- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 「サケ・ボム(爆弾酒)」ジョークで米ファンもメディアも魅了!? “急成長”久常涼が示した新たな日本人プレーヤー像
「サケ・ボム(爆弾酒)」ジョークで米ファンもメディアも魅了!? “急成長”久常涼が示した新たな日本人プレーヤー像
AT&Tペブルビーチプロアマ初日、ショット指標が平均以下ながら「62」をマークした久常涼。パッティング好調の裏にある独特のルーティンと、若き日本人の急成長に米ゴルフ界の注目が集まっている。
「あれは、サケ・ボム(sake-bomb)だ」
PGAツアーで早3シーズン目を迎えている23歳の久常涼が、このところ、熱い注目を浴びている。
今季は開幕戦の「ソニーオープンinハワイ」で予選落ち、次戦の「ザ・アメリカンエキスプレス」で44位タイと出だしこそ振るわなかったが、3戦目の「ファーマーズインシュランスオープン」では2位タイ、続く「WMフェニックスオープン」では、3日目を単独首位で迎えて松山英樹とともに最終組でプレーするという「夢のような出来事」を経験。最終日最終組には入りそこなったものの、見事10位タイに食い込んだ。
そのおかげで、今季最初のシグネチャーイベントである「AT&Tペブルビーチプロアマ」と、その翌週の同じくシグネチャーイベントである「ジェネシス招待」の2大会への出場資格を獲得するという綱渡り的な前進を披露した。
そして、AT&Tペブルビーチでは8位タイに食い込み、3週連続のトップ10入りとなった「Ryo Hisatsune」の名前と存在は、一気に世界へ知れ渡った。
久常が「AT&Tペブルビーチプロアマ」初日に62をマークして単独首位発進を切ったことは、「えっ!? またヒサツネ?」という感じで米ゴルフ界を驚かせたのだが、その驚きに拍車をかけたのは、彼の62がきわめて珍しいデータに裏打ちされていたことだった。

62はもちろん「快ラウンド」と言えるのだが、実を言えば、データ的には「怪ラウンド」でもあった。
この日の久常は、SG(ストロークスゲインド)オフ・ザ・ティー(-0.396)もSGアプローチ・ザ・グリーン(-0.185)もマイナスの数値で、これはティーショットの精度も2打目や3打目の出来栄えも「平均以下」だったことを示していた(日本と異なりアプローチはグリーン周りの寄せの意味ではなく、グリーンを狙うショットを指す)。
言い換えると、ショットは全体的に決して良くはなかったということになる。それなのに「62」という快スコアを叩き出して単独首位に立ったことは、「どんだけパットが良かったんだ?」という話になった。
その通り、この日の久常のSGパッティングは5.132という高い数字を記録。
「ヒサツネのパッティング恐るべし」
そんな見方が広がる中、米国のゴルフファンやメディアから注目されていることは、もう一つある。それは久常のプレショット&プレパット・ルーティンだ。
「ヒサツネは、パットの際は毎回、ショットの際は70ヤード以内なら毎回、マイボトルを手にして、必ず何かを一口飲んでからパットやショットに入る」
あれは何を飲んでいるのかと尋ねられた久常は、冗談交じりに、こう答えた。
「あれは、サケ・ボム(sake-bomb)だ」
AIアンサーによると、サケ・ボムとは「アメリカで生まれた日本酒の飲み方。アメリカのパーティーや日本食レストランでは、コアな日本酒マニアのみならず、多くの人がサケボムを楽しんでいる」とのこと。どんな飲み物かというと、まず、ビールの入ったジョッキの上に2本の箸を渡し、その上に日本酒の入ったおちょこを乗せる。テーブルを叩いておちょこを落とし入れ、日本酒の混ざったビールを一気飲みするのが作法。ビールに蒸留酒をカクテルする飲み方を「○○ボム=爆弾酒」と呼ぶようだが、その一種だ。
「日本では、ほぼ知られておらず、日本酒ファンの中にも馴染みのない人が多いかもしれません」とも追記されている。アメリカ生活3年目の久常は、すでにアメリカの食文化にも慣れ、現地の人間ならではの「サケ・ボム」も知っていて、これをジョークに使うあたりが米国のゴルフファンやメディアの心を捉えた感もある。
久常のマイボトルの中身は、もちろんサケ・ボムではなく水とのこと。緊張しそうなショットやパットの前に水を一口飲むと「緊張が消え去ったので、それを続けている」と、すっかり上達した英語で説明していた。
ペブルビーチでパットが絶好調だったのは、そんな「魔法の水」のおかげもあったかもしれないが、「ポアナのグリーンが好きだ。よりイージーに感じるので、快適にパットできて、ベリー・ラッキーだ」。そんなストレートな物言いも、彼の好感度を上げている。
「綱渡り」を次々に成功させてきたメンタルの強さ
振り返れば、私が初めて久常に会ったのは2022年の「ZOZOチャンピオンシップ」だった。まだ日本でプロ2年目だった当時の彼は、経験値は決して高くはなかったはずだが、向上心と負けん気と世界志向が格段に高いことは、すぐに見て取れた。
あのころ、すでに相棒キャディーに外国人を起用して「英語の勉強も助かってます。心強いです」と言っていた久常は、あの大会でトップ10入りしてPGAツアーの次戦出場権を得る「綱渡り」を虎視眈々と狙っていた。
しかし、最終日に崩れ、悔しくてたまらず号泣した。
だが、久常はさっそく翌年にはDPワールドツアーのポイントランキングでトップ10入りしてPGAツアー出場資格を得る「綱渡り」に挑み、こちらは大成功となった。
23年「フレンチオープン」で初優勝を遂げて日本人としてはDPワールドツアー史上初のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝き、24年からはPGAツアー参戦を開始。
いろんな意味で大揺れし、少数精鋭化が進められているPGAツアーのここ2シーズンで、シードを死守しただけでもたいしたものだが、それだけで満足する久常ではないということなのだろう。
今季は「ファーマーズインシュランスオープン」と「WMフェニックスオープン」の双方でトップ10入りして、その直後に2週連続で開催されるシグネチャーイベント2試合への切符を手に入れた「綱渡り」は、いかにも久常らしい前進の仕方だった。
「AT&Tぺブルビーチプロアマ」では、最終日を11位タイで迎え、スコアを5つ伸ばす快ラウンドで8位タイに食い込んだ。現在、フェデックスランキングは8位に付け、PGAツアーでの存在感を確立しつつある。
今週のジェネシス招待でも、「サケ・ボム」ならぬ「魔法の水」を飲み飲み、魔法のようにパットを沈めて、今度こそ初優勝を挙げるのではないか。
日本のゴルフファンのみならず、米ゴルフファンも期待している。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
最新の記事
pick up
ranking











