愛犬の名は「メル」と「ベンツ」 家族からの期待を一身に背負う照山亜寿美が優勝争いに名乗り出る

　優勝争いに顔を出した照山亜寿美。愛犬の名に込められた家族の“思い”が明かされた。

　第56回日本女子プロゴルフ選手権2日目。照山はボギーフリーの68で回り、通算5アンダーでホールアウト。優勝も狙える位置で決勝ラウンドに臨む。

　2016年にプロ転向し、同年のステップアップツアー・フンドーキンレディースで優勝した照山だが、昨年までの7年間、ツアーで稼いだ賞金はわずかに220万円でしかなかった。

　だが、QTランキング34位で臨んだ今年は、第4戦のアクサレディスで3位タイに入って一気に510万円を獲得。この結果が後押しして、第1回リランキングは30位となり、これまで26試合に出場している。

　予選通過は9回だが、うち3回は北海道での試合。本人も、ここで調子が上向きになる予感があったという。

　キーワードは“洋芝”だ。北海道のコースでは、日本で多く使われる和芝ではなく、細くて柔らかい芝が縦に成長する特徴を持つ洋芝が使われている。「私は上から（クラブヘッドを）入れちゃうタイプなので」と話す照山は、この洋芝でのショットを得意にしている。そのイメージを持ったまま臨んだことが、好結果につながっている。

「（自分には洋芝だと）クラブの抜けがいい。インパクトからフォロースルーへのフィーリング、いい感覚が続いています」と笑顔で話す。

　茨城県出身で岩瀬日本大学高等学校を卒業後、ホール・オブ・フェイマー（世界殿堂入り選手）のアニカ・ソレンスタムが主宰するアカデミー（米・フロリダ州）に約1カ月の“短期留学”を2度経験している。「あれがターニングポイントになったと思います。プロにもなれたし」と現在に生かしている。

　また、昨年から初めてコーチに見てもらうことを始めた。同じ練習場の縁で、ジュニア時代から知っているティーチングプロ・丹野宏紀氏と取り組んだのは、トラックマンを使ってデータを基にしたスイングづくりだ。

「感覚派だったので、データとのズレが大変でした。でも、今は自分でも理解できるようになりました」と、より自分のゴルフを深く知ったことが、実戦にも反映されつつある。

　コツコツと踏ん張る一方で、家族からは発破をかけられている。縁あって北海道で出会った2匹のシェットランド・シープドッグに、家族は「メル」「ベンツ」と命名したのだ。

　理由を尋ねると「恥ずかしいんですけど…」と口ごもりつつ、こう打ち明けた。「メルセデス・ベンツです。『ベンツ買ってくれないから』って家族に言われちゃって」と苦笑する。

　これが強烈な激励なのは言うまでもない。今大会で優勝すれば、賞金3600万円を使わなくとも、副賞のメルセデス・ベンツ「EQB250」も手に入れることができる。

　もっとも、照山自身は決して大風呂敷を広げているわけではない。公式戦である今大会へのアプローチも「いつもと変わらないプレーで、（2週後の）2回目のリランキングを突破し、（来年前半出場権のある）55位以内でもシード権を取りたいので」としっかりと地に足をつけている。

　この堅実さが武器に転じれば、大金星も夢ではない。

1994年8月6日生まれ、茨城県出身。2016年7月にプロへ転向し、同年9月のステップアップツアー「フンドーキンレディース」でプレーオフにもつれる戦いを制して、プロ初優勝を手にした。サザンヤードCC所属。