迷い込んだ一般車がカートと衝突!? 敷地内を公道が走るゴルフ場が意外と多い理由

ゴルフ場内を走っている道路、てっきりコース管理車用のものだと思っていたら、一般の乗用車が走っていてビックリした経験はないでしょうか?

コース内の公道を走っていた自動車がカート道に侵入

「自動車とゴルフカートが衝突!」という事故がまれに起こることをご存じでしょうか。

 先月の海外女子メジャー、アムンディ・エビアン選手権で3位タイとなった西郷真央選手が乗ったカートが、大会の2日目の試合中に大会関係の車両と衝突。キャディーが車外に転落するという事故が起きたことをご記憶の方も多いと思いますが、日本でも珍しい事故が発生していました。

千葉県の某ゴルフ場。左に見えるのが公道でカートパスはトンネルを通り、両者が交錯することがないようにしている
千葉県の某ゴルフ場。左に見えるのが公道でカートパスはトンネルを通り、両者が交錯することがないようにしている

 東京都のゴルフ場関係者から聞いたこんな話があります。

「あんまりいい話じゃないんで、ゴルフ場の名は伏せてください」と前置きされて、説明してくれた内容は次のようなものでした。

 このゴルフ場、1カ所だけですがインコースのホールとホール間を結ぶカートパスを一般道が横切っています。そこを走っていた乗用車が、何を勘違いしたのかゴルフ場のカートパスを通って敷地内に侵入。それに気づいて停車したところ、折悪しく無人の電磁誘導カートが走ってきます。

「乗用カートはカート同士では反応して停車しますが、一般の自動車に対しては反応しません。それで衝突してしまったわけです」(コースの関係者)

 通常、車が入って来た場所には係員が待機しており、公道を渡る直前にゴルファーたちを降車させます。安全を確認しながらゴルファーたちは徒歩で一般道を横切り、ゴルフ場の敷地内に入ると再びカートに乗りこみ、次のホールに向かいます。公道を人が乗ったカートが走れないため、こうした措置が取られているわけです。その時はたまたま関係者がいなかったため、車が間違って侵入して事故を起こしてしまったというわけです。

 そもそも、ゴルフ場を一般道路が横切る事態は、どうして起こっているのでしょうか。日本ゴルフコース設計者協会の川田太三理事長にうかがってみると、こんな答えが返ってきました。

「人が住んでいるところにゴルフ場を造ろうとすれば、かならず道路との問題は出てきます。例えば霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)の西コースも公道が横切っていましたが、自治体との土地交換によって問題を解消した経緯があります。千葉カントリークラブの梅郷コースもそうですし、日本全国となればかなりの数に上ります。セントアンドリュース(スコットランド)の1番と18番を横切る公道もそうですね。あそこのスウィルカンバーン(クリーク)は洗濯用の川だったんですから。私が設計したコースでもたくさんあります。イーグルポイント(茨城県)も7番ホールと11番ホールに通っています。だからホールをどこに配置するか、クラブハウスをどこに持っていくか、(設計者は)いろいろ考えるわけです」

 ほとんどの場合、ゴルフ場が出来る前に道があり、その道がコースを横切る形になろうとも、安全性にも配慮しながらゴルファーたちがプレーを堪能できるように設計されているわけです。多くはアンダーパスなどで対応していますが、コロナ禍においては少しでも密を避けるため、カートだけトンネル内を走らせ、ゴルファーたちは降りて歩くという措置が取られたゴルフ場もあるようです。

歴史の古いゴルフ場には道路が後に出来たケースも

GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスの7番ティーイングエリア後方にある砂利道も実は公道。かつては公道越しにティーショットを打っていた
GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスの7番ティーイングエリア後方にある砂利道も実は公道。かつては公道越しにティーショットを打っていた

 しかしゴルフ場が出来た後に、道や鉄道が出来たケースもあります。

「オークモントカントリークラブ(ペンシルベニア州)は後からハイウェイが通されていますし、府中カントリークラブ(東京都)は後から地下を鉄道(京王相模原線)が通っています」(川田氏)

 後から高速道路や鉄道が通るとなれば、迷惑料も含めて相当な収入が入ることになりそうです。

 7番ホールのティーイングエリア後方を公道が横切るGDO茅ヶ崎ゴルフリンクス(神奈川県)の周辺は、木造住宅が密集しているためクラスター火災の発生が懸念される地域。ゴルフ場が広域避難場所としての役割も担っていたため、閉鎖が噂された折には存続を叫ぶ市民運動が展開されたほどです。

 そうした人口密集地でコース内を公道が通っているということは、それだけ市民の生活にゴルフ場が近いということ。そのため「近隣の皆様に開かれたゴルフ場にしたい、との考えから」(関係者)2階のカフェを一般客にも開放。「ワンちゃんも入店可」(関係者)であるため、犬の散歩がてら訪れる一般客も多いそうです。また、同コースでは今年の3月上旬にコロナ禍で修学旅行に行けなかった地元の小学生を招いて、ゴルフを含めた思い出作りのイベントを開催しています。

 ゴルフ場にとってはできればないほうがいいのが公道。とはいえ市民にとって、公道は生活していくうえで欠かせない存在。ゴルフ場と両者がお互いに認め合う関係になるためには、茅ヶ崎GLのように市民にコースを開放して、身近な存在として感じてもらうことが一番と言えそうです。

取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。

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風量は強・弱を切り替えられる
人感センサー付きで人が乗っていないときはストップ
真夏は熱中症予防のためになるべくカートに乗るのが賢明。送風機付きならなおさらです
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