“後出し”でZOZO出場が断たれた日本人4選手 PGAツアーの“ゴリ押し”生々しい内幕

今までPGAツアーメンバーではない日本ツアーの選手たちは、呼ばれればリブゴルフに出ることができた。しかし、フリーな立場を謳歌できるのもここまでになってしまったようだ。

同じシーズンなのに「ZOZO」はダメ、「ソニー」はOKの矛盾

 日本ツアーを主戦場にしている選手たちも、とうとう新興のリブゴルフとPGAツアーの争いに巻き込まれることになってしまった。

昨年のZOZOチャンピオンシップで松山英樹と優勝トロフィーを掲げる青木功JGTO会長。したたかにPGAツアーと渡り合っていけるか? 写真:Getty Images
昨年のZOZOチャンピオンシップで松山英樹と優勝トロフィーを掲げる青木功JGTO会長。したたかにPGAツアーと渡り合っていけるか? 写真:Getty Images

 8月末、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が選手たちに一つの通知を出した。内容は「リブゴルフに出場した選手は、2022年開催のPGAツアーの競技には出場できない」(JGTO広報)というものだった。

 破格の賞金とギャラで選手たちを引き付けるリブゴルフに対するPGAツアーの拒否反応は極めて強い。リブに出場したPGAツアーメンバーのツアー出場権剥奪はすでに行われていたが、今回はPGAツアーのメンバーではない日本選手についてもその影響力を駆使したことになる。しかも、リブゴルフに日本勢が出場する前ではなく、後からそのことを言い出すという異例の措置だ。

 10月に日本で開催されるZOZOチャンピオンシップ(13~16日、千葉県 アコーディア・ゴルフ習志野CC)は、PGAツアーとZOZOが主催するPGAツアーの一戦だが、JGTOも共催に入っている。

「(22年内のPGAツアー出場停止は)7月の全英オープンで各ツアーの面々が顔を合わせた頃から出始めた話でしたが、(ZOZOの)共催にもなっているJGTOは、リブゴルフ出場者に対して(出場権剥奪などの)措置を取っていないこともあり、(ZOZOに出られるよう)何とかならないか、という協議を続けてきました。けれども(PGAツアーが)『絶対的に譲れない』と聞き入れてもらえませんでした」(JGTO広報)と、力及ばず。

 これまでリブゴルフに出場した谷原秀人、木下稜介、香妻陣一朗、稲森佑貴の4人は、実力で出場権を獲得しても今年のZOZOには出られないことになってしまった。

 今後、リブの試合に出場しなければ、来年以降のPGAツアーへの出場は問題ないとのことで、日本勢の出場者が多い1月のソニーオープンinハワイ(12~15日、ハワイ州・ワイアラエCC)への出場もできるという。

 世界一を自負するPGAツアーとしては、さらに金にものを言わせて有力選手を引っ張って行くリブゴルフが気に入らず、徹底的に選手を囲い込み続けてきた。PGAツアー主催ではないメジャー競技に対してもその影響力を及ぼそうとしてもいる。だが、ツアーメンバー以外にも口を出してきた今回の措置には突っ込みどころがあまりにも多い。

 まず、前出のように“後出し”での措置であること。PGAツアーとリブの関係を鑑みれば、選手がもっと警戒すべきだったという声もあるが、本来、ルールとは後から適用されるべきものではない。

 次に、時期の問題がある。PGAツアーは先週のツアー選手権ですでに21-22シーズンを終えている。15日からのフォーティネット選手権からは22-23の新しいシーズンに入るため、10月のZOZOも来年1月のソニーも、同じシーズンの試合なのに対応が違うことになる。これについても「(下部ツアーの)コーンフェリーや(シニアの)チャンピオンズはまだ22年のシーズン中だから、と言って」(前出・JGTO広報)、“後出しジャンケン“の効力が切れるのは23年に入ってからだと主張していると言う。

日本ツアーは「選手が働く場を制限できない」という立場

 リブゴルフに対して、JGTOの対応はこれまでと変わらない。

「トーナメント規定にある通り、メジャーとWGCの試合以外は、国内の試合があればそちらを最優先してください、という文書を再度送っています。ただ『選手が働く場を制限できない』という根本的な考え方があるので」(同広報)と、PGAツアーとは違うスタンスを貫くという。

 リブゴルフの勢いと、過剰なまでにそれに拒絶反応を示すPGAツアー。今回は日本勢4人がそれに巻き込まれた格好だ。日本の試合が少ない中、賞金の高いリブへの出場は大きな魅力だったはずだが、今後はそう簡単に決断できなくなるだろう。

 QTへの参加規程なども含めて、PGAツアーの動きはまだ調整中の部分も多いが、リブに対する警戒は想像以上に強く、油断は禁物だ。PGAツアー出場を考えるか、リブが積み上げる札束を狙うか。実力のある選手ほど頭を悩ますことになる。

取材・文/小川淳子
ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。

【写真】リブゴルフ団体戦で“チーム・ジャパン”を結成し、ノーマンと肩を組む日本人4選手

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中央のグレッグ・ノーマンと肩を組む日本人のみ(左から谷原秀人、木下稜介、稲森佑貴、香妻陣一朗)で結成された「トルクGC」のメンバーたち 写真:Getty Images
ダスティン・ジョンソンを笑顔で迎えるフィル・ミケルソン 写真:Getty Images
第3戦で優勝したヘンリク・ステンソン。優勝賞金400万ドルをゲットした 写真:Getty Images
リブゴルフ第3戦・ベドミンスター大会ではドナルド・トランプとグレッグ・ノーマンが同じフレームに収まる絵ヂカラ強すぎな1枚が 写真:Getty Images
リブゴルフ第2戦・ポートランド大会で優勝したブランデン・グレース 写真:Getty Images
「リブゴルフ」のロゴを全身に身につけ、ご満悦のマスターズ覇者パトリック・リード。PGAツアーでプレーしているときより生き生きして見える 写真:Getty Images
リブゴルフ第1戦・ロンドン大会 写真:Getty Images
青木功JGTO会長 写真:Getty Images
昨年のZOZOチャンピオンシップで松山英樹と優勝トロフィーを掲げる青木功JGTO会長。したたかにPGAツアーと渡り合っていけるか? 写真:Getty Images

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