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「意味なんてないんだよ」 前澤友作氏が「前澤杯」の14日間で見せたかったものとは? 成果と課題を整理してみると…【小川朗 ゴルフ現場主義!】
さまざまな話題を提供してくれた国内男子ツアー「前澤杯 MAEZAWA CUP 2025」が終わりました。日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏が、1年目の成果と課題を整理します。
「賛否両論ありますが、来年も続けていきたいと思います」
さまざまな話題を提供してくれた国内男子ツアー「前澤杯 MAEZAWA CUP 2025」が終わりました。大会は通算17アンダーにスコアを伸ばした小西たかのりが、今平周吾を1打抑えてツアー初優勝。

実に10日間に及ぶプロアマ大会、スコアボードを持ったラウンドガールの起用、女子プロゴルファーの参戦、総額20億円を超えるというハイパーカーの展示と、次々に新機軸を繰り出した今大会。14日間の長丁場を乗り切った主催者の前澤友作氏は「賛否両論ありますが、来年も続けていきたいと思います」と力強く宣言。大会の継続を確約しました。実際のところ、内情はどうだったのでしょうか。各方面を取材しました。
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【成果1】トーナメントの概念をぶち破る華やかな演出
ピンクのワンピースに身を包み、スコアボードを掲げて歩くラウンドガールの姿やクラブハウス周辺にレイアウトされたハイパーカーも、話題になりました。トーナメントの概念をぶち破る光景に「一体何の意味があるの?」という声も、前澤氏には届いていました。
「僕は一番エゴサ(エゴサーチ)しているんじゃないか、というぐらい『前澤杯』について調べています。(意味がない、という声に対しては)『意味なんてないんだよ』と答えたい。特に意味を求めてやっているわけじゃない。何か新しい、華やかなものにチャレンジしたいっていうだけ」(前澤氏)
【成果2】大好評だったプロアマへの一般参加
プロアマ戦は10日間のロングラン。出場枠は1組100万円で売りに出され、お目当てのプロをオークション形式で落札する試みは話題を呼びました。石川遼とのラウンドが上限の500万円で落札されるなど、あらためてその人気を証明する形になりました。

従来は大会経費を出しているスポンサー企業のお得意様などに振り分けられていたプロアマの出場枠。販売していた試合もないわけではありませんが、全面的に一般のファンに開放する試みは、大好評を博しました。プロアマ最終日に、倉本昌弘JGTO副会長が明かしたエピソードが、それを証明していました。
「ソン・ヨンハンが僕らの前の組を回っていたんですけど、この組はご夫婦が買われたんですよ。『関西から来ました。私はもう10年来のファンです。こうやって回れる機会をもらえるなんて思ってもみなくて、本当に良かった』と話していました。これは新たなファン層だと思うんです」
憧れのプレーヤーを独占してレッスンまで受けられる。それは確かに、プライスレスな時間であるに違いありません。前澤氏もプロアマ参加者からの「すごく楽しかった。プロの打つ球はすごい、というリアルな声が聞こえてきた」と語ります。「うれしかった。来年に向けて可能性を感じました」と、こうした声が継続開催への追い風になっていることは確かなようです。
【課題1】スループレーが不可能に
一方で、予想外の展開が起きるのも手探り状態の第1回大会であればこそ。予選落ちはなく、今大会は4日間100人がプレーするという開催スタイル。最終日は強風のコンディションも重なり、ハーフターンで“渋滞”が起き「昼食付プレー」のような休憩時間が生じてしまう事態に。関係者からは「お昼に50分の休憩時間ができてしまうのは、プロゴルフの世界ではありえない」という厳しい指摘も飛び出しました。
【課題2】高く設定しすぎた賞金総額
当初、賞金総額はプロアマの収益次第で最高4億円、優勝賞金8000万円と発表されていました。実現すれば国内最高額大会となるはずでしたが、フタを開けてみるとプロアマ戦の売上は3億3000万円どまり。賞金総額は2億円に決定され、残りの1億3000万円は大会運営費に充てられることになりました(国内最高額大会は8月の「ISPS HANDA 夏の決戦・誰が一番強いんだトーナメント」の賞金総額2億1300万円)。
これに関しては、倉本副会長が「『最大4億円』ではなく『まず2億円を保証し、皆さんの参加次第で最大4億円に』と伝えれば良かった」と指摘しています。
別のツアー関係者からは「オークションの最高金額を500万円に設定したのは失敗。石川選手になら、もっと高い金額が期待できたはず。500万円で止まってしまったため、他の選手へのオークション額も伸び悩んだ」という意見も聞かれました。
【課題3】高すぎた入場料
今大会の入場料は木曜日から日曜日まで、4日間とも1万円。「運営上(大勢の)お客さんが来た時にどうなってしまうのかという不安がありました。あまりにもいっぱい来ると困っちゃう、という状態で開幕を迎えましたので、チケット代を高く設定しました」と前澤氏は本音を漏らしていました。
チケットは各日の入場券が4日とも1万円で販売されましたが、4日間トータルの入場者数は3641人にとどまりました。参考までに、昨年、東京ゴルフ倶楽部で行われた日本オープンは予選ラウンドが各日4000円で、決勝は確実6000円。ギャラリー数は初日から2615人、2942人、3738人、6382人と、前澤杯を大きく上回っています。
「来年はもうちょっとチケット代を下げて、多くの方にいらっしゃっていただけるよう考えています」と前澤氏は反省しきりでした。
【課題4】「今後も主流にはならない」という指摘
「日本ゴルフ界における“新たなスキーム”。従来にない仕組みが導入され50年以上続いてきた枠組みを打ち破った」と、JGTOの倉本副会長は開催の意義を強調していましたが、厳しい声もなくはありません。
「例えばマスターズだって、今、4日間のパトロンのチケットは475ドル。1日にしたら1万円ちょっとの価格でやっていて、4万人のパトロンがいるわけです。そのパトロンになりたい人たちが、10何年も20年も待っています。世界一のトーナメントでそうなのに、これが新しいスタイルとか、これがスタンダードとか言ってるのはちょっと……」と疑問を呈したのが、“屋根裏のゴルファー”ことタケ小山プロ。
「今回、選手たちが売りに出たわけですよね。その中にはオークションっていう商品棚に並んだ末に、買ってもらえなかったプロもいる。そこに気づかなきゃいけないと思うんです。『全員が商品にならないと、興行としてツアーをやっていくにはダメなんだ』っていうくらいの問題意識が欲しかった。かつて『ファンよりお金を出してくれるスポンサーが大事』という土壌を作ってしまったことで、深刻な問題が起きたわけですから」
さらにこうも話しています。「(米ツアーで開催されていた)ビング・クロスビー(ナショナルプロアマ=現在のAT&Tペブルビーチプロアマ)もボブ・ホープ(デザートクラシック=現在のザ・アメリカンエキスプレス)も芸能人が始めたプロアマ(形式のトーナメント)だけど、ベースにはチャリティーの精神があって、チャリティーに回すためにプロアマの参加者からお金をもらって、実際のトーナメントは入場料などで運営されていました」
「『今回は完全に(プロアマに)出る人がお金を払って、それが賞金になるって形なので入場料をもらうのと同じだ』という風に書き方をしてる記事もある。でも今回、入場料を払って見に来てる人って、かなり少ない。みんなプロアマでもらったチケットをぶら下げてるっていう話も聞きました。それではプロアマでの100万円っていうのを払える人たちだけのエンターテインメントになってしまう」

今後、こうしたトーナメントが続々と出現することにより、プロアマ参加者主導が強まり、観戦するファンから遠ざかることになるのでは、という危惧が生まれているわけです。しかしこの件については、日本ゴルフツアー機構(JGTO)諸星裕会長がこう答えています。
「今回は新しい試みで、大会は2週間の長丁場。うち(JGTO)のスタッフも準備期間を含めると、もっと前から大会に張り付いているわけで、本当によくやってくれました。ただ、この大会のスタイルが(ツアーの)主流になることはない」
多くの課題が噴出しながらも、前澤氏は大会の続行に意欲を見せました。来年の前澤杯がどこまでブラッシュアップされるのか。まずは近々行われる主催者側とJGTOの反省会で、来年への準備がスタート。ここに、注目です。
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