生涯獲得賞金269万円の選手が3600万円獲得! メジャー制覇の川崎春花が塗り替えた数々の記録とは?

日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯はルーキー・川崎春花の大逆転勝利で幕を閉じました。初優勝がメジャータイトル、しかも19歳という若さ。そこで、今回の優勝がどれほど偉業だったのかをデータとともに振り返りました。

優勝前のメルセデス・ランキングは114位だった川崎春花

 19歳のルーキーが日本女子プロを制した衝撃は強烈なものだった。大会史上最年少優勝で、予選会を勝ち上がった選手の初戴冠など川崎春花が打ち立てた記録は枚挙にいとまがないほどだ。

 データをさらに掘り下げてみると、興味深いものが出てきた。それは「大会史上最大の番狂わせ」だったということ。つまり、データ的にみて最も実績がないまま女子プロ日本一に輝いたということである。

ツアールーキーでは優勝一番乗りとなった川崎春花 写真:Getty Images
ツアールーキーでは優勝一番乗りとなった川崎春花 写真:Getty Images

 昨年11月のプロテストで合格したばかりの川崎は日本女子プロ選手権大会コニカミノルタ杯がプロデビュー後ツアー11試合目だった。過去10試合中、予選を通過したのは半数に満たない4試合。最高成績はリゾートトラストレディスの29位タイだった。

 獲得賞金は269万円で賞金ランキングは112位、メルセデス・ランキングは114位だった。生涯獲得賞金に至っては735位に過ぎなかった。今回出場した選手の中でプロデビュー戦だった奥山友梨を除くと、川崎より生涯獲得賞金順位が低い選手は2人しかいない。

 アマチュア時代に日本女子オープンで11位という成績があり、ステップ・アップ・ツアーでの優勝歴はあるものの、プロとしてはツアー競技での実績はないに等しかったわけだ。

鈴木愛との類似点が非常に多い川崎春花の初優勝

 今年で55回を数え、女子ツアーで最も長い歴史を誇る日本女子プロで初優勝を飾った選手は樋口久子(1968年)、鈴木美重子(1981年)、鈴木愛(2014年)に続く4人目となる。

 樋口の場合は第1回大会であり、女子プロのトーナメント自体が始まったばかりだから同列には扱えない。鈴木美重子はプロ7年目で優勝こそなかったが賞金ランキングはコンスタントに10位台を続けていた。いつ勝ってもおかしくない実力を備えていたわけだ。

 鈴木愛は川崎以前で最大の番狂わせといえる状況だった。前年(2013年)の8月にプロテストに合格したばかりで、日本女子プロは前年10月にプロデビューしてから20試合目。川崎と似た足跡である。

 2014年は日本女子プロまでの15試合中10試合で予選通過を果たしていた。最高成績は12位タイで20位以内が5試合と、目立ってはいないもののそれなりに安定した成績は残していたわけだ。獲得賞金は717万2000円で賞金ランキングは67位。川崎よりずっと上の順位につけていた。

 鈴木愛の当時の生涯獲得賞金順位は調べ切れなかったが、735位の川崎よりも上だったことは間違いない。つまり、川崎は生涯獲得賞金ランキングが最も低い順位で日本女子プロのタイトルを手にした選手になったということだ。そして、鈴木愛は当時20歳128日で宮里藍が保持していた大会最年少記録を更新。無名選手の大金星はなかなかの衝撃度だったが、今回の川崎はこれをはるかにしのぐ「大会史上最大の番狂わせ」だったのである。

 鈴木愛と川崎は前年のプロテストで合格したばかりで、プロ入りしてから目立った成績を残していなかったという点が似通っているが、共通点はそれだけではない。川崎は8月下旬にステップ・アップ・ツアーの「山陰ご縁むす美レディース」で優勝していたが、鈴木も日本女子プロ優勝の前にステップ・アップ・ツアーで優勝歴があった。

 プロテストに合格したコースで開催された翌年の日本女子プロに勝ったということも同じ。鈴木愛の場合は美奈木ゴルフ倶楽部(兵庫県)で、川崎は城陽カントリー倶楽部(京都府)である。

 日本女子プロの会場が前年のプロテスト会場と同じというケースが以前から数年に1回程度あり、2018年からは恒例となっている。つまり、前年合格したばかりのルーキーはプロテストでの経験を生かせるというメリットはあるわけだ。ただ、それを加味してもこの快挙は色あせることはない。

 周知のように鈴木愛はその後、2度の賞金女王に輝くなど女子ツアーを代表する選手へと成長した。「番狂わせ」でつかんだ大きな勝利を自分の実力へと見事に変換したのである。川崎もこれに続くことを期待したい。

川崎 春花(かわさき・はるか)

2003年5月1日生まれ、京都府出身。2021年11月のプロテストに合格したツアールーキー。2022年8月に行われたステップ・アップツアー「山陰ご縁むす美レディース」でツアー初優勝を飾る。同年9月には予選会からの出場となった「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」でレギュラーツアー初優勝を果たす。所属はフリー。

【動画】優勝の前兆? 川崎春花が放った“衝撃”イーグルショットを実際の映像で
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