大昔からあった言葉で打法ではなく「ウェッジ戦略」
そもそも日本人にとって、英語のゴルフ用語は「なんかカッコいい響き」に感じてしまいます。ちなみに「ウェッジ」と言う言葉は「くさび」形状を表す意味があります。ゴルフクラブで言うと、正面から見たヘッドの形がくさび形なので「ウェッジ」の名称がついています。

これを踏まえて「フライングウェッジ」の話をすると、21世紀に生まれた新打法でも何でもなく50年以上前からあったゴルフ用語です。
スイングを正面から見ると両腕と胸でできた三角形が「くさび」に見えなくもないのが分かるでしょうか?
フルショットのように長いクラブをスイングすると腕の入れ替えが少なからず行われるため「三角形」はひっくり返ります。英語で言えば「アームローテーション」になりますが、ウェッジショットは飛距離が出るかどうかよりも狙ったとおりの距離と方向に上がって止まってくれる方が合理的です。その考えから「三角形はインパクト以降もそのままの方がよくない?」というのが「フライングウェッジ」の主な考え方です。

近年PGAツアーで「ウェッジ専門コーチ」が台頭しているのは、「ウェッジ戦略をもっと精密にしよう!」という発想から。これが全体戦略としての「フィネスウェッジ」というゴルフ用語なのです。
打ちたいショットに合った「ロフト選択&使い方」
「フィネスウェッジ」という言葉が登場する以前に、メジャー18勝の帝王ジャック・ニクラス選手が活躍していた1970年代には、ウェッジショットをドライバーなどのフルショットと切り離す戦略はありました。
ロフトどおりにボールを上げるショットでは「ハンドファースト」を最小限にし、必要以上にターフを取らないスイングとして、1980年代にはトム・ワトソン選手はじめ「ノーターフ打法」が流行して日本でもてはやされました。

転がす場合にのみロフトを立ててシャフトを傾けるアドレスを行う「ケースバイケース」な合理的戦略は今も昔も変わっていません。
今まで「ハンドファースト」や「ダウンブロー」でウェッジを打つことを一生懸命続けていたアマチュアには、まるで「手のひら返し」のように「むしろ逆なスイング」を勧められた気分がすると思います。
当たり前の話として60度のウェッジを20度もシャフトを傾けたハンドファーストでスイングしたら、どんなショットになるのでしょうか?
ダフリのミス予防のための「多少のハンドファースト」ならいいのですが、高くボールを上げるために使っているウェッジでそのような打ち方をしたら「バンスとロフトが働かないよね?」、「ウェッジのロフト構成で解決したら?」となるはずです。そんな普通の考え方が「フィネスウェッジ」です。
ウェッジをロフトどおりに使うアドレスやクラブセッティングにして、「合理的にグリーンを攻略する」という考え方なのですが、いきなりアマチュアが180度方針転換して「ウェッジのアドレスでは、シャフトを真っすぐがPGAツアープロの新常識」みたいになるのは本末転倒です。
「フライングウェッジ」も同様に、「そんなに飛び過ぎ&引っかけるならインパクト後も腕を返さない方がよくない?」といってるだけで、全てのウェッジショットでフェースも腕も一切返さず「三角形を固めたままでスイングしろ」とはいっていないのです。