「腰の状態は良くも悪くもないが支障はない」
昨シーズン(2020-21)に9勝して賞金女王となった稲見萌寧。今シーズンも開幕戦からスタートダッシュといきたいところだが、大会前日の公式会見では、冒頭から不安を口にした。

「思うようなオフを過ごせず、不安があります。12月と1月は仕事が立て込んで、十分なトレーニングと練習ができなかったです」。それに加えて腰痛を抱えていたことから、「重りを使ったトレーニングもストップがかかっていた」ことも明かした。
「検査してもらっても(腰の)状態に変わりはなく、悪くはならないけれど、良くもならないみたいです。それでも痛みはまったくないので支障はありません」
試合に出られる状態とはいえ、いつ痛みが再発してもおかしくないような不安をのぞかせていた。
練習量の多さで自分のコンディションを上げて、自信をつけるタイプの稲見だが、やはり悔やまれるのは、開幕前に最高の状態に持ってこられなかったことだ。
「こなせた練習は『10』のうち『2』。2月に入ってやっと『5』くらいはこなせたのかな。だから不安はめちゃくちゃあります」
つまり、今も100%でゴルフができない状態。それは稲見も理解した上で「(開幕戦では)自分のゴルフを60~70%出せればいい」と自分に言い聞かせていた。
それでも希望がないわけではない。クラブ契約フリーの稲見は、昨季9勝を手にしたドライバー(キャロウェイのマーベリック)を今季も使用する。「いろいろなクラブを試したけれど、自分が使用しているボールとの相性を大事にしています。100%信用できるものでないと変えない」と、優勝のイメージを描けるエースドライバーにこだわりを持つ。
さまざまな不安を抱えるなかティーイングエリアに立ったとき、このドライバーが彼女に安心感を与えるのは間違いない。
北京五輪の小林陵侑と平野歩夢から刺激
さらに練習日に久しぶりに会った選手たちからは「体が大きくなった? 背が伸びた?」と聞かれるようになったという。与えられた時間のなかで、それでもしっかりと練習やトレーニングをこなした証だろう。
「体重はキープするように心がけています。少し太ったのかな。動けないデブにならないようにがんばらないと(笑)」
普段は他のスポーツに興味がないという稲見。それでも2月の北京冬季五輪はテレビ観戦し、「(金メダルを獲った)スキージャンプの小林陵侑選手、スノーボードハーフパイプの平野歩夢選手は、ズバ抜けた身体能力とジャンプ力がすごくてめちゃくちゃかっこよかった」と刺激を受けていた。
自身も五輪金メダリストのような他を圧倒するパフォーマンスで勝ちたい――言葉の端々からそんな思いが見え隠れしていた。コンディションは万全な状態ではないものの、明日の開幕を控え、内に秘めた気合いは十分だ。