- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- “頭脳”の退職で揺れるリブゴルフ 日・韓・印を引き入れ体制固めのPGAツアー 23年の勢力争いどうなる?
“頭脳”の退職で揺れるリブゴルフ 日・韓・印を引き入れ体制固めのPGAツアー 23年の勢力争いどうなる?
飛ぶ鳥を落とす勢いに最近陰りが見えるリブゴルフ。シーズン終了とともに、NFL出身のやり手COOが退職するなど、内部で何かが起こっている気配がある。一方、対抗する側のPGAツアーは問題を抱えつつも盤石の態勢を整えつつある。
日本ツアーから欧州経由でPGAツアーへの道が開ける

一方、リブゴルフの勢いに押され、揺れ動いてばかりだったPGAツアーのほうは、年の瀬にむしろ体制を固めつつある。
今年6月に創設されたリブゴルフに対抗するため、PGAツアーはDPワールドツアーと戦略的提携を結び、ゴルフ界にそびえてきた従来のピラミッドをお互いに協力し合って維持拡大していくことを確認した。
その際、両者の関係を緊密にする目的で、DPワールドツアーが行なっている年間のポイントレースであるレース・トゥ・ドバイのトップ10に翌年のPGAツアー出場資格が付与されることが発表された。
そして12月になると、その米欧提携関係にアジアの国々を加え、「米欧+アジア」へと勢力を拡大するための3つの新たな提携が結ばれた。
まず12月5日に「米欧+日本」のパートナーシップ締結が発表された。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の賞金ランキング上位3名には翌年のDPワールドツアー出場資格が付与されるというもの。これにより、日本ツアーの選手には、欧州経由でPGAツアーへ進出する道が開けた。
それから10日後の15日は「米欧+韓国(KPGA)」、その翌日の16日には「米欧+インド(PGTI)」のパートナーシップ締結が発表され、KPGAはポイントレースの1位、PGTIは賞金ランキングの1位に翌年のDPワールドツアー出場資格が授けられることになった。
リブゴルフは昨年、アジアツアーに合計300万ドルを投入し、実質的に傘下に置いているが、PGAツアーとDPワールドツアーによる今回の続けざまのパートナーシップ締結は、まだまだ成長の余地が多分に見られるアジア市場の各国を、リブゴルフに奪われる前に米欧両ツアーの身内に引き入れようという思惑が明らかに見て取れる。
しかし、どんな思惑があるにせよ、これまでは「狭き門」というより「狭すぎる門」と化していたPGAツアーが、その門を少しばかり開き、「ウエルカム!」と両腕を広げたことは、日本、韓国、インドの若い選手にとっては願ってもない好機、幸運と言っていい。
もちろん、好機、幸運を得た日本、韓国、インドの若者たちは、喜々としてPGAツアーへの道を歩んでいくはずである。
そうやってPGAツアーが着々と体制を固めつつあることは、年の瀬に耳にした何よりのグッドニュースだ。
長年スポンサーを務めるホンダがPGAツアーから撤退
とはいえ、PGAツアーにも課題は山積している。
すでに開幕している22-23年シーズンからの大改革により、賞金2000万ドル級の「格上げ大会」が決まっている一方で、格上げされなかった大会からは落胆や不満の声が上がっている。
長年のタイトルスポンサーだったホンダが23年ザ・ホンダクラシックを最後に降板すると決めたことは、PGAツアーの大失策と言わざるを得ない。
ホンダクラシックのみならず、格上げ大会の狭間に位置付けられた「ノン格上げ大会」は、今後、出場選手の顔ぶれがさびしくなり、集客にもテレビ中継の視聴率にも苦悩させられることになりそうで、そのあたりをどうやって調整、補填していくのかはPGAツアーに課されている大きな課題である。
しかし、PGAツアーを頂点とするピラミッドを強固にしていくための課題に積極的に取り組んでいくポジティブな前進は、とても喜ばしく、価値ある前進である。
敵対心や対抗意識を強め、批判合戦を繰り返すのではなく、せっかくのエネルギーとパワーと知恵は自分自身の拡大成長のために生かすべきである。
その意味で、リブゴルフが揺れ始めた一方でPGAツアーがしっかりと地に足を付けて体制固めを始めたことは、年の瀬の何よりの朗報だった。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
最新の記事
pick up
ranking