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記者だけが知る「日本ゴルフ協会の不手際が露見した経緯」「選手が被った不利益」「これからJGAに求めること」

2024.04.24 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
アマチュア競技 中野麟太朗 日本ゴルフ協会 砂場Talk(バンカートーク)

日本ゴルフ協会は4月23日、2023年に行われた一部のアマチュア競技成績情報が世界アマチュアゴルフランキング事務局に適切に提出されておらず、同ランキングに反映されていなかったとして謝罪のリリースを報道各社に送信した。しかし、この件が露見したのは、実は20日近く前のことだった。

「23年の関東学生は、なぜか加算されていないんです」

 日本ゴルフ協会(JGA)から「世界アマチュアゴルフランキング登録競技 成績提出漏れに関するご報告」と題したリリースが配信されたのは、昨日(4月23日)の午後4時だった。

 それから20分ほどが経過すると、日本の各種メディアから「JGAが謝罪と再発防止策発表」「7大会の競技情報が提出漏れ」「国内開催7大会の成績が世界アマランキングに反映されない不手際」といった記事が次々に発信された。

 その様子を見て、「やっと、ここまで来てくれた」と、とりあえず私は胸を撫で下ろし、ほぼ1カ月ぶりに安堵した。

 というのも、今回のJGAのミスを発見する形になったのは、実を言えば、私だった。そして、「会見を開くなどしてJGAの不手際をきちんと世に伝え、再発防止につなげる姿勢を示すべきではないですか?」とJGAに訴えかけたのも私だった。

 そこから先のJGAの対応は、誠実なものだった。謝罪と再発防止策を記したリリースを配信することも、事前にお知らせいただき、その通り、リリースが配信され、日本国内に向けて報じられた。

「これで一件落着だ」と、一度は安堵した。だが、まだ肝心なことを伝えきれていないのではないかと思い始めた。

 伝えきれていない肝心なこと――それは、今回のJGAの不手際によって、「どんな人々が、どれほど翻弄され、どんなに心をすり減らしていたか」ということである。

 そこを伝えなくてはいけない。そう思った途端、私はPCを開き、キーボードを叩き始めた。

不利益を被ってもランクアップに前向きに取り組む中野麟太朗 写真:GettyImages
不利益を被ってもランクアップに前向きに取り組む中野麟太朗 写真:GettyImages

 私がJGAのミスを発見した経緯は、ある意味、偶発的なものだった。

 昨年の日本アマ覇者の中野麟太朗(早稲田大学3年)が今夏の全米アマ出場を目指していることを知り、父・恵太氏とやり取りをしていた3月下旬のことだった。

 恵太氏は「5月22日時点で世界アマチュアゴルフランキング(WAGR)100位以内に付けていれば、全米アマの本戦から出場する資格が得られる」と説明してくれた上で、日本のアマチュアにとって世界アマランクをアップさせることが、いかに至難の業であるかも説明してくれた。

 その際、「2022年の関東学生(選手権)のポイントは加算されたのに、23年の関東学生は、なぜか加算されていないんです。学連(関東学生ゴルフ連盟)が成績を提出することをやめてしまったんですかね?」と、落胆気味に話してくれた。

 23年の日本アマ優勝、日本学生2位だった中野選手は、23年関東学生では4位タイだった。

 その4位タイに応じたポイントがカウントされていたら、世界アマランクはどう動いたのか、なぜカウントされていないのかを「私も調べましたし、麟太朗も大学の先輩にお願いしたりして、さんざん調べましたが、結局分からないんです」。

 それを聞いた私は、その部分の真相を調べてみようと思い、独自で調査取材を開始した。

 世界アマランクを統括しているのは米国ゴルフの総本山USGAと欧州ゴルフの総本山R&Aである。学連からUSGAやR&Aへダイレクトに成績を提出するとは考えにくかったため、まずは日本ゴルフの総本山であるJGAに事情を聞いてみようと電話をかけた。

 得られた答えは「学連から送られてきた大会の成績は、すべてJGAから世界アマランク事務局(USGA、R&A)へ送っている」という内容だった。

 しかし、世界アマランク上の日本人学生の欄をくまなく眺めてみると、中野選手の父親が言っていた通り、「2022年関東学生」はカウントされているものの、どの選手の欄にも「2023年関東学生」の記載はない。

 もしかしたら世界アマランクの事務局側が日本の学連主催大会をカウントの対象から外してしまったのではないかという疑問を覚えた私は、USGAとR&Aに問い合わせた。

「関東学生、関西学生は、どちらも対象大会です」という返答がR&Aから飛ぶように返ってきた。

「でも、2023年関東学生はどこにも記載されていない。それはなぜですか?」と、さらに尋ね返した。

 すると、R&Aからは「2023年関東学生の成績は受け取っていない」という答えが返ってきて、仰天させられた。

「えっ!? カウントされていない?」と、ひどく慌てた学連担当者

「受け取っていない」ということは、学連あるいはJGAが「送っていない」ということになる。

 そこで今度は学連担当者に取材すると、担当者は「えっ!? カウントされていない?」と、ひどく慌てた様子になり、「私はすべてJGAに提出しました」と断言した。

 ただ、世界アマランクの規定では「大会終了後48時間以内に提出すべし」という時間制限があるといった詳細は「知らされていなかった」とのことで、「現場の事情や状況で、どうしても提出が少し遅れてしまったことがありましたので、もしもそのせいで学生たちの成績がカウントされなかったのだとしたら、それは私のせいだと懺悔します」と、泣きそうな声で正直に明かしてくれた。

 その様子は、日ごろから責任感を抱いて対応していることを如実に物語っていた。そして、この担当者が懺悔して心配していた「自分のせいかも」は、最終的には杞憂だった。

 私は「あとはJGAに事情を尋ねてみます」と伝え、電話を切った。

 それから数時間が経過した4月4日の夜、私の携帯が鳴った。電話の主はJGAの世界アマランク専任担当者だった。

「すべては僕のミスです」

 関東学生も関西学生も成績を送ることを忘れてしまったという告白の電話だった。

「中野選手やお父さんには、私から伝えましょうか?」と尋ねると、「僕から謝罪の電話を入れます」。

 ミスをした本人が自ら正直に名乗り出て非を認めたのだし、謝罪もするということだったので、「これで一件落着だな」と、とりあえず安堵した。

R&Aの迅速な対応に見た“ゴルフの総本山”としての自負

 しかしながら、中野選手にも父・恵太氏にも一向に謝罪の電話は来なかった。

 翌週、父・恵太氏から「JGAのHPに謝罪が掲載されている」という連絡をもらい、見てみると、確かにJGAの謝罪声明が4月8日付けで掲載されていた。

 だが、「被害」を受けた学生やアマチュアが、いつの間にか掲げられていた謝罪声明に気付くだろうか、見るだろうかと考えると、それは大いに疑問だった。

 中野選手や父・恵太氏と同じように、「自分のあの大会の成績は、なぜカウントされなかったのか?」と気を揉み、「あれがカウントされていたら……」と、悔しい思いを依然として抱いている学生やアマチュアゴルファーは他にも大勢いるはずで、そうしたゴルファー全員にきっちりと真実を伝え、彼らに謝罪するべきではないのだろうか。

 そう思い立ち、JGAの山中博史専務理事を指名した上で、「会見を開くべき事案なのではありませんか?」と問いかけた。

 山中専務理事は、「被害」を受けたゴルファーへの個別の謝罪はすでに行われたものと思った上で、HPに謝罪声明を掲示したとのことで、「本当に申し訳ない」を繰り返し、早急の個別謝罪を行うこと、再発防止策を検討すること、会見あるいはリリース配信の必要性を検討することを約束してくれた。

 そこから先は、前述した通り、誠実な対応ぶりを見せ、だからこそ日本の数多くのメディアからJGAのミスが次々に報じられた。

 だが、ここに至るまでの過程に、不安や疑問、焦燥感を覚えて気持ちをすり減らしたアマチュアゴルファーがいたこと、そうしたゴルファーを必死にサポートしている家族や関係者が毎日のように気を揉み、落胆や無力感さえ感じさせられていたことは、それを知り得たジャーナリストとして、やはり伝えるべきなのではないか。そう思ったからこそ、こうしてキーボードを叩いている。

 調査取材を進めていたとき、何度もやり取りしたR&Aの担当者のリアクションや対応は、日本と英国で時差があるにもかかわらず、非常にスピーディーで親切で、そして毅然としたものだった。

 R&Aは欧州ゴルフ、世界のゴルフの総本山であるという自負とプライドを抱き、そうした対応を「当然の責務」と考えて実践している。だからこそ、日本の一介のゴルフジャーナリストからの突然の問い合わせに対しても、懇切丁寧に、責任を持って、即対応するのだと私は思う。

 中野選手と父・恵太氏は、「もう成績がカウントされなかったことは忘れて、『この逆境』を跳ね飛ばして全米アマに出てやるぞと逆に燃えています」と、必死に前を向いている。

 JGAは日本のゴルフを統括する機関なのだから、日本のゴルファーの「逆境」になってしまっては意味がない。日本のゴルフに関わるすべての人々から、信頼され、尊敬され、「JGAがそこにいてくれて良かった」と言われる存在であってほしい。

 日本の若いプロやアマが次々に世界の舞台を踏み、活躍し始めている今だからこそ、JGAには「日本ゴルフの総本山」の名に恥じない存在になっていただきたい。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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