「特に何も変えずにいつも通りという感じです」
ディフェンディングチャンピオンとして臨んだフジサンケイレディス初日(22日、静岡・川奈ホテルGC富士C)を、首位に8打差のイーブンパーで終えた稲見萌寧は、修正点について聞かれ淡々とそう答えた。

3バーディー、3ボギー。「ショット自体そんなに悪くなくて、最初の方はパッティングがうまく入ってくれなくて、うまく流れをつかめずで伸ばせなかったです」と振り返った18ホール。
1年前のこの試合で優勝した時には、2021年の8試合を終えて半分の4試合で優勝。破竹の勢いだった。その後、さらに4つの勝利を重ねて年間8勝。シーズン9勝で賞金女王に輝いた。
東京オリンピックでは日本人初の銀メダルを獲得したこともあり、いやおうなしに2022年は大きな期待が集まった。
だが、シーズンを前にして、誰よりも冷静だったのは稲見本人だった。
「去年の成績が続くのなら別ですが、そうじゃないのでまずは1勝することが目標です」
今年は、8試合を終わって優勝はなく、トップ10入りも富士フィルムスタジオアリス女子オープンの2位タイが1回だけ。昨年終盤から抱える腰痛の不安もあり、棄権1回、予選落ちが2回と決していい滑り出しではない。
それでも焦りを抑え、自分のペースを保とうとするスタンスを取ろうとしていることがよくわかるのが、冒頭のコメントだ。
コロナ禍で、まだ無観客の試合も多かった昨年、稲見が優勝した試合で観客が入っていた大会は1つしかない。東京オリンピックすら無観客だった。そのぶん、今年は観客の前でいいプレーをしたい気持ちは強い。
ギャラリーの声援について尋ねられ「今日はあんまりバーディーを取れていなかったので、なるべく増やせるように頑張ります」と口にしたのもその表れだ。
カギを握るのはパッティング。芝目のきつい高麗グリーンが川奈の特徴だが、そこをつかんでいるのがディフェンディングチャンピオン。
「パッティングがもう少し入ってくれればスコアが出せる感じがするので、爆発的なスコアが出せるように頑張ります」と、猛チャージを宣言。じっくりとため込んだエネルギーを、結果につなげる時を静かに待っている。