関東のアマゴルフ競技で出場者が死亡 想像以上に危険な猛暑

7月10日、猛暑の中で行われた埼玉県でのアマチュア競技で出場者が死亡する痛ましい出来事がありました。大会開催そのものにも疑問符が付く状況で、欠場を簡単にできない大会で起きてしまったことでした。

危険な暑さでも簡単には欠場できない事情

 7月10日、名門・東京ゴルフ倶楽部(埼玉県)で、あってはならない悲劇が起きてしまいました。猛暑の中で「2023年(一社)関東ゴルフ連盟7月月例競技」に出場していたXさんが最終ホールをプレー中に倒れ、病院に搬送されたものの帰らぬ人となりました。

日差しの強い日のゴルフはくれぐれも体調に注意を 写真:AC
日差しの強い日のゴルフはくれぐれも体調に注意を 写真:AC

 Xさんは神奈川県出身。競技ゴルファーとして経験も十分に積んだ実力者でした。

 組み合わせ表では128名(男子100名、女子28名)が参加予定となっています。しかしこの緊急事態に、競技委員会は「7月月例男子の部は、競技不成立とします」と、選手に通達しています。

 現地にいた複数の関係者によれば、Xさんは17ホール目の8番で体調の不良を訴えベンチに横たわっていたそうです。それでも『あと2ホールだから』とプレーを続行。最終ホールのパットを打つ直前に倒れ、AEDによる応急処置を受けたものの意識は戻らず、救急搬送されましたが帰らぬ人となってしまったとのことです。また「その現場を目の当たりにしたキャディーさんも過呼吸と熱中症になり、1時間後に救急搬送されています。また、別の組でも1人が途中棄権しています」との証言もあります。

 今回の件で、多くの関係者が指摘している問題があります。それはこの「月例競技参加規定細則」の中に「競技日当日に欠場を届け出た者は1回、無断欠場は7回の出場停止とする」という項目があること。年間集計ポイントにより上位者は翌年の関東アマチュアゴルフ選手権など上位大会の出場権が得られるだけに、参加者には体調に不安を感じても、簡単に欠場を決められない事情もあるのです。

 現場の話をさらに詳しく聞くため、会場の東京ゴルフ倶楽部に正式に取材を申し込んだところ「その件は関東ゴルフ連盟さんの方に、お問い合わせいただきたいのですが…」との返答。

 主催の関東ゴルフ連盟(KGA)に問い合わせたところ、事務局長が対応。まず競技が中止になった理由について尋ねると「ある事故があったということです。その判断で競技を中止したということですね」と多くを語りません。そこでこちらが持っている情報をぶつけると「個人情報に関する問題なので、答えられません」とのこと。個人情報を守ることはもちろん大切ですが、今後、新たな悲劇を繰り返さないためにも事実関係は明らかにする必要があります。

 熱中症のガイドラインがあったのかについて尋ねると「ガイドラインはあります。一般的なものになりますので。基本的には」との答えが返ってきました。

 「この件については明日(7月14日)になるかどうか、KGAのホームページでそのことについて掲載することになっていますので、(これ以上)答える必要がない。これから会合があるんで、これで失礼します」と、一方的に電話は切れました。

 この間6分14秒。KGAがしっかりと事実を確認した上で検証を行い、今後につなげない限り、また悲劇が繰り返される可能性はあります。まずは14日以降に何を明らかにするのか、検証する必要がありそうです。

8月には同じ会場で「日本ジュニア」が開催される

 ティーチングプロの三觜喜一さんは「私のお客様も競技に参加していて、熱中症アラートが出ていて『朝から怖いぐらいの暑さだった』と聞きました」と話しています。

 実は大会の行われた東京ゴルフ倶楽部は、隣接する霞が関カンツリー倶楽部とともに、日本ジュニアの舞台となっています。今年も8月16日から18日まで、男女15~17歳の部が霞が関カンツリー倶楽部で、男女12~14歳は東京ゴルフ倶楽部で開催されることが決まっています。

 このことについて、これまでに多くのジュニアも育てている前出の三觜さんは疑問を呈しています。

「ジュニアも真夏の過酷な条件で、歩きのプレーをさせられています。『こんな状況を続けてはならない』と、これまでも発信しているのですが、なかなか改善してもらえない。今後のゴルフ界は変わらなければいけないと思います」と締めくくりました。

 まずは早急に熱中症のガイドラインを整備、発表し、全国のゴルフ場と競技を主催する関係者、プレーするゴルファーたちに周知徹底することが求められています。

取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。

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まずボールの進行方向側からグリーンフォークを入れて戻す
2~3センチあけて戻すを繰り返し、ぐるりと円状に
2~3センチあけて戻すを繰り返し、ぐるりと円状に
2~3センチあけて戻すを繰り返し、ぐるりと円状に
この時点でかなり戻っている
窪みが大きい場合は円を広げて、またぐるりと戻す
窪みが大きい場合は円を広げて、またぐるりと戻す
最後にパターで軽くトントンとならす。手で軽く押さえても良い
まず斜めにグリーンフォークを入れたら…
フォークのお尻を上げるようにして芝を寄せる
先端を上げるような使い方は芝の根を切るのでNG
日差しの強い日のゴルフはくれぐれも体調に注意を 写真:AC
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