「右手が利き手の人は、目の前のカップなどを持ち上げるとき何も考えず右手でサッとつかむでしょう? 利き目はそれと同じようなもので、“いま何時?”と聞かれた時は両目でパッと時計を見て、無意識のうちに優位眼をより使って時間を見ます。これが“目の使い方の習慣”です」
「ゴルフでも、意識的に片方の目をつむらない限り、利き目をより使ってはいても必ず両目でボールを見ていますよ。利き目がどちらかによってスイングが変わってしまったり、球筋の傾向が決まったりすることはないでしょう」
スイングそのものよりアドレスの向きに影響する可能性
とすると、なかなか直らないスイングの悪い癖や何度もやらかしてしまう同類のミスショットは、利き目のせいではなく練習不足が原因ということでしょうか?

「それは否めないところですが、ただし、感じ方の問題はあるでしょう。利き目をより使って見たものが“こう見える”“こう感じる”というのは人それぞれで、各人の感覚によります。その結果、スタンスのとり方や体の向きなどが違ってくることはあるかもしれません」
「試しに簡単な実験をしてみましょう。床のフローリングには線がありますね。線の延長上にある目標を両目で真っすぐ見て、その線に両足のツマ先を揃えて立ちます。つまり、ターゲット(狙い)に向かって両目で見て、自分が真っすぐだと思うアドレスを取ったわけです。しかしながら、片方ずつ目をつむってターゲットを見ると、右目で見るとやや左に見えるのではないでしょうか」
「実際のアドレスでは、ご存じのようにクラブフェースを目標へ向け(ターゲットライン)、これと平行になるようスタンスをとります(スタンスライン)。2本のラインは線路のようにどこまでも平行です。ところが、2本のラインがたった数十センチ平行に離れただけで、目標が左にあると感じるか、右にあると感じるかまで変わってしまうのです。この差が体の向きに影響し、右目が効き目の場合には、右方向へスタンスを取ることが多いと考えられます」
利き目がゴルフのプレーにどう関係するかはよく議論になりますが、眼科医の見解としては、スイングそのものの傾向を決定づけるとは考えにくいが、アドレスには影響を与える可能性があるということのようです。
コースには一切の水平や垂直のラインがないため、感じ方や見え方に応じて体の向きを錯覚し、その結果、真っすぐ目標に向いているつもりに陥ってしまうのかもしれません。ふだんフローリングのラインを利用してアドレスを真っすぐとる練習をしているゴルファーは多いと思いますが、さらにターゲットラインの延長にある目標が、左肩や胸の面に対してどう見えるか、どう感じるかまでチェックすることが重要といえそうです。
【解説】小嶋良宏(眼科医)
1993年、北里大学医学部大学院を修了。北里大学病院、市中病院勤務を経て、千葉県・館山病院眼科部長。ゴルフ歴は約20年。
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