「パットが入った瞬間は母を見ていた」
通算8アンダーで並んだ4人でのプレーオフ。植竹希望は最後まで集中力を切らさなかった。
1ホール目で西村優菜、2ホール目で小倉彩愛が脱落。ツアー通算2勝の後輩・吉田優利と植竹の争いは6ホール目に決着がついた。

植竹は第2打をグリーン右手前のバンカーに入れたが、第3打をピン右2メートルに寄せて、最後はバーディーで締めくくった。
ツアー史上最長となるプレーオフは2時間の激闘に「今日一日長かったというのと嬉しいの一言に尽きます」とホッとした表情の植竹。
最後のパットを決めた瞬間も「入った瞬間は最高に気持ち良かったです。最初に母親の方を見てしまいましたね。遠すぎてあまりわからなかったんですけど、たぶん泣いてくれていたと思います」と明かしていた。
植竹にはどうしても優勝する姿を母に見せたかった。高2の時に両親が離婚。母が女手一つで仕事と家庭を両立させていたが、経済状況は決して良いものとは言えなかったはましてやお金のかかるゴルフをこのまま続けられるのかという不安もあった。
「両親が離婚してからゴルフができなくなるくらいの経済状況だったので、ダブルワークになりながらも母は『好きなことをやりなさい』とずっと応援してくれました。たくさんケンカしたこともあるけれど、一番尊敬する人です」
それでも、高校時代は週4~5日はゴルフ場でアルバイトをしながら「練習する環境はたくさんあったので、あとは自分次第だと思っていました」と自分のやるべきことに集中した。
結果で恩返ししたいという強い思いが実を結んだ。
1998年度生まれの“黄金世代”としては10人目の優勝。これまで同年代が勝ち続ける姿に「悔しい気持ちは強かったですし、刺激にもなっていました」という。
「今は国内で初優勝したばかり。畑岡(奈紗)選手や渋野(日向子)選手など海外でも活躍している人もいるので、早くそういう人たちに追いつきたいという気持ちは強いです」
植竹は黄金世代の中でも男子プロ顔負けの力強いスイングをする選手として有名で、「セルヒオ・ガルシアとジョン・ラームを足して2で割ったスイング」とよく言われるという。
女子では珍しいしなやかなスイングから、いずれツアーで優勝するのも確実視されていた。ようやく手にした1勝。「早めに2勝目を挙げてもっといいところを見せたい」と前を向いた。
植竹 希望(うえたけ・のぞみ)
1998年7月29日生まれ、東京都出身。2017年プロ入り。ツアーを席巻してる「黄金世代」の一人。2022年シーズン「KKT杯バンテリンレディス」で1998年度生まれ10人目のツアー優勝を達成。独学でスイング研究をするなど、個性的な一面も持ち合わせている。サーフビバレッジ所属。