各話の内容をサクッとレビューすると…
ネットフリックスのドキュメンタリーシリーズ『フルスイング:その一打が勝負を分ける』の公開が2月15日から始まりました。PGAツアーを転戦するプロゴルファーに密着したドキュメンタリーで、2022年シーズンを1年間追った内容です。

制作は、米国のF1人気を加速させた同じくネットフリックスの『Formula 1:栄光のグランプリ』を制作したチーム。
PGAツアーの大会はもちろん、マスターズや全米オープンなど、メジャー大会にもカメラが入っており、中継では決して見ることができない映像も含まれる超力作です。選手たちの半生を追ったインタビューなどはありましたが、ここまで1シーズンを密着してつくられたドキュメンタリーはこれまで存在しませんでした。
このドキュメンタリーで密着を受けたのは、ジョーダン・スピース、ジャスティン・トーマス、スコッティ・シェフラー、ブルックス・ケプカ、イアン・ポールター、ダスティン・ジョンソン、マシュー・フィッツパトリック、ローリー・マキロイほか、PGAツアーを代表する選手たち。メジャー4戦中3勝を挙げた選手たちに密着しているとは、制作チームは強運ですね。
強運といえば、奇しくも2022年はリブゴルフが立ち上がり、ゴルフ界が大きく揺れた年でした。ドキュメンタリーで密着した選手のうち数名はリブゴルフに鞍替えをした選手でもあります。それぞれの選手の生活やコメントから「なぜリブを選んだのか」が浮き彫りになってきます。
1話目のタイトルは「親友でありライバル」で、トーマスとスピースのシーズンを追っています。ジュニア時代から親交があるということは知られていますが、普段の2人の関係性を、同じチームに帯同しているかのような臨場感で味わうことができます。
22年の全米プロを制したトーマスがどのような意気込みで大会に臨んだのか――PGAツアーファンなら引き込まれる内容でしょう。
2話目と3話目はシーズン途中でリブゴルフに移籍した2人、ケプカとポールターを追っています。
ケプカを追った「勝利こそすべて」では、メジャー4勝を誇り世界No.1まで登り詰めた男の不調のシーズンを追い、「金をとるか、名声をとるか」ではライダーカップの英雄、ポールターの苦悩を追います。2人がどのような経緯でリブゴルフを選んだのか――その直接的な答えこそ示されていませんが、もし彼らの立場ならどうするかを問いかけられているかのようなドキュメントになっています。
4話目は世界ランキング70位の男、ジョエル・ダーメンを追った「過小評価」。
マキロイやケプカなどのスター選手を「別次元の人間だ」と、負けを認めるような発言で始まる、他とはまったく違う回です。周囲はダーメンの才能を認め、ダーメンもその非凡な才能を証明していく、非常に面白い回でもあります。
5話目は英国出身のフィッツパトリックと米国出身のダスティン・ジョンソンを追った「アメリカンドリーム」。昨年、全米オープンを制したフィッツパトリックと、ツアー24勝を積み重ねたジョンソンが、まったく違った道程でたどり着いたアメリカンドリームを見せてくれます。世界の頂を目指すフィッツパトリックと、頂点の景色を味わい、リブゴルフに進路を見出したジョンソンの夢は、これからどこにつながっていくのか。2人の動向が気になる回になっています。
6話目はトニー・フィナウとコリン・モリカワに焦点を当てた「ひねくれる暇があったらうまくなれ」。家族との時間を大切にするフィナウの生き様と、完璧主義者と自称するモリカワの生活に密着します。
7話目の「ゴルフは難しい」は、素晴らしい活躍をしながらも勝利を挙げることができず、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを逃したサヒス・ティーガラと、全米プロゴルフ選手権で71ホールリードしながらも優勝を逃したミト・ペレイラの2人を追います。
そして8話目はローリー・マキロイとキャメロン・スミスを追う「すべてはこの時のために」。ゴルフ界の分断を象徴することになった2人の全英オープンでの対決を中心にストーリーは進みます。まさにPGAツアーの22年シーズンを総括するような内容で、必見の臨場感です。
ノンフィクション映画を見ているかのような気分にさせてくれる『フルスイング:その一打が勝負を分ける』は、ゴルフファンでなくても楽しめるはずです。
そしてすべて見終わった頃には、トニー・フィナウに心を奪われていることでしょう。