- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 米国敗北は“金を受け取らない”ライダーカップの美しき伝統を壊したから? とはいえ欧州が“清貧”とも言い切れない理由
米国敗北は“金を受け取らない”ライダーカップの美しき伝統を壊したから? とはいえ欧州が“清貧”とも言い切れない理由
欧州の連覇で幕を下ろした今年のライダーカップ。大金持ちのトッププレーヤーたちが“ただ名誉のために戦う”ことが魅力であり盛り上がりの理由ともいわれるが、今年は米国チームに実質的な報酬が支払われることになり、物議を醸した。
50万ドルが米国チームのメンバーとキャプテンの懐に入る
2年に一度の米欧チーム対抗戦、ライダーカップは、今年は米ニューヨーク州ロングアイランドのベスページが舞台ということで、愛国心に富むニューヨーカーが米国チームに熱い声援を送る一方、欧州チームに激しい野次を飛ばす激戦になることが、以前から予想されていた。
しかし、開幕直前に米国キャプテンのキーガン・ブラッドリーが、今年のライダーカップからは米国チームに「マネー」が支払われることになったと発表すると、米メディアは一斉に「ライダーカップでサラリーが支払われるのは史上初」といった見出しで記事を発信。ゴルフ界は、てんやわんやの大騒ぎになった。
ブラッドリーいわく「PGA・オブ・アメリカから、ライダーカップを現代のあるべき姿にしたいと言われ、決定した事柄を告げられた」。
ライダーカップの事情通なら、「いやいや、米国チームには以前から1人20万ドルが支払われていたのだから、別に目新しい話ではないのでは?」「金額が20万ドルから50万ドルにアップしたってことでしょう?」などと思うかもしれない。
確かに、米国チームにはチャリティーとして寄付することが前提で、これまでも1人20万ドルが支払われていた。そして、今回からは、寄付が前提として支払われるマネーは30万ドルに引き上げられたのだが、問題はそこではない。
物議を醸したのは、その30万ドルに加えて、さらに1人20万ドルが「給付金」という名目で支払われ、合計50万ドルが米国チームのメンバーとキャプテン、それぞれの懐に入るという決定事項だった。

「給付金って何?」と、誰もが思う。その意味は「経費の補填」「労力に対する対価」とされているが、米メディアは「要するに、好きに使っていいお金だ」「サラリーだ」「ポケットマネーだ」と捉え、ゴルフファンからも「とうとう、お金のためにライダーカップを戦う時代になってしまった……」などと落胆の声が上がった。
ライダーカップ米国チームの元キャプテンであるトム・ワトソンは、「まったく賛同できない。チャリティー基金はうなずけるが、給付金は支給すべきではない」と真っ向から批判した。
元PGAツアー選手で現在は米TV解説者のブランデル・シャンブリーは「お金をもらってプレーしたら、それは必ず姿勢や態度ににじみ出る。米国チームが崩れる原因になる」と警鐘を鳴らした。
欧州側の反応はというと、欧州チームの主力、ローリー・マキロイは「僕はお金を払ってでもライダーカップに出たい」と言い切り、この決定を激しく批判した。
欧州チームの元キャプテン、ダレン・クラークも「まったく、しっくりこない話だ」と首を傾げた。
今大会の欧州キャプテン、ルーク・ドナルドは「去年、給付金の話が出始めたときから、こうなる気がしていた。欧州のチームメンバー全員に意見を求めたら、誰もが『お金のためにプレーするなんて考えたこともない』と答えた」と明かし、欧州チームは、これまでも、これからも、1セントもお金を受け取らない姿勢をあらためて強調した。
そして、開幕前にドナルドが発したこんな発言にも注目が集まっていた。
「今回のライダーカップはチケット代がとても高くて、ニューヨーク近辺の住民でも、家族みんなで来場することが難しいほど高額なのに、米国チームには給付金が出ると聞かされたら、どう思われるか。米国チームの成績が振るわなかったら、ストレートな物言いのニューヨーカーたちは黙っていないのでは?」
さらにドナルドは、開会式ではこの騒動を逆手に取って、「欧州チームは、お金ではないものによって奮い立たされる。お金では決して買うことができない貴重な経験、貴重な戦いに臨む」と皮肉を交えて演説。「風刺が効いたナイススピーチだった」と、内外から絶賛されていた。
欧州チームの主戦場DPワールドツアーには収益が折半される
そもそもライダーカップは、米国チームと欧州チームが、国と大陸の名誉とプライドをかけて戦う大会であり、「賞金も経費も支払われない。だが、それでも戦うことこそが、何よりの名誉」とされていた。
しかし、大会の人気が高まり、大観衆が押し寄せ、TV視聴率も高まっていったライダーカップは、メジャー4大会をしのぐほどのビッグイベントへと成長。莫大な収益が上がるようになると、「あの収益はどこへ行くのか?」と疑問視する声が、どこからともなく上がり始めた。
そして、1999年大会の開幕前、米国チームメンバーだったマーク・オメーラ、タイガー・ウッズ、デビッド・デュバルらが「収益の一部を選手に還元するべきだ。そして、選手は還元されたお金を、自身が選んだチャリティー団体へ寄付するというシステムを作るべきだ」と怒りの提言を行なった。
以来、米国チームの選手とキャプテンには、寄付することが前提で1人20万ドルが支給されるようになった。しかし、欧州チーム側は「お金は不要」という姿勢を示し続けている。そして、今年から米国チームに支払われることが決まった給付金も、欧州側はやっぱり「不要」としている。
とはいえ、その背景には、米欧で異なるこんな事情も実はある。
ライダーカップで得られる莫大な収益の大半は、米国側を仕切るPGA・オブ・アメリカへ、そして欧州側を仕切るDPワールドツアーに入るため、欧州チームメンバーの奮闘は、彼らの主戦場であるDPワールドツアーの運営資金になるという意味で、彼らに還元されている。
しかし、米国チームメンバーたちの日ごろの主戦場であるPGAツアーに回されるお金は、米メディアによれば「微々たるもの」とのこと。それゆえ、米国チームの選手たちは「僕らの頑張りは、僕らには還元されず、一体どこへ行ってしまうのか?」と不満を抱き、その結果、ウッズらが「何かしらのお金」を求めたという経緯があった。
しかし、そのお金は、あくまでもチャリティーが前提で、選手やキャプテンの懐に入るものではなかった。だが、今回は自由に使途を決めることができる「給付金」が大会史上初めて支給されることになったため、開幕前から物議を醸した。
そして、いざ開幕すると、初日の第1マッチが始まる際には、数分間ではあったがベスページの大観衆は奇妙な静けさに包まれた。そこには「お金のためにプレーする人々を応援してもいいものかどうかといった戸惑いが垣間見られた」と米メディアは明かしていた。
マッチが進行するにつれ、そうした戸惑いは消え去り、ギャラリーのボルテージは高まっていったが、初日と2日目は世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが全敗するなど、米国チームのパフォーマンスはボロボロとなり、欧州キャプテンのドナルドが心配していた通り、ニューヨーカーの野次は、アウェイの欧州チームより、不甲斐ない米国チームに向けられた場面も見られた。
最新の記事
pick up
ranking











