ジャンボ尾崎の秘蔵っ子・西郷真央の初Ｖに必要なのは“したたかさ”

　最終日を2位以下に1打差の単独首位でスタートした西郷。ツアー初優勝が公式戦という快挙を達成するかと思われたが、今季絶好調の稲見萌寧に逆転され、4打ビハイドの単独2位でフィニッシュした。

　10番パー5を終えた時点で稲見とはまだ1ストローク差しかなかったが、続く11番パー4で痛恨のボギーをたたく。このホールをバーディとした稲見との差が一気に3打まで広がった。その後、14番パー5でバーディを奪ったものの、最後まで稲見の背を見送るしかなかった。

「今日は自分が思い描いていた球を打てませんでした。セカンドショットの距離感が合っていなかったし、コントロールショットができませんでしたね」と、この日のラウンドを振り返る。

　3日目までと風向きが変わったこともアイアンショットの距離感が合わなかった理由だが、優勝した稲見にとっても同じ条件だっただけに、自らの力不足を痛感せざるを得なかった。それでも、4日間60台を並べ、通算15アンダーまでスコアを伸ばせたことは収穫だ。

　今さらだが、西郷は日本女子アマのタイトルを引っ提げて19年にプロテスト合格。ファイナルQTで10位に入り、今季の出場権を得た。新型コロナの影響で2年にまたがる変則シーズンとなったが、昨年は14試合に出場して予選通過が7回、今年は25試合に出場して予選通過が21試合と格段に安定感が増している。

　スタッツを見ても、パーオン率が5位（73.47パーセント）で、トータルドライビングが1位だ。1ラウンド当たりの平均パット数（30.13、70位）が課題になると思われるが、今大会を見る限り、パットの精度はかなり上がっているように感じられた。

　本人は「他の2人（最終日に同組で回った稲見と大山志保）が沈めているところを自分は沈められなかった」と反省していたが、3日目まではきっちりとバーディパットを決めていたし、最終日も序盤から長いパーパットを沈めていた。

　これまでは大事なところでパーパットを沈めきれずに崩れることもあっただけに、大きな成長といえる。優勝争いも数多く経験しており、終盤に向けていつ優勝してもおかしくないだろう。

　ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーの1期生でもある西郷だが、最初のきっかけはジャンボ軍団によるジュニアレッスン会だった。約30人のジュニアゴルファーが集まった中、全員のスイングをチェックしていたジャンボは、当時高1だった西郷のスイングをベタ褒めしていた。

　その後、西郷は土日や夏休みなどを利用して練習施設の整ったジャンボ邸で腕を磨くことになるが、ただ単にボールを打つだけではない。練習前に走り込みやバンカー内でのタイヤ引き、重いそりを押しての坂道ダッシュなどトレーニングをみっちり行う。

　スイングの土台となる下半身はもちろん、体幹が鍛えられたことで、ゴルフの基礎力は大きくアップした。今年に入ってショットの安定感が増したのも、その基礎力の上に自分なりのトレーニングを上乗せしてきたことが、ようやく形となって現れてきたのではないか。
　
　今回敗れたとはいえ、ジュニア時代から親交があり、大学の先輩でもある稲見のゴルフを目の前で見たこともプラスになったはずだ。稲見は、優勝争いをしていた大山が9番パー5で、西郷が11番パー4でミスをした際、積極的にピンをデッドに狙い確実にバーディを奪った。

　ある意味、師匠であるジャンボ尾崎が得意としていたプレーぶりだが、西郷に足りない部分はそういうしたたかさでもあるだけに、十分参考になったと思われる。長いシーズンも残り11試合を数えるのみだが、心技体が成長した西郷がこれから巻き返しを開始しても十分遅くない。