- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 短く刈れないグリーン…「28アンダー」記録生んだコース状況どう捉える? 「夏に九州」は無理!? 管理に協力の農学博士は
短く刈れないグリーン…「28アンダー」記録生んだコース状況どう捉える? 「夏に九州」は無理!? 管理に協力の農学博士は
国内女子ツアー「大東建託・いい部屋ネットレディス」は川崎春花がツアー歴代最少スコアの通算28アンダーで優勝した。あまりにも遅いグリーンに、この時期に九州開催は無理があるのでは? といった疑問も囁かれるが、コース管理に協力した農学博士の明石良氏に話を聞いた。
コーライの管理ができるグリーンキーパーが少なくなっている
◆国内女子ゴルフ
大東建託・いい部屋ネットレディス 7月18~21日 ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(福岡県) 6505ヤード・パー72
地球温暖化がどんどん進み、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature=暑さ指数)がひどくなっている。屋外で長い時間を過ごすスポーツであるゴルフは、その影響を思い切り受けることになる。
川崎春花が通算28アンダーで優勝した「大東建託・いい部屋ネットレディス」は、梅雨も明けないのに猛暑の福岡県、ザ・クイーンズヒルGCがその舞台。好スコアの理由としては、ウェットでよく止まり、刈り込むことが難しくスピードが出せないグリーンがあり、その上でバーディー合戦を売り物にするコースセッティングがあった。
ツアー競技では、選手、キャディー、ギャラリー、そして関係者などの人間が熱中症の危険にさらされるのと同時に、ツアーの舞台であるゴルフ場には欠かせない芝も、暑さと戦っている。
そんな状況で、夏場も2週を除き試合が続く日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)には、今年1月から助っ人が加わっている。明石良氏。宮崎大学理事・副学長の農学博士(アグロノミスト)で、芝のアドバイザーとしてJLPGAと契約を結んだ専門家だ。
「もともと植物屋です。牛の餌としての牧草地の管理が専門で、そこから高麗芝の研究を続けてきた」という明石氏。地元・宮崎が舞台の「アクサレディス in 宮崎」の第1回大会(2013年)に向けてコースから依頼を受け、芝の管理と同時にプロの大会特有の事情を考え、セッティングを支えてきた。
JLPGAとの縁は「JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」開催の宮崎CCのグリーンにアドバイスをしたことがきっかけで生まれている。現在は依頼のあった大会の開催コースのグリーンキーパーと密に連絡を取りながらアドバイスをし、ツアー競技にふさわしいコースコンディションをつくり上げることに努めている。
今大会もその一つだ。「厳しいですね。ただ、試合後の一般営業のことを考えると無理はしていません」(明石氏)というのは、今大会に限った話ではない。マスターズ開催のオーガスタナショナルGC(ジョージア州)は極端な例だが、世界のメジャーのように、一般営業をある程度犠牲にし、大会のためにコースをセッティングすることは難しいからだ。
「もともと日本の南の方では暑さに強いコーライグリーンを使っていたのが、どんどんベントに変わっていった。でも、東南アジアでも台湾より南はコーライかティフトンでしょう。ベントの改良が進んでも、なかなか厳しいです。でも、ベントをコーライに戻すというのも難しい。そもそも管理の仕方が違うので、今ではコーライの管理ができるキーパーさんが少なくなっています」(明石氏)と、さまざまなコースで無理が生じることを認めた上で、コースをよりよくするアドバイスをしている。
今年JLPGAで担当しているのは、今大会の他に「Vポイント×ENEOS」(鹿児島県)、「アクサレディス in 宮崎」(宮崎県)、今回の「大東建託・いい部屋ネットレディス」(福岡県)、「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権」(沖縄県)、「JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」(宮崎県)だ。
特に主催がJLPGAである日本女子プロの準備には協会ともども力を入れているが、「夏に備えるには前の年の秋から冬の準備が大切です。契約が1月からなので、そこに関われていないんです。来年(茨城県・大洗GC)に向けては一からできるのですが」と、各コースに出向き、キーパーと密に連絡を取り合って準備を進めているという。
解決策はJLPGAが日程、会場選びで主導権を握ること?
小林浩美JLPGA会長は「暑いのでスタートを6時半に早めるなど、この大会にも熱中症対策をたくさんしていただいています」と、現状でのベストを尽くしていることを強調。「グリーンが止まる夏はこういうセッティングでショットの精度を見てもらう。グリーンが速くできる春と秋は違うセッティング、とバリエーションをつくっています。スピードは11フィートが基準だけど、気候によってできないこともある」と続けた。
現在、一部を除き日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)がツアーを主管し、各大会スポンサーが主催者となって試合が行われている場合がほとんどだ。そのため、スポンサーが中心となり開催コースは決まる。昨年からこの地で開催しているこの大会が、気候的に厳しいものになることは最初から分かっていた。
だが、JLPGAが27年から始めようとしている、全試合を自分たちで主催するという本来あるべき形が実現すれば、気候や選手の移動を優先したスケジュールをつくりやすくなる。コース選定、セッティングなどについても、主催者であるJLPGA主導で行うようになれば、すんなりと進むはずだ。
「確かに夏は北とか標高の高いところとか、新規の大会にはお願いしています。既存大会は工夫してもらっている」と、詳しくは言及しなかった小林会長だが、日程や開催地の決定を主導することこそ、ツアーも選手もコースも“長生き”する方法に違いない。
組織としての規模はまったく違うが、R&AやUSGA、PGA・オブ・アメリカ、PGAツアーなど、世界のメジャーを主催するようなゴルフ団体は、いずれも芝の研究や専門家が関わり、試合のためだけでなくゴルフの将来のために働き続けている。それが可能なほどJLPGAが進化していければいいのだが。
取材・文/小川淳子
ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。
- 1
- 2
最新の記事
pick up
ranking