「競技ゴルフはお金がないと続けられない」は変えられる? 馬場咲希の快挙生んだアマ規定の変更

圧倒的な強さを発揮して、全米女子アマ選手権を制した馬場咲希選手。その裏に、今年の元日からスタートした新ルールが追い風になっていたことをご存じでしょうか。

才能あるゴルファーたちを支えるためのルール改定

 馬場咲希選手の全米女子アマ選手権の優勝。1985年大会で日本人初の優勝を成し遂げた服部道子選手以来、37年ぶりの快挙ということです。

胸や両袖にたくさんのスポンサーロゴを付けてプレーする馬場咲希(写真は今年の全米女子オープン) 写真:Getty Images
胸や両袖にたくさんのスポンサーロゴを付けてプレーする馬場咲希(写真は今年の全米女子オープン) 写真:Getty Images

 実はこの2人には、置かれていた立場に決定的な違いがあります。それをはっきりと物語っているのが、優勝した時の2人のいでたち。当時の服部選手はシンプルなストライプのゴルフウエアを身にまとっていますが、馬場選手のキャップやウエアにはいくつものロゴが貼られています。これは馬場選手の活動をサポートする企業のロゴ。多くの支援企業がついたことで、馬場選手にかかる金銭的負担が大きく軽減されることになったわけです。

 服部選手の時代以前から続いていたアマチュアゴルファーの置かれた立場が、劇的に変わったのは今年の1月1日。R&Aにより新しいアマチュア資格規則が施行された瞬間でした。この改訂で最も注目を集めたのが、競技のための費用を受け取ることやスポンサーやエージェントとの契約を結ぶこと、氏名・肖像を宣伝・広告に利用することができるようになったこと。馬場選手のような有能な選手には、多くのスポンサーがつき、遠征費用などのサポートを受けられるようになったのです。

 この大きなルール改正の事情について、国を代表するゴルフ団体(ナショナルフェデレーション=NF)である日本ゴルフ協会の山中博史専務理事が解説してくれました。

「改訂の大きな理由の一つは、経済的な理由により才能のある若い人たちがゴルフを続けられなくなる状況を避けるべきということです。ゴルフはお金もかかるスポーツだし、昨年までは遠征に行っても賞金がもらえるわけではなかった。そうなると費用は持ち出しになるので、家族のサポートがないと難しい。例えば、われわれのチーム(ナショナルチーム)出身者の中でも、親が本当に大変な思いをして、借金をしながら娘、息子を育てている方も多くいました。たまたまプロに入って稼げている人はいいですけど、稼げていない人は、どうしても家庭的な事情で続けられなくなる。みんながそういう現実を認識していたので、そうしたバリアを取ることによって才能のある人たちがゴルフを続けられるようにという思いもあって、あの改定になったんです」

会社を休職して娘をサポートしてきた馬場の父

 特に馬場選手のような世界レベルに達した選手ともなれば、全米女子オープンなどのアメリカ国内での試合や、全英女子オープンなどの欧州での試合にも出場のチャンスが生まれます。自らのレベルアップを目指すためにこうした大舞台の経験を積もうとすればするほど、経費の問題が深刻になるのは自然の成り行きでした。

 しかし、そうした問題がルール改定によってクリアされたことで、馬場選手は大手をふってスポンサー各社と契約できることになったわけです。左袖にロゴを掲出する契約を交わしたブライダル関連の(株)リンガフランカサービス(本社・名古屋市)もその一つ。プレーをしているのを見た同社の岳田幸成社長が、キャディーを務めていた父・哲也氏にアプローチして契約にこぎつけたそうです。

 馬場選手にゴルフの手ほどきをしたのは、プロゴルファーの藤井誠氏(現ザ・プレミアムバックステージGM)。藤井氏は地元の自治体と連携し、地域貢献を目的として米軍横田基地の管理施設である多摩ヒルズゴルフコースに設立した小学生向けのゴルフスクール「多摩キッズ」を運営していました。そこに小学校の中学年で入門した馬場選手はメキメキ上達することになります。

 その藤井さんも、今年のアマ規定の改訂が、馬場選手の海外挑戦に絶好のタイミングだったことを認めています。

「今年、アマチュアにスポンサーが付けられるようになったのは大きかったと思いますよ。お父さんはとてもバイタリティーのある人ですが、大変だったと思います。会社を休職してまで、背水の陣で咲希に付きっきりで頑張ってやってきたわけですから」

 前出のリンガフランカサービスには、馬場選手へのサポート契約を希望する複数の社から問い合わせが入っているとか。馬場選手を含めた才能あふれる選手たちにとって、海外の試合で経験を積むチャンスは、今後も確実に広がっていきそうです。

取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。

※当初、馬場選手の父・哲也氏が会社を退職していると記載していましたが、「休職」の誤りです。お詫びして訂正いたします。(2022/8/20 11:35)

【動画】馬場咲希が放った“衝撃”ドライバーショットに驚きの声続々 「#280ヤードドライバー」
1 2

最新記事