自信を持ってクラブを振り続けた
◆国内男子ゴルフ<ダンロップフェニックストーナメント 11月16~19日 フェニックスカントリークラブ (宮崎県) 7042ヤード・パー71>
1メートルのウイニングパットを決めた後、両手の拳を空に向かって突き上げた杉浦悠太。史上7人目となるアマチュアでのツアー優勝を飾った喜びよりも、プレッシャーがかかる中、72ホールを回り切ったという達成感の方が大きかったのかもしれない。
実際、杉浦を襲ったプレッシャーはかなりのものだ。何しろ大会自体がツアープロなら誰もが出場したいと願うダンロップフェニックス。ジャック・ニクラスやトム・ワトソン、セベ・バレステロスらレジェンドが戦ってきた舞台であり、あのタイガー・ウッズが国内ツアーで唯一連覇を飾った大会でもあるのだ。

しかも、今年は50回の記念大会。マスターズチャンピオンの松山英樹やメジャー5勝のブルックス・ケプカらそうそうたるメンバーが参戦した。
その中で2日目からただ一人2ケタアンダーをキープし続け、最終日を2位に4打差でスタートしたのだ。「勝てるかもしれない」、「勝ちたい」という気持を抑え、トッププロたちが追い上げてくる圧にも打ち勝ち、コースとも戦わなければならない。
「ずっと緊張していました」というのは偽らざる気持だろう。そんな状態で1番パー4を迎え、いきなりボギーを叩く。そのままズルズルといってもおかしくなかったが、まだ2位以下とは3打差あったことが心を落ち着かせてくれた。
前半でスコアを1打伸ばして迎えたサンデーバックナイン。2位以下とは4打差あり、このまま逃げ切るのではないかと思われたが、11番パー3でダブルボギー、12番パー4でボギーを叩き、2打差に迫られる。
緊張が止まらなかったが、「自信を持って後悔することのないスイングをしようとだけ考えました」と、目の前の1打に集中した。
それが形となったのが、16番パー4のセカンドショットだ。ピンまで残り100ヤードをピン左1メートルにオン、そのまま沈めてバーディー。そのまま3打差で最終18番パー5を迎えられたのが勝因だろう。
「ウイニングパットを沈めた瞬間、本当に優勝したんだ、優勝できたんだと思いました」と笑顔を見せた杉浦。長かった72ホールを見事バーディーで締め、通算12アンダーで大会を終えた。
石川遼の存在がプロへの道を歩ませた
ところで、快挙を達成した杉浦とはどのような人物なのだろうか。01年9月生まれの22歳で、ゴルフを始めたのは4歳。日大ゴルフ部に所属し、18年の日本ジュニアで優勝し、昨年の日本オープンでは優勝した蝉川泰果に隠れたが、3位タイに入っている。
ナショナルチームのメンバーであり、昨年1歳上の中島啓太からキャプテンに任命された。ドライバーの平均飛距離は290ヤードというが、今大会では298ヤードを記録し、全選手中9位につけていた。
17年に石川遼が主宰するジュニア大会で優勝しているが、プロになりたいと思ったきっかけは、その石川がツアーで活躍する姿を見たからだという。
今回、ツアー規定で優勝賞金を手にすることはできなかったが、プロ宣言をしたことで、主催者の意向もあって副賞を手にすると同時に、来年からの2年シードも獲得した。
また、優勝賞金4000万円はそのまま2位の選手に与えられるが、中島と蝉川の2人がいたので、2位の賞金2000万円を足して2で割り、それぞれが3000万円を受け取った。
杉浦悠太(すぎうら・ゆうた)
2001年9月12日生まれ、愛知県出身。福井工大付属福井高校時代に「日本ジュニア」を制覇。2019年にはJGAナショナルチーム入りし、中島啓太からキャプテンを継承。日本大学4年時の2023年は国内男子下部ツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」でアマチュア優勝。その優勝で手に入れたチャンスを生かしレギュラーツアー「ダンロップフェニックス」で史上7人目のアマチュア優勝を果たす。