マキロイのドロップ巡りスピース、ホブランと“8分間”も押し問答 池に入れた地点で意見が割れたらどうする?

“第5のメジャー”プレーヤーズ選手権の舞台、TPCソーグラス・スタジアムコースは池だらけのコースとして知られ、池ポチャ絡みのルールトラブルが絶えません。今回もローリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、ビクトル・ホブランという最注目組で、8分間もの押し問答が繰り広げられました。

池を越えてから入ったか直接入ったかで大違い

“第5のメジャー”と称されるプレーヤーズ選手権。今年の大会は世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーの2年連続、そして2週連続優勝という快挙で終わりました。しかし、大会前半にメディアを最も賑わせたのは、第1ラウンドで起こった、ローリー・マキロイのドロップ位置をめぐる“論争”でした。

プレーヤーズ選手権の初日を同組でプレーしたローリー・マキロイとジョーダン・スピース 写真:GettyImages
プレーヤーズ選手権の初日を同組でプレーしたローリー・マキロイとジョーダン・スピース 写真:GettyImages

 トラブルが起こったのは第1ラウンドの終盤でした。ジョーダン・スピース、ビクトル・ホブランとともにインスタートでプレーしたマキロイは、この日、絶好調。6番ホールまで9バーディー、1ボギー。64打ペースで進んでいました。

 ところが、ほぼストレートながらフェアウェイの左に沿って池(レッドペナルティーエリア)が広がる7番(452ヤード、パー4)でのこと。マキロイはティーショットを少し引っかけ、248ヤード先まで飛んだボールは左傾斜のラフに着弾し、池に飛び込んでしまいます。

 ボールが落ちた辺りまで進んだマキロイは、ティーショットが池に並行して引かれたレッドペナルティーエリアを示す赤線を一旦越えたと判断。ボールはジェネラルエリアのラフで跳ね、再度赤線を横切って池に落ちたとして、最後に赤線を横切った地点(エントリーポイント)を推定。同ポイントを基点にラテラル救済を選択し、ホールに近づかない2クラブレングスの救済エリアにドロップを行いました。

 ところが、スピースとホブランがその救済に疑問を持ちます。マキロイのティーショットは赤線を超えず、手前のペナルティーエリアのラフに着弾して池に落ちたように見えたと主張。その場合、マキロイの救済は、事実上ティーイングエリアからの打ち直し(第3打)になります。両者の差はとても大きいので、2人は目撃者の証言やビデオ映像などで確認すべきというのです。

 ルールオフィシャルも加わるなか、
「ボールの行方を見ていた人たちはみんな、確実にライン(赤線)の手前に落ちたと言っている」(スピース)
「みんなって誰のこと?」(マキロイのキャディー、ハリー・ダイヤモンド)
「ここにいる(テレビ関係者の)みんながそう見えたと言っているよ」(スピース)
 といった、ちょっとトゲトゲしたやり取りもあり、双方の合意にはなかなか至りません。

 結局、着弾地点が分かる映像はなく、マキロイが主張した通りに落ち着くまでに8分あまりもの時間がたってしまいました。

最終的にはプレーヤーの合理的な判断が尊重される

 大会の舞台であるTPCソーグラス・スタジアムコースは、フェアウェイに沿って池がラテラルに広がるホールが多く、過去にもエントリーポイントを巡って選手間の“論争”が起きたり、メディアやファンが疑問の声を挙げる例がいくつもありました。

 2022年大会では、最終日の16番パー5でダニエル・バーガーがグリーンを狙って放った第2打が大きくスライス。池に落ちたボールのエントリーポイントをめぐり、バーガーがビクトル・ホブラン(ここでも登場!)とジョエル・ダーメンの2人と“大論争”を繰り広げました。

 バーガーが主張するポイントに対し、ホブランは「(よりグリーンに近い)その位置には同意できない」と激しく反対。しかし、このときも確証が得られるビデオ映像はなく、結論は3選手の話し合いに委ねられ、最終的にホブランの主張に近いポイントが選ばれました。

 13年大会では最終日、優勝したタイガー・ウッズが14番パー4のティーショットをフェアウェイ左に池ポチャ。そのラテラル救済のドロップ位置が「怪しい」と問題になりました。

 ただ、このとき疑問を発したのは、同じ組のプレーヤーであるケイシー・ウィッテンバーグではなく、中継映像をモニターしていたコメンテーターなどのメディア関係者でした。

 そのドロップ位置はタイガーとウィッテンバーグが話し合い、合意のうえ推定されたポイントでした。

 このようなケース、つまり「球がペナルティーエリアの縁を最後に横切った場所を推定する」ときは、ルールでは「プレーヤーの『合理的な判断』を受け入れる」(規則1.3b(2)より)とされており、「プレーヤーが正確な決定を行うためにその状況下で合理的に期待されることを行っていれば、そのプレーヤーの合理的な判断は、たとえストロークを行った後にビデオの証拠や他の情報によりその決定が間違いであることが示されたとしても、受け入れられる」となっています。

 ですから、タイガーとウィッテンバーグが理性的に話し合って決定したエントリーポイントは、明らかに合理性を欠かない限り、尊重されるのです。

 これは一般アマチュアでも同様です。ペナルティーエリアへのエントリーポイントなどは、プレーヤーが合理的に判断したものであれば(同じ組のプレーヤーの見解も加味したものであればより合理的と考えられる)、尊重されます。

 ただし、合意が得られず、意見が分かれるときは、一般的に「プレーヤーに不利に」というのが“ゴルファーのマナー”とされています。

【動画】あなたはどう思う? これが論争を巻き起こしたマキロイの池ポチャ実際の映像です

【図解】後方線上ドロップの正しい処置と2023年ルール改訂3つの変更点をおさらい

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球がレッドペナルティーエリアにあることが分かっているか、事実上確実で、プレー ヤーが救済を受けたい場合、プレーヤーには3つの選択肢がある。それぞれ1罰打で、 プレーヤーは次のことができる。 (1)直前のストロークを行った場所に基づき救済エリアから球をプレーすることによっ てストロークと距離の救済を受ける。 (2)ホールとX点を結んだ後方線上のペナルティーエリアの外に球をドロップすること によって後方線上の救済を受ける。 (3)ラテラル救済を受ける(レッドペナルティーエリアに限る)。救済を受けるための基点 はX点で、球は2クラブレングスでX点よりホールに近づかない救済エリアの中にド ロップし、その中からプレーしなければならない。(ゴルフ規則 17.1dより抜粋)
1.後方線上の救済は「線の上」にドロップしなければならなくなった
2.救済後、風でボールが再び池に入ったら「無罰でリプレース」
3.間違ってインプレーでない球をリプレースしてパットした「2罰打→1罰打」
プレーヤーズ選手権の初日を同組でプレーしたローリー・マキロイとジョーダン・スピース 写真:GettyImages
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