本当に「夢」で見ていた川奈名物17番でのホールインワン
鮮やかなストレートボールが風でやや右に流され、ワンバウンドしてカップに吸い込まれる。ホールインワンだ。藤田さいきが「夢にまで見た」ホールインワンを、現実のものにした。

女子ツアー、フジサンケイレディス初日(静岡・川奈ホテルGC富士コース)は、高橋彩華が8アンダーで単独首位に立ったが、藤田は、500万円がかけられた名物パー3の17番でツアー6回目のホールインワンを達成。これが効いて4アンダー、ツアー通算6勝目が見える位置で初日を終えた。
「夢にまで見た」は、決して例えではない。これが通算6回目のツアータイ記録となった藤田は、何度もホールインワンの夢を本当に見ている。
なかでも、大会の舞台で2年に1度の『世界のゴルフ場100選』に入る川奈の名物ホール17番(通常は16番)と特定できるシーンの夢を見たことも、具体的にはっきりと記憶している。2013年大会で下川めぐみがホールインワンして、過去のキャリーオーバーも含めた800万円を獲得した後、さほど時間が経たない頃のことだ。
海をバックにしたティーイングエリアからは、打ち上げていく砲台グリーンの面は見えない。風の読みも難しく、手前に落とすと約5メートルの高さの打ち上げのアプローチが残る。
藤田も「何度もガケに落として辛い思いをしたあそこでのホールインワンはあこがれていました。今日は6番アイアンでしたが、夢は5番アイアン。はっきりと覚えています」
「今日のは(夢と)よく似ていました。私はドローヒッターなのに、今日はストレートに出て、風に流されてフェードっぽかった。(ボールが砲台グリーンの見えない部分に)消えたのは見えました。大歓声でしたけど、これで入っていないといけないと思って、はしゃがないようにしたつもりですけど、結構はしゃいでたと思います」と笑って振り返る。
ツアー5勝目の富士通レディスからは11年が経ち、36歳になった。その間、シード落ちも経験したが、ロングシーズンとなった昨季、賞金ランキング28位でシードに復帰している。
そのエネルギーはどこから来るのか。「いつか優勝できるというモチベーションでやっています。優勝の夢も見るんです。最後に優勝した時も、その前に優勝する夢を見ました。その後も何度も優勝カップを掲げている夢を見るのに、11年勝てていない」と苦笑する。
だが、どんどん若手が入ってきて入れ替わりの激しいツアーで、シード選手として戻ってきた気持ちの強さが、ツアー屈指なのは間違いない。夢に見るほど欲している次の優勝を現実のものにするために、藤田は戦い続ける。