初優勝がメジャー! 3年シード獲得で海外も視野に
終わってみれば4打差圧勝。初優勝とは思えない貫録のプレーぶりで、三ヶ島かながツアー最終戦を制した。

JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ最終日、話題の中心は稲見萌寧VS古江彩佳の激しい賞金女王争い。その騒ぎを尻目に、最後まで自分のゴルフを貫いた三ヶ島が勝利をもぎ取った。優勝か2位タイ(2人まで)であれば逆転タイトルを狙えた古江彩佳の希望を打ち砕いた、と言い変えてもいいだろう。
ツアー6年目。プロテスト合格は2018年だが、16年から単年登録で試合に出続けていた。いいところまでいくけれど、なかなか勝てない。そんな日々を重ねながら、2年目の17年からシード権は守り続けてきた。
気が付けば、25歳になっていた。
高校卒業後、すぐにプロ入りして活躍する選手が目立つ現在の女子ツアーでは、25歳の当人たちに若手意識はまったくない。三ヶ島も、今回の優勝インタビューでこう口にしている。
「若い子たちの活躍が目立ってもうだめなのかなと思う瞬間もあるんですけど、優勝者ばかりが出ている試合(JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ)で、まぐれじゃない優勝ができたことがうれしいですね。勢いだけじゃ勝てない、というところを見せられたかなと思います」
優勝に手が届かないうちに、どんどん下から突き上げられる。そんな気持ちを乗り越えたことがよく表れた言葉に聞こえる。
3日目に「67」で回って9アンダーで単独首位に立ち、2位の古江とは3打差で迎えた最終日。出だしの1番ホールをバーディーとした後も、ずっとマイペースでプレーを続けた。
同じ最終組には、逆転女王がかかる古江。こちらも自分のプレーに徹している。激しく静かな戦いの火花が散るのが見えるようだった。
終盤に入る15番でボギーを叩いたが、続く16番はグリーン右手前のラフに少しこぼれたところから、58度のウエッジで第3打を直接カップインさせるバーディー奪取。17番も4メートルのバーディーを決めてダメを押した。たくさんのギャラリーと仲間たちが見守る18番では、古江が先にバーディーパットを外し、この瞬間、稲見の賞金女王が決まった。
勝負に決着をつけるパーパットは、その静かなざわめきが広がる中で打つことになったが、落ち着いて沈めて通算11アンダー。トレードマークの笑顔を見せた。
キャディーだった父親との二人三脚は5月に“円満解消”
10歳でゴルフを始め、プロ入りしてからは父、直さんがバッグを担ぐ二人三脚でツアーを転戦していたが、徐々に“独り立ち”。今季のほけんの窓口レディース以来、キャディーはしなくなり、コースに来ることもなくなっていたという。
よくある“親子喧嘩”とは違う円満な“独立劇”だ。それを証明するように、娘に内緒で最終日にやってきた父の姿に、娘は最高の笑顔を見せた。
公式戦での初優勝にも、涙を少ししか見せなかったのは「まだまだ勝ちたい、何勝もしたいという気持ちは変わらないので、留まらず油断せずに逆に引き締めようと思いましたね」という気持ちの表れでもある。
賞金ランキング18位で、公式戦優勝の3年シードも手にした今、海外への興味も少し出てきている。
「飛行機が苦手なのでスポット参戦で行けたらよいな、と思っています」と口にしているが、今後の展開からも目が離せない。
初優勝の次は2勝目。今度はこの重圧と戦うことになるが、穏やかな笑顔に隠された負けん気で、これも乗り越えていくに違いない。