師匠であるジャンボ尾崎の絶頂期を彷彿とさせる西郷真央の強さ
一時は首位を走るテレサ・ルーに4打差をつけられた西郷真央。前半は思うようにショットがピンに絡まず、5~6メートルのバーディーパットを打つ機会が多かった。
それ沈められず、リズムに乗れなかったが、ようやく8番パー5で2.5メートルのバーディーチャンスを迎える。しかし、無情にもボールはカップの横を通り過ぎる。思わず。グリーン上にしゃがみ込んでしまうほどショックを受けたが、すぐに気持ちを切り替えた。

「午後からは風が強くなるはず。あきらめるのはまだ早い」と、サンデーバックナインを勝負どころだと自分に言い聞かせた。
12番パー5で2オンに成功してこの日初めてのバーディーを奪うと、テレサ・ルーが10番パー4に続いて13番パー3でもボギーを叩く。
ついに1打差に迫ったが、14番パー4でティーショットを左に大きく曲げてしまう。目の前には2本の木が邪魔しているものの、グリーンを狙えないことはなかった。ここでボギーを叩けば、再びテレサ・ルーとの差は広がる。しかも、気がつけば高橋彩華も首位タイに並んでいる。
「キャディを務めてくれていた河野(杏奈)さんとも相談して、3打目勝負にしました」
6番アイアンでフェアウェイに出すと、ピンまで残り53ヤード地点から58度のウェッジでしっかりとピン横2メートルにつけると、それを沈めてパーセーブに成功。首位との1打差をキープした。この安全策が思いもかけない一打を呼び込む導火線となる。
15番パー4での第2打だ。グリーン右サイドに立っているピンまでは169ヤード。フェアウェイにボールがあるものの、ツマ先下がりで若干左足上がりという難しいライ。
再び6番アイアンを手にすると、「フォローがかなり強かったので、少し抑えめのショットでグリーンセンターを狙いました」という西郷。その言葉どおりのライン出しショットをすると、ボールは軽く右に曲がり、グリーン右サイドに落ちると、そのままピンに向かって転がっていく。
「100点に近いショットだったし、ピンの手前に落ちたのでヨシッと思っていたら、ギャラリーの歓声とともにボールが消えていくのが見えました」と西郷。常にクールなプレーや応対をする20歳が思わずバンザイをして、キャディの河野ともハイタッチを交わした。
「ボールが入った瞬間は心臓がドキッとして、帰りの車で事故らないかなと(笑)。こんなラッキーがあっていいのかなと思いましたが、前半バーディーパットが入らない中でもあきらめずにプレーしたことがこの結果につながったんだと思います」
首痛の影響で2試合休み、いきなり復帰戦で優勝を飾った西郷。
7戦して4勝というハイペースは、師匠であるジャンボ尾崎の絶頂期を彷彿とさせる。しかし、その裏には綿密な計算もある。
毎朝ピンポジションをコースメモに書き込み、風向きをチェックし、どのホールがパーセーブをする上で難しいかを考えるという。コースマネジメントがしっかりできているからこそ、3日間大会でも2ケタアンダーを叩き出せるのだろう。
また、たとえティーショットの調子が悪くても、睡眠時間が少ないと集中力に欠けると思い、ラウンド後の練習を控えたりもする。常に自分を客観視できるからこそ、ハイレベルな安定感を維持しながらプレーできるのだ。
今週はいよいよ国内メジャー初戦となる「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」を迎えるが、「今週はティーショットのミスが多かったので、しっかり調整して臨みます」と、浮ついた気持ちは一切ないだけに、2週連続優勝も十分あり得る。
西郷 真央(さいごう・まお)
2001年10月8日生まれ、千葉県出身。2019年、高校在学中にプロテスト合格。2020-21年シーズンはトップ10フィニッシュが21回と安定した成績を残した。2022年シーズンは開幕戦で初優勝を挙げると、4戦目となるアクサレディス、5戦目のヤマハレディースを連勝するなど早くも4勝。島津製作所所属。