「ハラハラ、ドキドキのゴルフ」
優勝パットはまさかのダブルボギーパット。カップインしたあとの西郷真央のなんともいえない表情は苦笑いだった。

「せめてボギーであがろうと『入れ!』と心の中で思っていましたが、後味悪く苦笑いしてしまいました」
それでも初日からトップを守り、通算8アンダーでの完全優勝。2週連続優勝も達成し、ツアー3勝目を手にした。5試合で3勝は史上最速記録。
表彰式の優勝インタビューが、今日の様子を物語っていた。
「最終日は悪天候のなかでボギーをたくさん打ち、ドキドキ、ハラハラのゴルフでした」
言葉通り、予想外の展開が待っていた。
最終日を通算12アンダーの単独トップからスタートした西郷真央。2位とは5打差もあり、3日目までのゴルフの内容からして、独走での完全優勝は確実と思われていた。
だが、天気は小雨の予報が大雨。風も吹いて、気温は10度以下と寒さが選手に追い打ちをかけた。
「雨の日はレインウエア着たり脱いだり、ボールを拭いたり、傘をさしたりと忙しかった」というようにゴルフの内容もバタついた。
前半は2番パー4でボギーが先行したが、3番パー5でバーディー。6番パー4もバーディーとしたが、9番パー4、10番パー4で連続ボギー。
「他の選手のスコアがどうなっているかで、攻め方を考えるためにリーダーボードは必ず確認する」という西郷。この日も先行組の菅沼菜々や堀琴音が追いあげてくるのが分かったが、「そこは意識せず、自分のゴルフをやろう」と言い聞かせた。
11番パー3は「今日一番、集中力を高めた」とピンまで110ヤードのティショットをピッチングウェッジで70センチに寄せて会心のバーディー。
だが、その後13番パー4は寄せ切れず2パットのボギー。17番パー3は「ここまで1オーバーだったので、バーディーが欲しくて強めにパットを打ってしまった」と手前10メートルから3パットでボギーとした。
最終18番のOBはジャンボ尾崎を意識
それでも首位をキープして迎えた最終18番パー5。ディスタンスの計測ホールだったこともあり、師匠・ジャンボ尾崎の姿が頭にちらついた。

「いつもジャンボさんに『ディスタンスは何位だったのか』と聞かれるので、報告したいと思って意識しました。そしたら雨の影響もあり、ボールとヘッドが滑ってミスショットになりました…」
思い切り振りぬいたティショットを右に打ち込んでまさかのOB。最後はダブルボギーとしたが、どうにか1打差で逃げ切った。
「これは自分でもあまり良くない方向だと思います(笑)」とここでも苦笑いだったが、優勝もディスタンスの距離も堂々と胸を張って、ジャンボに報告したい西郷の気持ちが見て取れた。
これで今季5戦3勝と圧倒的強さ。メルセデス・ランキングと賞金ランキングも共に独走状態に入ったが、タイトル獲得は二の次だ。
「出る試合で常に上位争いしたいです。こうした難しいコンディションのなかでも、スコア伸ばしていける集中力とメンタルを高めていきたい。もちろんジャンボさんへの優勝報告と国内メジャー優勝も目標です」
試合後には自らのSNSでも、「飛距離欲に負け、振りに行ってしまい滑ってOBでした。こういった事も経験として今後にいかせるように、反省すべき点はしっかり反省して、良かった点は継続できるようにこれからも頑張ります」とファンに報告していた。
今週の結果を受けて世界ランキング75位以内であれば、全米女子オープンの出場資格を得られるが、それも確定だ。
「今季が始まる前から、海外メジャーには挑戦したいと思っていました」という西郷。国内から世界へ飛び出す準備も万端だ。
西郷真央(さいごう・まお)
2001年10月8日生まれ、千葉県出身。2019年、高校在学中にプロテスト合格。2020-21年シーズンはトップ10フィニッシュが21回と安定した成績を残した。2022年シーズンは開幕戦で初優勝を挙げると、4戦目となるアクサレディス、5戦目のヤマハレディースと連勝、早くも3勝目を挙げた。島津製作所所属。