同一大会最年少「4勝」記録に挑む古江彩佳
今週の国内女子ツアー「富士通レディース」で大会3連覇に挑む古江彩佳。3連覇自体も偉業だが、実はもうひとつ記録がかかっている。達成すれば日本女子プロゴルフ界のレジェンド・樋口久子超えとなるその記録とは何か?
古江が「富士通レディース」に初めて出場したのは2019年。当時19歳でプロテストを間近に控えた時期だった。初日67、2日目65と好スコアを連発し、首位の三ヶ島かなから1打差の単独2位で最終日を迎えた。

最終日最終組でプレーするのはこの年6月の「リゾートトラストレディス」以来2回目。この時は単独首位に立っていたがスコアを伸ばし切れずに3位タイに終わっていた。
雰囲気に飲まれた前回の経験をふまえ、積極的に攻めた。6バーディー、1ボギーの67をマークして三ヶ島と稲見萌寧に2打差をつけて史上7人目のアマチュア優勝を飾り、プロテスト免除の特典もつかみ取ったのだ。
2020年は最終日に猛追及するも申ジエに2打及ばずの2位タイ。2021年は勝みなみとのプレーオフを制して大会2勝目、そして昨年は単独首位から岩井明愛を1打抑えて逃げ切った。つまり、4回の出場ですでに3勝を挙げているのである。
今年も勝てば3連覇と同時に大会4勝目となる。同一大会の4勝はこれまで19例達成されており、直近は2021年の「ニチレイレディス」で申ジエがやってのけている。
最年少での4勝目は樋口久子が1971年「日本女子プロゴルフ選手権」でマークした25歳。古江は現在23歳だから、樋口の記録を52年ぶりに塗り替えるチャンスなのだ。
いくら大会やコースとの相性がいいといっても出場5回目で4勝目を狙うという状況になることはそうはない。樋口の場合は女子プロゴルファーが誕生して間もない時期で出場回数がそのまま優勝回数という無双状態だったが、これは特別だ。
先ほど取り上げた「ニチレイレディス」の申は初出場の2014年から3連覇した後に3回足踏みがあり、4勝目を挙げたのは出場7回目。これでも相当に早い。ただ年齢面ではすでに33歳になっていた。
20歳代での同一大会4勝は樋口が3大会で達成しいているほかは、ト阿玉と不動裕理が29歳の時に1大会あるだけ。つまり19例中5例しかないのだ。
不動が29歳の時に4勝目を挙げたのは「伊藤園レディス」である。不動は「富士通レディース」でも2008年、32歳の時に4勝目をマークしている。ちなみに不動は今年も「富士通レディース」にエントリーしており、もし優勝すれば樋口(3大会)、日蔭温子、アニカ・ソレンスタムしか成し遂げていない同一大会5勝の大偉業となる。
同一大会での最多勝は樋口久子の「9勝」
では、同一大会の最多勝はどれくらいなのかというと、「日本女子プロゴルフ選手権」で樋口がマークしている9勝である。樋口は「日本女子オープンゴルフ選手権」で8勝、「東海クラシック」では7勝を挙げており、歴代上位を独占している。
備考になるが同一大会3勝目の最年少記録は畑岡奈紗が2019年「日本女子オープンゴルフ選手権」でマークした20歳である。古江が昨年の「富士通レディース」で記録した22歳での3勝目は歴代2位となる。

最後に、3連覇についてのデータを紹介したい。これまで同一大会3連覇以上を達成しているのは樋口(6例)、ト阿玉、森口祐子、大迫たつ子、ローラ・デービース、アニカ・ソレンスタム、申の7人しかいない。日本選手で最後に達成したのは大迫で1984~86年の「リクルートとらばーゆカップ」。ツアー制度が施行された1988年以降は外国選手だけである。
3連覇の最年少記録はト阿玉が1977年「広島女子オープン」でマークした22歳。古江は3連覇に関しては日本選手37年ぶりと歴代2位の年少記録がかかっていることになる。
古江は「富士通レディース」過去4回の出場で計50アンダーを叩き出している。1ラウンドあたりの平均ストロークは67.45という恐るべき数字だ。米女子ツアーのポイントランキング8位につける実力を持ってすれば、例年通りのプレーをすることは十分に可能。半世紀以上も君臨している樋口の記録を塗り替える歴史的瞬間を待ちたい。
古江 彩佳(ふるえ・あやか)
2000年5月27日生まれ、兵庫県出身。アマチュア時代の19年に「富士通レディース」でツアー史上7人目のアマチュア優勝を成し遂げてプロ転向。20年にプロ初勝利を飾り、アマチュア時代を合わせ国内ツアー通算8勝。賞金女王争いでは稲見萌寧にあと一歩及ばなかったものの、最優秀選手賞と新人賞に輝いた。昨季から米国女子ツアーに参戦し、トラストゴルフ・スコティッシュ女子オープンで同ツアー初勝利を遂げた。富士通所属。