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1ラウンド6時間に「プレー不能なピン位置だ」 全米女子プロで再燃した“スロープレー問題” なぜかレクシーがバッシングの対象に

2025.06.24 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
KPMG全米女子プロゴルフ選手権 スロープレー ネリー・コルダ レクシー・トンプソン 砂場Talk(バンカートーク) 米国女子ツアー

女子ゴルフのメジャー第3戦「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」ではさまざまな話題があったが、その筆頭は1ラウンドに6時間を要するほどプレーペースがスローになったことだった。

「スロープレーのトンプソンが言うセリフではない」「引退したはずでは?」

 女子ゴルフのメジャー第3戦「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」は、オーストラリア出身のミンジー・リーの優勝で幕を閉じた。

 初日から最終日まで厳しい戦いが繰り広げられた一方で、今大会の戦いの舞台となったフィールズランチ(テキサス州)に対する賛否両論が入り乱れ、驚くほどヒートアップしていった。

“半引退”した今も気さくでファンサービスに熱心なレクシー・トンプソンはギャラリーから大人気だが、バッシングの対象になってしまった 写真:Getty Images
“半引退”した今も気さくでファンサービスに熱心なレクシー・トンプソンはギャラリーから大人気だが、バッシングの対象になってしまった 写真:Getty Images

 フィールズランチは全米女子プロを主催するPGA・オブ・アメリカのヘッドクォーターとして、2023年にテキサス州に新設された新しいコースだ。実に5000万ドルもの巨額資金が投じられ、メジャー大会をはじめとするチャンピオンシップ専用コースとして建設されたと言われている。

 オープンした23年には早々に全米プロシニアが開催され、この全米女子プロは2つ目のメジャー大会開催となった。さらに27年には男子の全米プロ開催も予定されている。

 しかし、今年の全米女子プロでは、さまざまな問題が浮上した。

 その筆頭は、1ラウンドに6時間を要するほどプレーペースがスローになったこと。挙句、出場選手たちからはコースに対する批判の声が次々に上がった。

「ほぼプレー不能なピン位置だ」という声は、女王ネリー・コルダをはじめとする多くの選手たちから聞かれた。

「ボールをグリーンに止めることができない形状だ」という悲鳴も上がり、「難しい設定のわりには、レイアウトが単調でつまらない」という不満まで聞かれていた。

 全米女子オープンで素晴らしい勝利を収めたばかりのマヤ・スタークにいたっては、コースの難しさやスローな進行にいら立った末に、なかなか決まらない自身のパットに激怒した様子。最終日の終盤では、手にしていたパターをゴルフバッグに叩き付け、ヘッドが宙を飛ぶという信じがたい場面を世の中に披露してしまった。

 その一方で「メジャー大会なのだから、設定が難しいのは当然のこと」「グッドショット、グッドパットは、きちんと報われていた」「スコアが悪く、プレーペースが遅いのは、コースや設定ではなく、選手の責任」という反論、いや正論も聞かれ、賛否両論が激しく渦巻いていた。

 そんな中、米女子ゴルフ界の長年のスター選手、レクシー・トンプソンの第2ラウンド後のこんな発言が、とりわけ物議を醸した。

「私たちの組と前の組の間は1ホール空いたけど、それは私たちのプレーがスローだったということではない。ピン位置はタフで、グリーンは止まらず、あまりにも難しくて、迅速にプレーするなんてことは、まずできないコースだということです」

 この発言を受けて、SNSなどでは「スロープレーヤーのトンプソンが言うべきセリフではない」「開き直りだ」といった声が矢継ぎ早に上がった。

 さらには「トンプソンは引退したのではないのか?」という疑問の声も上がり、コース批判がトンプソン批判のごとく変化する現象まで見られたが、この「トンプソン引退?」に関しては、日本のゴルフファンの間でも首を傾げている方々が少なくないのではないだろうか。

「私はただの一度も『引退』という言葉を使ったことはない」

 弱冠12歳で全米女子オープン出場資格を獲得して世界の注目を浴びたトンプソンは、11年の「ナビスターLPGAクラシック」を皮切りに、19年の「ショップライトLPGAクラシック」まで通算11勝を挙げた実績を誇っている。

 メジャー大会においては、優勝は14年「クラフトナビスコ選手権」の1勝のみだが、優勝争いには頻繁に登場し、長年ゴルフファンを沸かせてきた。

 しかし、24年の全米女子オープンの際に、第一線から退くことを発表。すると、あちらこちらで「さようなら、レクシー」「ありがとう、レクシー」とうたったイベントがあちらこちらで開かれ、トンプソン人気の高さがあらためて示された形になった。

 ところが、暦が25年に変わってからも、トンプソンはほぼ月1ペースで試合に出場し、しばしば上位に顔を出している。メジャー大会にも出場し、「引退したはずのトンプソンが、なぜ出ている?」という疑問の声は、そのたびに聞かれていた。

 エリンヒルズで開催された全米女子オープンでは、今回同様、1ラウンドに6時間近くを要した全体的にスローすぎたプレーペースが大問題となった。

 そして、ネリー・コルダ、チャーリー・ハルとともに予選2日間を回ったトンプソンに対して、「他の2人は毎ホール、先へ先へと行ってトンプソンを待つ最悪の状況だった」「レクシーのプレーがスローすぎる」といった批判がSNSで多数上がった。

 それを知ったトンプソンは真っ向から反論した。

「私たちの組はただの一度も警告も計測も受けていないし、私たちの組も毎ホール待たされていた。ネリー(コルダ)とチャーリー(ハル)はLPGA選手の中で最もプレーが速い選手で、私は彼女たちほど速くはないけど、決してスローではない」

 そして、「引退したのでは?」という疑問に対しては、トンプソンは、こう反論した。

「私は、ただの一度も『引退(retire)』という言葉を使ったことはない。第一線のフルタイムのスケジュールから退くと言っただけです」

 言い換えれば、トンプソンが宣言したのは、あくまでも「半引退」であって、完全引退するとは言っていないという意味である。

 とはいえ、米LPGAのサイトにおける彼女の紹介文の中には、「レクシー・トンプソンは2024年全米女子オープンの際に、フルタイム・スケジュールからの引退(リタイアメント)を発表」という具合に、「リタイア」という言葉がはっきりと記されている。

 英語表現の場合は「フルタイム・スケジュールからの」というフレーズが「引退(リタイアメント)」という言葉の後に記されるため、最後まで読まずに「引退を発表」という部分だけを目にして、「トンプソン、引退したんだ」と思い込み、完全引退したのだという認識が広まった可能性は高そうである。

スロープレーはトンプソンに限らずゴルフ界全体の問題
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