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ゴルフ新団体はリブ出資者がトップに? 選手も“寝耳に水”で戸惑い続々「PGAツアーを擁護した人間だけが大負け」
米国時間の6月6日、PGAツアー、DPワールドツアー、リブゴルフの権利を持つサウジアラビア資本のPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)は、三者共同で新たな団体を設立し、新団体にそれぞれの権利、事業を統合する契約に署名した。ゴルフ界を二分してきた敵対関係が解消されたことは喜ばしいことに思えるが、この急展開は選手にとっても“寝耳に水”だったようで、戸惑いの声が噴出している。
「10年後に人々がこの統合をどう見るかが重要だ」
「PGAツアーとDPワールドツアーがリブゴルフとの統合に合意した」という驚きのニュースは、米ゴルフ界のみならず世界のゴルフ界に衝撃をもたらしている。
そして、その知らせは、選手や関係者にとっても、ゴルフファンにとっても、文字通りの「青天の霹靂」であり、まさに「寝耳に水」だった。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長は6月6日(米国時間)の朝に声明を出し、PGAツアー、DPワールドツアー、リブゴルフをサポートしているサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の3者が統合の合意書にサインしたことを発表した。
そして、モナハン会長はPIFのヤセル・アル・ルマイヤン会長とともに、仲良く並んで米テレビ局CNBCのモーニングショーに出演した。
「ここ数年、ゴルフ界は緊張状態にあった。でも、この統合により、ようやくゴルフが1つのアンブレラの下になる」
モナハン会長がそう語ると、アル・ルマイヤン会長も笑顔で「マネーの面から言えば、ゴルフ界がこの10年、いや20年をかけてようやく達成した成長を、この統合によって1つになった私たちは必ずや一気に実現できるはずだ」と豪語した。
両会長が笑顔を輝かせていた傍らで、進行役のキャスターはやや神妙な表情を浮かべ、大勢の人々が抱くであろう質問をストレートにモナハン会長にぶつけた。
「これまではリブゴルフを批判し、対立してきたPGAツアーが、今、突然、手のひらを返すようにリブゴルフとの統合に合意したことに対して、人々から批判の声が出るのでは? それには、どう対応するつもりですか?」
モナハン会長の返答は、こうだった。
「今、人々がこの統合をどう思うかより、今から10年後に人々がこの統合をどう見るかが重要だ」
モナハン会長は、さらに言葉を続けた。
「この統合により、今後、すべての男子プロゴルファーに、より多くのプレー機会と成長がもたらされることだろう。同じものを女子プロゴルファーにも授けたいし、ゴルフビジネスに関わっている人々にも、さらなる機会と成長をもたらしたい。ゴルフ界の未来には、もはや、いいことしかない」
「ツアーを運営しているのは選手ではなかったんだっけ?」
気になるのは選手たちの反応だ。SNSには、次々に選手たちからの声が上がり、嵐のような状況になった。
この統合合意は、どうやら大半の選手にとっても寝耳に水だった様子だ。
フィル・ミケルソンは「今日は素晴らしい日だ」とマーク付きで喜びを露わにしていたが、コリン・モリカワは「テレビのモーニングショーは新たな発見があるから好きだ」と皮肉交じりにつづり、番組を見るまでは、このニュースをまったく知らなかったことを間接的に伝えていた。
PGAツアー選手のマイケル・キムは「この統合話を知っていたのは、たったの5~7人ぐらいでは? ツアーを運営しているのは選手ではなかったんだっけ?」と首を傾げ、何も知らされないままコトが進行し、結論が出されていたことに怒り混じりの驚きを表していた。
韓国出身のアン・ビョンフンは「これでPGAツアーとリブゴルフは、どちらも“ウィンーウィン”だろうけど、この2年間、PGAツアーを擁護してきた人間だけが大負けだよね」。
そんなふうに、選手たちの反応は、あまりにも突然の出来事ゆえに考えがまとまらず、驚きばかりが先行している様子で、現段階では、まとまりがない。
しかし、欧州ゴルフの総本山R&Aを率いるマーティン・スランバー会長は「この統合は男子ゴルフを建設的かつ革新的に前進させる。大きな前進になる」と、諸手を挙げて賞賛している。
一方で、USGA(全米ゴルフ協会)からは火曜日(米国時間)の午前の段階ではコメントが出されておらず、慎重に受け止めようとしていることが伺われる。
選手たちの多様な意見を調整していくこと自体が前進
さて、PGAツアーとDPワールドツアー、PIFが統合し、1つの新組織を形成することは決まったが、それが具体的にどういうものになるのかは、まだ明かされていない。
いや、明かされていないというより、詳細はまだ決まっておらず、これから検討されることになる。
なにしろ新組織の名称もまだ決まっていないのだが、首脳陣の人事だけは先行して決められた様子だ。
米ゴルフウイーク誌の報道によると、新組織の会長には現PIF会長のアル・ルマイヤン会長が就き、PGAツアーのモナハン会長はCEOとなる。
そして、米欧ツアーとリブゴルフの間ですでに進行している法廷闘争にピリオドを打ち、現在メンバーシップを停止されている元PGAツアー選手、元DPワールドツアー選手のメンバーシップを復活させるとともに、3つのツアーの選手たちを1つの土俵に乗せる際に彼らのステータスや位置づけをどう調整していくかを具体的に検討していく。
そうした一連の作業は、すでに開始されているのだそうだ。
さまざまな困難が伴う作業になるのかもしれない。さまざまな反応を示している選手たちからは、今後、さらに多様な反応が示される可能性もあり、組織が1つに統合されても、選手たちの意見はバラバラに分かれ、紛糾することもありえるだろう。
しかし、ツアーとツアーの対立によってゴルフ界が分断されていたこの2年を思えば、1つのアンブレラの下で選手たちの多様な意見を調整していくことは、それもまた新組織の向上につながる前進となるのではないだろうか。
「ゴルフの成長と成功」を掲げ、新たに誕生しようとしている一大組織は、選手とファンに、どんなゴルフ界をもたらしてくれるのか。「成長と成功」を目にする日が、もう待ち遠しくなっている。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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