冷静に攻めたキム・ソンヒョンが逆転勝利!
飛ばし屋の上に、ステディなプレーもできる。最強の日本プロ王者が誕生した。
勝負は一進一退の激戦模様。16番を終えた時点で、最終組の3人が通算13アンダーで首位を並走する息詰まる戦いが続いていた。通算12アンダーの首位でスタートした池田勇太は2009年の本大会がプロ初優勝で、日本オープンの2勝も含め、ツアー21勝の実力者だ。1打ビハインドからスタートした稲森佑貴も、ツアーでの2勝がどちらも日本オープンという”日本一ドライバーが曲がらない男“。
この2人に一歩も引けを取らない戦いを挑んだのが、22歳のキム・ソンヒョンだった。
今季の平均ドライビングディスタンスが296ヤードの10位。飛ばし屋で鳴らすソンヒョンは、池田に2ストロークビハインドの3位でスタートすると、16番までに4バーディー、1ボギー。じわり、ジワリと優勝に近づいて行く。

最初に一歩後退したのは池田だった。前日、7アンダーの64でプレーして単独首位に浮上。大会2勝目を狙ったが、17番の第2打をグリーン左のラフに外して寄せきれず、痛恨のボギーを叩いてしまう。稲森は4メートルのバーディパットを打ちきれず、キムと揃ってパー。勝負は最終18番にもつれ込む。
雨に濡れてランの出ない462ヤードのパー4で、“曲がらない男”稲森はフェアウェーをキープしたが、220ヤードが残った。3番ユーティリティーを持った第2打は、「振り過ぎないように抑えめで打ったら滑って右に曲がってしまった」と右の木の下のラフへ。40ヤードのアプローチを残す大ピンチとなった。
これを見たソンヒョンは、攻撃から防御に作戦を変えた。ピンを狙わず、安全にグリーンに乗せていく作戦に出たのだ。手にしたのは8番アイアン。きっちりと2オンしてパーセーブした。
稲森は寄せきれずにボギー。池田もバーディーが取れず、キムの優勝が決まった。
18番での第2打のクラブを見てもわかるように、飛距離のアドバンテージは大きい。だが、初優勝を目前にして、相手を見ながら作戦を替えて行く冷静な戦いぶりこそ、ソンヒョンの強さのヒミツなのかもしれない。
2018年のQT4位で2019年から日本ツアーに参戦。賞金ランキング59位で初シードを獲得したものの、昨年はコロナ禍で韓国から出られなかった。それでも腐ることなく、下部ツアーなどでコツコツと腕を磨いた。
やっと戻って来られた日本ツアーで早々に手にしたビッグタイトル。これで5年シードを獲得し、将来の目標の米ツアー挑戦がしやすくなった。