ゴルフ規則から「ギャンブル」の記述は削除されたが…
“ニギリ”とも呼ばれる賭けゴルフの問題が、たびたび話題に上ります。
日本ゴルフ協会が定める「アマチュア資格規則」(2016年版)には、「アマチュアリズムに有害なその他の行為」の項に次のように明記されていました。

【7-2.アマチュアゴルファーは、規則の目的に反する行為を行なってはならない。その行為にはゴルフに関連してのギャンブル行為を含む。】
しかし、現在この記載はありません(2022年1月1日発効)。明記されていないから賭けゴルフをしてもいいのでは決してなく、そもそも日本では金銭を賭ける賭博行為が法律で禁止されており、ゴルフのアマチュア資格規則に明記するまでもないと受け止めるのが自然なのでしょう。
このような経緯を知ってか知らずか、練習グリーンやスターティングホール周辺では相変わらず「今日もタテ・ヨコ、“チョコレート”1枚ずつでいいですね」といった調子の人がいるようです。
ほとんどのゴルファーは「賭けゴルフをしてはいけない」ことを認識しています。にもかかわらず、「これくらいは…」「仲間うちでなら…」「断れないから…」など、自分に都合のいいようにエクスキューズをしがちですが、実際は違法行為をしているケースが少なくないのです。
「これくらいならいいだろう」の“これくらい”って、どのくらい?
「仲間となら」の“仲間”って、どれくらい親しい人? 家族は入るの?
「断れないから」巻き込まれたら、違法ではなくなるの?
“ニギリ”について自分勝手な解釈であやふやなまま流してしまうのではなく、今回は専門家の力をお借りして、法律に照らし、やってはいけないことの線引きをしっかりつけたいと思います。
多くのゴルファーが持つ疑問や不安に対して、回答と見解を寄せてくださったのは、船橋総合法律事務所の有村聡介弁護士です。
罰則は50万円以下の罰金又は科料
まず、賭けゴルフを禁止する法律からご紹介します。
【刑法第185条】
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
いわゆる賭博場とは縁もゆかりもない、健全なスポーツの場であるゴルフ場。そこで行うゴルフが、たとえ少々の“ニギリ”を伴ったとしても、“賭博”と表現されてしまうのは、どうも腑に落ちません。
何をもって“賭博”と認識されるのか、有村弁護士にお聞きしました。
「“賭博”とは、『偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪(得ること・失うこと)を争う行為』とされているため、ゴルフのスコアという、腕の差が影響するとしても、基本的には結果が定まっていない勝負を行い、スコアの多いほう(負けたほう)が何かをおごるという賭けゴルフは、まさに“賭博”に該当するものといえます」
「罰則は、50万円以下の罰金又は科料です(罰金と科料の違いはその金額のみで、科料は1000円以上1万円未満、罰金は1万円以上)。ちなみに賭博行為が処罰される理由(趣旨)は、『国民一般の健全な勤労観念や国民経済等の公益』を害するから、とするのが判例・多数説です。簡単に言えば、ギャンブルによって国民から労働意欲が失われたり、生活破綻する国民が多く出たりするような事態の発生を防止したいということです」
確かにゴルフの“ニギリ”は、法律用語で表現されるところの「偶然の勝敗により財物を争う行為」ということができます。ですから賭けゴルフはれっきとした“賭博”であり、処罰の対象になるのですね。
とはいえ、「労働意欲が失われたり、生活破綻する」ほどの“チョコレート”を賭けるゴルファーは、一般的にはまずいないと思われます。ほとんどの人は、例えば1000~3000円や昼食を賭けたりしているようです。