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- 伸ばすのは長くて5秒まで! 「ほぐれた~」ストレッチは朝イチショットにもケガ予防にも逆効果!?
スタート前に入念なストレッチを行ってからコースに出るというゴルファーは多いと思いますが、実はやり方によっては逆効果になることもあるといいます。スポーツ医学の名医に正しいストレッチ法を教えてもらいましょう。
スポーツ医学の名医が明かす“NGストレッチ”は心当たりのあるものばかり
ゴルファーはほぼ例外なく、ラウンドのスタート前やレンジでの練習前にストレッチを行ないます。
1時間も2時間も車に揺られたあと、急にクラブを振ったりボールを打ったりしたら、ケガをしかねないからです。朝一番からしっかりスイングするために体をほぐしておく必要もあります。

ところが……。
「スタートホール周辺では、『久しぶりのラウンドだからしっかりほぐしておかないと』と、一生懸命ストレッチをしている方をたくさん見かけます。しかし、スポーツ医学を研究している立場からみると、効果がない場合が少なくありません。むしろ、“やってはいけない”ストレッチをしている人が残念ながらほとんどなのです」
こう注意をよびかけるのは、医学博士で順天大学医学部非常勤講師をつとめる末武信宏氏(さかえクリニック院長)です。
“やってはいけない”ストレッチの典型は、
・片方の手を頭の後ろへ回し、反対の手でひじを持ち引っ張る
・片方の腕を肩の高さで伸ばし、もう一方の腕でひじの上を押さえ体に引きつける
・足を前後に開いて体重を前足にかけ、後ろ足のアキレス腱を伸ばす
など、おなじみのストレッチばかりです。
いつもこのようなストレッチをされていた方は、ショックを受けたかもしれません。
「一つ一つのトレーニングはよくても、やり方が間違っているのです。みなさんを見ていると、“引っ張る”“引きつける”“伸ばす”、この状態を30秒から1分くらいキープしている人がほとんどです。静的ストレッチをそれだけ長時間行なったら、腱や筋肉に過剰な負担がかかってしまいます。ゴムを長時間伸ばしたらどうなるか想像してみてください。張り詰めて切れるか、緩く伸びて戻らなくなるか…それと同じことをしているのです」
深い呼吸とともに行う“肺活”ストレッチで血流が行き渡り、スムーズに振れる
そのようなストレッチを行なっている人は、筋肉を伸ばすのは長くても5秒までにすることが重要です。もしくは、軽く反動をつけて行なうダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)に切り替えてもよいと末武先生はいいます。
「ウォームアップの目的は、まず体中の血流をよくし、それによって脳・神経・筋肉・腱・靭帯を連動させ、体がスムーズに動くように準備をすることです。それには リスクのない動的ストレッチで呼吸筋を刺激し、胸郭の可動域を広げる“肺活”ストレッチが最適です」
「“肺活”ストレッチは体への負担が少なく、器具を必要としません。そのため、いつでも、どこでも、誰にでも、短時間で行うことができます。跳んだり、走ったりするようなことはなく、ゆっくりした動作を伴うものが中心です。物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、深く呼吸をしながら体を動かすことで、肺に取り込まれた酸素が血流に乗って、体の隅々の細胞まで行き渡ります。スタート前の慌ただしいときでも、3分程度行うことによってたちまち全身が温まり、自律神経も整い集中力がアップしてクラブをしっかり振っていく準備が整います」(末武先生)
汗をかいたり息が上がったりするようなウォームアップは、トーナメントで優勝争いをするトッププロが何か目的をもって行うケースはあるでしょうが、一般ゴルファーにとっては筋肉が疲れたり傷ついたりしてしまうため逆効果。レンジでのショット練習もやり過ぎれば同じことになるといいます。
「“肺活”ストレッチさえ行えば、球打ちをしなくても、ラウンド前のウォーミングアップは十分です。時間があればその後にボールを打ってスイングリズムなどを確認するのもいいでしょう。ただし、息が上がるほど打つようなことはせず、20球くらいにとどめることが大事です」と末武先生はいいます。
さっそく次のラウンドから、ショット練習よりウォーミングアップ効果の高い“肺活”ストレッチを取り入れましょう。
モデルは、学生時代、陸上選手として活躍した経験を持ち、現在は“肺活”の豊富な知識をもってトップアスリートや一般の方々にコンディショニング指導をする五十嵐憲文トレーナーが務めてくれました。
1.手首揺らし(30秒×2回)/冷えた手先から血流を上げる

左手で右手首を軽くつかみます。強く握って右手首がロックされないよう、卵を包み込むイメージで。右手は手首を前後に折ったり、ブラブラ揺らしたりしましょう。早朝は手先が冷たくなりがちですが、血流がよくなり、指先の冷えが改善されます。30秒ほどで手を変えて同様に。カートに腰掛けて行ってもOK。
2.胸鎖関節のストレッチ(左右×5回)/「腕の始まり部分」を刺激

鎖骨と胸骨をつなぐ部分を胸鎖関節といいます。グリグリした出っぱりのすぐ下にあり、そこを人差指の付け根の内側でトントンと叩きながら、息を吸ってもう一方の腕を上げ、大きく息を吐いて下ろしましょう。腕を下ろすときは、前からでも後ろへ回しながらでもOK。まっすぐ立ち、力を抜いてゆっくり行います。
3.胸郭と腹筋群のストレッチ(5回)/胸郭を広げて腹筋を鍛える

足を肩幅に開いて立ち、ヒジを肩の高さに上げ、体の正面で両手の甲を合わせます。息を吸いながら手を回して腕を左右に開きます。手が耳の横に来たとき、手のひらが外側へ向くように。ここから、息を吐いて力を抜き、ヒジがワキ腹に当たるよう一気に腕を下ろします。再び甲と甲を合わせて繰り返しましょう。
取材協力/(株)ジャパンゴルフマネージメント
【解説】医学博士 末武信宏(さかえクリニック院長、順天堂大学医学部非常勤講師)

社団法人先端医科学ウエルネスアカデミー(AMWA)副代表理事、トップアスリート(株)代表取締役。第88回日本美容外科学会会長をつとめ、日本美容外科学会認定専門医としてアンチエイジング診療を行なうかたわら、プロゴルファー、プロ野球選手、オリンピック日本代表選手、格闘家、トップアイドルなどのトレーニングやコンディショニング指導など多方面で活躍している。http://www.n-suetake.com/
【トレーニング指導】五十嵐憲文(健康管理士/肺活チーフトレーナー)
AMWA認定トレーナー、トップアスリート(株)スポーツ医学研究開発部部長。順天堂大学体育学部(現・スポーツ健康科学部)卒。学生時代は陸上選手として活躍し、25歳で現役引退後はトレーナーに転身。ジュニアから高齢者、トップアスリートまで、幅広くトレーニングとコンディショニングの指導を行なっている。日本で数少ない肺活トレーナーの一人として活躍中。http://topathlete.co.jp/haikatsu/
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