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米エンタメ界の大物がリブゴルフ投資話の内幕暴露 PGAツアーに「ダメージを与えることはできない」
5月末に行われたワシントンDC大会で2023年の半分の日程を消化したリブゴルフ。テレビ中継が開始されたものの視聴率が伸びずにユーチューブ中継を再開するなど迷走も見られる。そんな中、米エンタメ・スポーツビジネス界の大物がリブゴルフへの投資を持ち掛けられた話をラジオで暴露。サウジマネーがいつ途絶えるか分からないという焦りともとれる一方で、リブゴルフ自身が自ら前進しようというポジティブな動きともとれなくはない。
ユーチューブ視聴を有料化し、1日2ドル99セントを課金
リブゴルフの2024年シーズンは、5月26~28日に開催されたワシントンDC戦(米国)で年間14試合の半分に当たる7試合が終了。6月30日~7月2日にスペインで開催予定のバルデラマ戦(スペイン)からは今季後半戦へ突入する。

米スポ―ツイラストレイテッド誌によると、そのタイミングに合わせて、リブゴルフは世界へ向けたライブ中継体制を再び変更しようとしているという。
振り返れば、リブゴルフが創始された昨年は、全試合・全ラウンドが世界へ向けてユーチューブでライブ中継され、視聴者は無料で観戦することが可能だった。
しかし、リブゴルフに反感を抱く「アンチ・リブゴルフ」の間からは、「テレビ中継すらないツアーは、一流ツアーとは言えない」「誰も見ていない」などと揶揄する声が多々上がり、グレッグ・ノーマンCEOはリブゴルフと放映権契約を結ぶテレビ局を“物色”しては必死の交渉を試みていた。
そして今年1月、ついにリブゴルフは米CWネットワークと放映権契約を結んだ。現在は、米国の視聴者はテレビでチャンネルをCWに合わせれば、リブゴルフの全試合・全ラウンドを無料で見ることができる。CWが視聴できる環境にある人々なら、CWのアプリ視聴も可能だ。
契約発表の際、大喜びしたノーマンは「これでリブゴルフの露出が世界で最大化される」と誇らしげに語っていた。だが、蓋を開けてみれば、今年の前半戦の視聴率は惨憺たる数字だった。
頭を抱えてしまったリブゴルフは次なる手を考えた。そして、ようやくひねり出した新たな策は、ユーチューブ中継を再開するというもの。ただし、今回は無料ではなく有料化するという。
サウジアラビアの政府系ファンドであるPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の支援を受けて創設されたリブゴルフには「巨額のオイルマネーが流入している」と言われている。しかし、PIFとて、慈善事業でリブゴルフをサポートしているわけではないはずで、リブゴルフがビジネスとして成立しないと判断されてしまったら、支援が打ち切られる可能性はきっとある。
それゆえ、グレッグ・ノーマン率いるリブゴルフは、なんとかして収益を増やそう、高めようと試行錯誤をしていると見られ、ユーチューブ中継の有料化は、その表れの1つだと考えるのが妥当である。
とはいえ、課金体制をグローバルに統一することは、システム上、難しいそうで、おそらくバルデラマ戦からは米国内におけるユーチューブ視聴には1日2ドル99セントが課金されるが、米国以外では無料で視聴できる国や地域もあるとのこと。そのあたりの詳細は今のところは明かされていない。
それにしても、ユーチューブ中継から始まったリブゴルフが、「何が何でも」という勢いで米国のテレビ各局に働きかけ、ついにCWと放映権契約を結んだと思ったら、またまたユーチューブ中継を再開し、しかも今度は無料配信から有料配信へ変更されるという一連のこの動きからは、リブゴルフの必死さが伝わってくる。
しかし、リブゴルフが求めるファーストプライオリティーは何なのかは、いまだに見えてこない。当面のゴールに向かって進んでいく際に、彼らにどんな課題や難題があるのか。そのあたりの具体的なことが何も明かされず、何も語られないため、周囲は理解したくても理解のしようがない。
フィル・ミケルソンやブライソン・デシャンボーが投資を働きかけ
そんな折、リブゴルフの根幹に関わる驚きのニュースが米国から飛び込んできた。
リブゴルフのバックについているPIFに取って代わるかもしれない有力候補が「実は出現していた」という話は、米ゴルフ界に大きな衝撃をもたらした。
米国の「エンデバー」と言えば、IMGなどを傘下に収める巨大持ち株会社だ。そのエンデバーを率いるアリ・エマニュエルCEOは、5月31日(米国時間)に米国内向けのラジオ番組に出演し、リブゴルフに10億ドル(約1400億円)の投資を行うことを社内で具体的に検討していたという驚きの事実を明かした。
エマニュエルCEOは、PGAツアーからリブゴルフへ移籍したフィル・ミケルソンやブライソン・デシャンボーからの働きかけを受け、リブゴルフへの巨額の投資を社内で現実的に検討したというのである。
エマニュエル氏はPGAツアーを率いるジェイ・モナハン会長とは以前からきわめて親しい友人同士の間柄であり、エンデバーとその傘下企業は、PGAツアーをはじめとする現在の米ゴルフ界とビジネス上さまざまなつながりがある。
「ジェイは僕の友人だ。いろんなビジネスも一緒にやってきた。友を傷つけたり、ビジネス的にダメージを与えたりすることはできないし、したくない」
エマニュエル氏はそう語り、結局、エンデバーによるリブゴルフへの投資話は、そこまでで終わりになった。
一部の米メディアは、エマニュエル氏が情に厚い性格ゆえにモナハン会長を気遣ってリブゴルフへの支援を取りやめてくれたという浪花節のトーンで報じていた。
だが、米国の辣腕ビジネスマンが友情や義理人情だけでビジネス判断を下したとは考えにくい。
おそらくエマニュエル氏はリブゴルフがいまなお試行錯誤の状況にあることを見抜き、「ビジネスにならない」という判断を先に下した上で、モナハン会長との友情を口実にして、ミケルソンやデシャンボーらに「ノー」と伝えたのではないかと私は思う。
いずれにしても、今回は結果的に「話」だけで終わったが、お金の臭いに敏感な人物にミケルソンらがあらためて働きかけ、もしも頷かせることができたとしたら、今後、リブゴルフへの莫大な投資話が成立するケースは、もちろんある。
そうしたあらゆる可能性にそなえ、「経済的なソリューション(解決策)を備えておく必要がある」と、エマニュエル氏はモナハン会長に助言したそうで、その結果、「ジェイは、きっちり対応した」と、最後にはエマニュエル氏もご満悦の様子を伺わせていた。
昨今の動きは「ポジティブかつアクティブ」
リブゴルフは創設段階も創設後も、終始アクティブな動きを見せ続けてきたが、それらの大半は批判や不平不満を口にするネガティブなものだった。
しかし、昨今の動きは「ポジティブかつアクティブ」になりつつある。
世界ランキングの対象ツアーとしての認可がなかなか得られず、選手たちの世界における位置づけが低下の一途を辿っていることが、リブゴルフとその選手たちの焦りにつながっていることは想像に難くない。
だが、ときにそれは前向きな原動力にもなるようで、ミケルソンやデシャンボーが自ら動いてエンデバーに投資話をもちかけたことからも、彼らが前進しようとしていることが伝わってくる。
「窮鼠猫を噛む」という謂われが示す通り、窮した人々が爆発させるエネルギーは決して侮るべからず。
その意味では、PGAツアーは一時たりとも気を抜くことはできない状況にある。しっかり気を引き締めて、選手はグッドプレーを、ツアーは「ファンと選手のため」を第一に考えて、前向きの運営努力を心がけていただきたい。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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