稲見萌寧が54年ぶりの“デビューから2戦連続トップ20”の快挙！ 過去選手のデビュー2戦はどうだった？

　米女子ツアールーキーの稲見萌寧が“樋口久子以来”の好スタートを決めた。

　今季開幕戦の「ヒルトングランドバケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」で19位タイだった稲見は2戦目の「LPGAドライブオン選手権」で8位に食い込み、ツアーメンバーデビューから2試合連続で20位以内に入った。これは、日本選手としては1970年の樋口久子以来、54年ぶり2人目の快挙である。

　これまで40人以上の日本選手が米女子ツアーに参戦してきた。世界最高峰のツアーといわれるだけあって、日本で実績を残してきた選手であっても、なかなか最初から好成績を残すことは難しい。

　たとえば、横峯さくらはツアーメンバーデビューから3試合連続で予選落ちを喫しているし、畑岡奈紗はデビュー戦が予選落ちだった。

　後に世界ランキング1位に上り詰める宮里藍でも48位タイ、24位タイ、56位タイ……と予選は通過するものの低迷が続き、初めてトップ10に入ったのは6試合目だった。

　日本勢最多の17勝を挙げ、1987年には賞金女王に輝いた岡本綾子ですら最初の2試合は28位タイ、18位タイと目立った成績は残せていない。しかも3試合目には予選落ちを喫している。

　デビュー2試合までにトップ10に入った日本選手は稲見以前に10人いたが、ほとんどがもう1試合は予選落ちなど苦戦している。1試合はうまくいっても最初から2試合続けて好成績を残すのは至難の業なのだ。

　唯一、デビュー戦から2試合連続で20位以内にまとめていたのは1970年に日本選手として初めて米女子ツアーに挑戦した樋口久子である。

　当時、まだ日本では試合が少なく、樋口は戦いの場を求めて佐々木マサ子とともに米国に渡った。まだQTがない時代で、特別承認という形での参戦だった。

　前年まで日本で5戦4勝2位1回と無敵状態だった樋口もさすがに初戦の初日はそれまで経験したことのない緊張感に襲われて78と崩れた。それでも2日目以降は持ち直して14位タイで終了。2戦目では9位タイで早くもトップ10に食い込んでいる。

　樋口は10年間、米女子ツアーでプレーして1976年に日本人初の米女子ツアー優勝を飾り、翌1977年の全米女子プロで日本人初のメジャー制覇を成し遂げた。日本女子選手海外進出のパイオニアとして今に続く道を切り拓いた偉大な存在だ。

　稲見は、そんな樋口と同じようなスタートを切ったわけである。

　開幕戦、稲見は初日から75、75と苦戦して2日目終了時では35人中34位に沈んでいた。これも、初戦の初日に78を叩いた樋口と似ている。

　稲見は3日目にベストスコアの66を叩き出して23位タイに浮上し、最終日は強風で難易度が増す中、72にまとめて19位タイに順位を上げた。後半2日間のみのスコア、138は全体で2番目にいいものだった。

　そして2戦目は3日目終了時で30位タイだったが、強風で平均ストロークが前日より2ストローク近く悪い73.544にまで落ち込んだ最終日に68をマークして8位に急浮上。2試合とも後半で調子を上げているところが心強い。

　2戦目の「LPGAドライブオン選手権」ではショットメーカーらしいデータを記録している。4日間のパーオン率が全体のトップタイとなる87.5％だったのだ。自分の強みをしっかりと発揮できた証拠ではないだろうか。この2試合を見る限り、今後が大いに楽しみである。

　米女子ツアーは3週間のオフを経て2月下旬からのアジアシリーズで再開する。現時点で稲見の出場が確定しているのはアジアシリーズ2戦目の「HSBC女子世界選手権」（シンガポール）になる。少し間が空くが、この勢いを維持してさらなる好成績を期待したい。