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PGAツアーは結局サウジマネーを受け入れるのかソデにするのか? 選手代表がルマイヤン会長と遂に対決!?
先週行われたPGAツアーのフラッグシップ大会、プレーヤーズ選手権は同ツアーのお膝元である米フロリダ州ポンテベドラビーチで毎年開催されている。今年はここにリブゴルフのスポンサーであるPIFのルマイヤン会長が現れ、選手会理事らPGAツアーの幹部と会うのではないかという噂で持ちきりだった。
「第5のメジャー」会場にPIFのルマイヤン会長が!?
先週、PGAツアーのフラッグシップ大会であり、シグネチャーイベントの1つでもあり、「第5のメジャー」とも呼ばれているプレーヤーズ選手権が佳境を迎えていたころ、戦いの背後では、こんな驚きのニュースが流れていた。
「PGAツアーの選手理事たちとPIFのヤセル・ルマイヤン会長の初会合が開かれる!」
とはいえ、昨今はPGAツアーとその周辺に次々に新たな動きが起こっているため、この初会合が何を意味するのか、なぜこれがニュースなのかが「分からない」「混乱している」という方々は少なくないのではないだろうか。
日本のゴルフ関係者やゴルフファンの方々から、しばしば聞かれるのは、こんな質問だ。
「昨年、PGAツアーとPIFは統合に合意し、和解したのではなかったのか?」
「PGAツアーとPIFが統合したと思っていたのに、なぜSSGという新たな名前が出てきたのか?」
「PGAツアー・エンタープライズって何?」
みなさんの疑問や質問に答える意味も含め、一連の動きと現状をあらためて整理してみよう。
サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の支援を受けて、グレッグ・ノーマン率いるリブゴルフが創設されたのは2021年のこと。
リブゴルフは翌22年6月にロンドン郊外で初戦を開催。フィル・ミケルソンを筆頭とするPGAツアーやDPワールドツアーのスター選手たちが、この大会でティーオフした直後、PGAツアーのジェイ・モナハン会長はリブゴルフへ移籍した選手たちのメンバーシップを即刻停止。このときから「PGAツアーvsリブゴルフ」の激しい対立、確執が始まった。
その後もPGAツアーのスター選手たちが続々とリブゴルフへ移り、すっかり勢いを増したリブゴルフは23年に創設2年目のシーズンを迎えた。
そんなリブゴルフを目の当たりにして、「もはやマネー戦争では勝てない」と悟ったPGAツアーのモナハン会長は、PIFのルマイヤン会長と水面下で接触し、「手を組もう」と秘密裏に交渉を開始した。
そして昨年6月、モナハン会長は、PGAツアーとPIFが統合に合意したことを電撃的に発表。PGAツアーはこれまで通り非営利法人として維持する一方で、営利法人の「PGAツアー・エンタープライズ」をPGAツアーとPIFが共同設立するプランも明かされ、世界のゴルフ界を仰天させた。
しかし、この統合合意も新会社設立案も、両会長が一方的に決めたものにすぎず、寝耳に水で知らされたPGAツアーの選手たちは「何も聞いていない」と激怒した。
モナハン会長の信頼は地に堕ち、以後はPGAツアーの選手理事たちが中心となって、PIFとの交渉を行う運びになった。
その選手理事の顔ぶれにも、さまざまな動きが起こった。PGAツアー選手の「顔」である王者タイガー・ウッズが初めて理事に加わったと思ったら、それまでは選手会を率いるリーダー的存在だったローリー・マキロイが、ある日突然、辞任を表明。マキロイと入れ替わりに理事になったのは、ジョーダン・スピースだった。
現在はウッズ、スピース、パトリック・カントレー、アダム・スコット、ウエブ・シンプソン、ピーター・マルナティの6名体制で動いている。
「PIFとの完全なる分断はPGAツアーにとって得策ではない」
そして今年1月末、ビッグニュースが飛び込んだ。ついに「PGAツアー・エンタープライズ」が創設されるという発表だった。
しかし、PGAツアーが手を組んで新会社を創設する相手は、PIFではなく、米コンソーシアムの「SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)」だったため、ゴルフ界は騒然となった。
PGAツアーとSSGはパートナーシップを結び、SSGから最大30億ドルの投資を得ること、両者で「PGAツアー・エンタープライズ」を共同設立することが発表された際、PIFの名前はただの一度も言及されず、「PGAツアーとSSGが手を組んだことで、もはやPIFは交渉の輪から除外されたのではないか?」という噂が飛び交い始めた。
そんな折、3月1日には「PGAツアー・エンタープライズ」の役員13名が発表され、いよいよ新会社が動き出すことになった。13名の役員の中には、当然ながらモナハン会長も含まれ、前述したPGAツアーの選手理事6名全員も名を連ねている。
残りの6名は、元PGAツアー選手で実業家に転身しているジェフ・オギルビー、PGA・オブ・アメリカの役員、そしてSSGの役員4名となっている。
気になるのは、モナハン会長と選手理事6名、それにオギルビーの8名は、PGAツアーにおける役職とPGAツアー・エンタープライズでの役職を兼務する「ダブルジョブ」となること。
こうした人事に対して、米メディアは厳しい視線を向けており、「試合で多忙な上に、ダブルジョブ。重責2倍は重すぎるのでは?」「選手理事6名は経営やビジネスに関してはまったくの素人。MBAはもちろんのこと、学士号すら取得していない人物も含まれている彼らに、巨大な組織、巨額が動くビジネスを任せるべきではないのでは?」と批判的だ。
理事たちの中でも意見や見方はさまざまに割れている様子で、理事たちと理事ではない他の選手たちとの間にも、スタンスの相違が見られる。
理事を辞任したマキロイは、理事時代はアンチ・リブゴルフの筆頭だったが、理事を辞任してからはリブゴルフとPIFに歩み寄る発言が目立ち、「リブゴルフ選手をPGAツアーに戻すべき」「誰かが誰かにペナルティーを科すのは難しいよね」などと語っている。
一方、SSGからの最大30億ドルの投資がギャランティーされたことで、「もはやPIFからの追加投資は必要ない」と言い切っているのはスピースだ。そして、ウッズもスピースと同様の姿勢を垣間見せている。
やはり理事の1人であるシンプソンは、6名の中では最もクールに現実を眺め、分析している様子で、こう語っている。
「PIFとの完全なる分断は、我々PGAツアーにとって得策ではない。PIFを交渉の輪から切り離してしまったら、激怒するであろうリブゴルフは、これまで以上にPGAツアーのスター選手を奪い取る行動に出る。今は金勘定をしている場合ではない。ゴルフというゲームとPGAツアーを永続的に保っていくための交渉を行なうべきときだ」
「PIFとの交渉は継続中で、加速化している」
思い思いの意見を示している選手理事たち6名は、いろいろ言いながらも、「ルマイヤン会長と直接会って話をしたことは、ただの一度もない」と言っていた。
モナハン会長はプレーヤーズ選手権開幕前の会見で「今年1月にルマイヤン会長と会った」「PIFとの交渉は継続中で、加速化している」「実りある結論が得られる日は近い」などと語り、これまでには見せたことがないほどの自信たっぷりの姿を世界に見せつけていた。
そして、TPCソーグラスでの戦いが決勝ラウンドに差しかかろうとしていたころ、ついに選手理事たちとルマイヤン会長との初会合が密かに開催されることが米メディアにキャッチされ、ビッグニュースとなった。
会合はプレーヤーズ選手権終了翌日の3月18日(月曜日)。TPCソーグラス(米フロリダ州ポンテベドラビーチ)の近郊あるいはバハマで開かれたとされる秘密会議では、PGAツアーとPIFの「今後」がどんなふうに討議されたのか。その内容は、続報をお待ちいただきたい。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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