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PGAツアーの“少数精鋭化”に大乗り気!? トップ選手たちが感化された“MLB上層部のワークシート”には何が書いてあった?

2024.07.02 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
タイガー・ウッズ リブゴルフ(LIV Golf) ローリー・マキロイ 砂場Talk(バンカートーク) 米国男子ツアー

PGAツアーはタイガー・ウッズに、メジャーに次ぐ格の大会として位置づけられる「シグネチャーイベント」での生涯シードを与えることを決定した。その裏でツアー全体の少数精鋭化が議論されているとも伝えられている。

タイガー・ウッズにシグネチャーイベントの生涯シード

 リブゴルフが創設されて以降、混迷が続いているPGAツアーが往年の輝きを取り戻そうと試行錯誤しているという話は、先週もお伝えしたばかりだが、最近では、ほぼ毎週のように何かしらが発表されている。

最近リブゴルフ寄りの発言が多いといわれるローリー・マキロイは急進的な“少数精鋭化”論者に!? 写真:Getty Images
最近リブゴルフ寄りの発言が多いといわれるローリー・マキロイは急進的な“少数精鋭化”論者に!? 写真:Getty Images

 6月下旬の理事会で決定事項として発表されたことは2つあり、1つはタイガー・ウッズに来季からのシグネチャーイベント全試合に出場できる生涯シードを授けるというものだった。

 とはいえ、この決定事項の正確な表現は「通算80勝以上の選手にシグネチャーイベントへのライフタイムの出場資格を付与する」というもので、現状では通算82勝のウッズだけがこの条件を満たしているということになる。

 もう1つの決定事項は、来季からのシグネチャーイベントでは1試合の出場者数を最低でも72名以上にキープするために、シグネチャーイベント各大会ごとに補欠リストを作成し、欠場者が出た場合は補欠選手を繰り上がりで出場させるという内容だった。

 だが、米ゴルフウイーク誌によると、この2点以外にも熱い意見が交わされた事項が多々あったとのことで、それらは2026年からの実施に向けてこれから検討されていくべき「具体案」として保留されている。

 そして、その「具体案」は、いずれもPGAツアーの試合を少数精鋭化する方向性だという。

 たとえば、レギュラー大会の出場者数を現在の156名から120名へ絞り、各大会をより一層エリート揃いにすべきだという案がある。

 また、現在はフェデックスカップランキングの上位125名に翌シーズンの出場資格が授けられているが、来季からは上位100名までに減らすべきだという提案もある。

 ローリー・マキロイは「もっと減らすべきだ」と声を大にしている一方で、一気に減らす代わりに、まず125名から120名へ、次は120名から115名へと「段階的に減らすべきだ」という案もある。

 下部ツアーのコーン・フェリーツアー、あるいはQスクール(予選会)出身者にPGAツアー出場権を付与する人数も「減らすべきだ」という声まで上がっている。

 さらには、毎週毎週の連戦では心身ともに疲弊してしまって良いパフォーマンスが披露されないという理由から、「年間試合数を20~22試合に減らすべきでは?」という案も出ている。

 こうした声は、PGAツアーの大会を「もっと少数精鋭化して、スター揃いにするほうがファンの興味を引く」という考えの表れだと思われるのだが、そう考えているのは一部の上位選手たちで、下位選手たちに言わせれば「トッププレーヤーは大勢の選手を締め出そうとしている」「上位選手は自分たちの利益しか考えていない」。

 だが、そうした批判に対して、上位選手たちは、こんな反論も用意している。

「締め出そうとしているわけではない。実力と即戦力を示せば、すぐにでもPGAツアー入りができる新たなシステムも考えている。たとえば、コーン・フェリーツアーのいくつかの大会を“コーン・フェリーのメジャー大会”に認定し、それらの優勝者は、シーズンの途中であっても、即刻、PGAツアー選手に格上げするという新たなシステムは、いかが?」

「これは、ほとんどこじつけだが、役に立つ」

 こうした提案は、これまでのPGAツアーでは議論のためのテーブルに乗せられたことがなく、ある意味、斬新な内容だが、こうした議論が活発に交わされている背景には、野球のMLBの上層部で使用されているスプレッドシート(ワークシート)の存在があると、米メディアは指摘している。

 PGAツアーがパートナーシップを結んだ米コンソーシアム「SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)」の役員の1人が、このスプレッドシートをPGAツアーの理事会で紹介したことで、選手理事や一部の選手たちの考え方や姿勢が変わってきているのだそうだ。

 スプレッドシートの1行目には、「これは、起こりうることで、役に立つ」と記され、次の行には「これは、まず起こりえないことだが、役に立つ」。その次の行には「これは、ほとんどこじつけだが、役に立つ」と書かれている。

 一見、現実的ではないと思われることや、ありえないと思われることでも、実際に取り入れてみると、非常に有益なこともある。常識や前例、慣習や慣例にとらわれず、柔軟な思考と姿勢でモノゴトに取り組むことを推奨するためのステップが記されたスプレッドシートだが、この文言に刺激されたPGAツアーの一部の選手たちのツアー改革へのモチベーションが上がっているのだとすれば、この傾向は、必ずしも悪いものではない。

 だが、思いつきのように刹那的にモノゴトを決めようとすることで、ツアーとしての方針に一貫性が見られなくなってしまったら本末転倒である。

 実際、PGAツアーの各大会を「少数精鋭化するべきだ」という提案は、昨今、PGAツアーがUSGAやR&Aと足並みを揃えながら取り組んできた若い選手のためのパスウェイ(道)の創設とは、相反するものがある。

 米カレッジゴルフの選手たちを大学卒業後にPGAツアーやコーン・フェリーツアー、PGAツアー・アメリカスへダイレクトに導く「PGAツアー・ユニバーシティー」や、世界のトップアマチュアにツアーへの扉を開く「グローバル・アマチュア・パスウェイ」は、これからキャリアを築こうとしている選手たちのためのシステムだが、PGAツアーの大会がどんどん少数精鋭化されて門戸が狭められてしまったら、果たして若いゴルファーのための道や扉は、開かれたのか、狭められたのか、分からなくなってしまう。

 扉をどのぐらい開き、どのぐらい閉じるべきか。その調整とタイミングこそが、これからの課題となるのではないだろうか。

シニアツアーを「45歳以上」にして中年選手をお払い箱に?

 ところで、昔も今も「50歳以上」が参加条件となっているシニアのチャンピオンズツアーの門戸を「もっと開くべきだ」という声も実はある。

 50歳ではなく「45歳以上なら出場可」とすることで、チャンピオンズツアーは今まで以上に活性化されるという提案だ。

 しかし、逆にこの案は「PGAツアーから45歳以上の選手を締め出そうとしているものだ」「熟年選手の追い出し策だ」という声も上がっている。

 現実に目をやれば、21年の全米プロではフィル・ミケルソンが50歳でメジャー優勝を果たすなど「まだまだ45歳、50歳は若い」という見方はもちろんある。

 しかし、ゴルフ界の統計家ジャスティン・レイ氏の統計によると、00年から13年ごろまではPGAツアーにおける40歳以上の優勝者は全体の18.2%を占めていたのに対し、13年から14年ごろには、その数字は8.4%へ大幅低下。20年から現在までは、スチュワート・シンクが47歳で挙げた2勝(20年、21年)、ブライアン・ゲイが48歳で挙げた1勝(20年)、それにミケルソンの21年全米プロ優勝などを含めても、わずか4.8%に留まっているのだそうだ。

 そうなると、統計的には45歳以上の大半の選手はPGAツアーの試合に出たところで「戦えない」「勝てない」「ファンを惹きつけられない」と見なされ、そうした選手は締め出して少数精鋭化しようという話になりつつある様子である。

 PGAツアーの少数精鋭化も試合数の縮小も45歳以上の選手をシニア行きとする提案も、MLB方式の斬新な改革案と言えば聞こえはいいのだが、実際はひたすらリブゴルフ化しているように感じられる。

 最終的には、「これらの提案の検討には、もっと時間が必要。結論と実施は26年以降」とされたことには、ちょっぴり安堵。慌てず、焦らず、じっくり検討していただきたい。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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