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- 畑岡奈紗が逃した「米ツアー賞金女王」岡本綾子34年前の快挙を元・番記者が振り返る
米女子ツアー最終戦のCME選手権で優勝争いを演じ、米女子ツアーの賞金女王まであと一歩と迫った畑岡奈紗。その快挙を34年前に達成したのが岡本綾子でした。当時を知る元・番記者で日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏が賞金女王獲得までの道のりを振り返ります。
エースとしてソフトボールで全国優勝した豪打の岡本
畑岡奈紗が米女子ツアー最終戦のCME選手権まで賞金女王を獲得するチャンスを残したことで、同時にクローズアップされたのが日本人としては唯一、賞金女王を経験している岡本綾子の存在でした。
岡本が米国人以外としては初の賞金女王に輝いたのは、今からさかのぼること34年前の1987年。最終戦を前にして受けていたプレッシャーは、今回の畑岡より大きかったように思います。
というのも、賞金ランク対象の最後の試合であるマツダジャパンクラシックは、岡本にとって地元となる日本の武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)であったからです。
この頃、筆者は東京スポーツの海外特派員として米ツアーを長期間にわたってカバーしていたため、その活躍を強烈に記憶しています。岡本は腰痛治療で苦しんだ85年のシーズンを乗り越え、86年の開幕2戦目で早々に復活。87年はパワーで圧倒していたゴルフからオールラウンドプレーヤーに転換して、円熟の時期を迎えつつありました。
まず4月の京セラ・イナモリクラシック、5月のクライスラー・プリムス・クラシック、7月のレディ・キーストン・オープンとコンスタントに3勝。最も大きかったのは8月中旬にジョージア州のレイク・レニエ・アイランズで行われた高額大会のネッスル世界選手権でシーズン4勝目を挙げたこと。これにより、米国人がずっと守り続けてきた賞金女王のタイトルを岡本が獲得する可能性が一気に高まったのです。
とはいえ、賞金レースはこの後熾烈な展開を迎えます。岡本は84年にもJ&Bスコッチ、メイフラワー・クラシックと2勝した後、秋の全英女子オープンで2位に11打差をつけるぶっちぎりで3勝目。この頃の岡本はまだ33歳と当時としては若く、ソフトボールで全国優勝時のエースだった体力を存分に発揮して米ツアーでも屈指の飛距離でライバルたちを圧倒していました。
日本での最終戦で米国人以外で初の賞金女王に
その岡本のチャンスを叩き潰したのが、この年すい星のように現れツアーの注目を集めた4歳下のベッツィ・キング。春先のウィメンズ・ケンパー・オープンでプロ初優勝を飾るなど3勝を挙げて初の賞金女王に輝きました。そのキングが、岡本の前にまたもや立ちはだかったのです。
87年、キングはツーソンで1勝すると、2週後のナビスコ・ダイナ・ショアでメジャー初優勝。さらに世界選手権に次ぐ高額な優勝賞金のマクドナルド選手権、さらに岡本が3勝目を挙げた翌週のアトランティックシティー・クラシックで4勝目を挙げ、最終戦まで賞金女王の行方はもつれ込むことになったのです。
9月下旬のサンノゼ・クラシックで米本土の戦いが終了した時、賞金ランクトップにいたのはキング。岡本は8300ドル差で追う展開となり、この大会でキングが3位以下なら、岡本が2位以上で逆転できる状況でした。
残されたのは、日本で行われる最終戦のみとなりました。岡本が外国人初の賞金女王の座に輝くのか。日本のゴルフファンの期待は一気に高まりました。
連日の大ギャラリー。そんな中、岡本は初日2位の好スタートを切ります。最終日は森口祐子が5打差首位でスタートし、岡本と日蔭温子が2位に並んで追走、キングは10位スタートと苦しんでいました。
しかし、最終日の朝、岡本も凄まじい重圧に苦しんでいました。「スタート前はトイレで手が震えっぱなし。1番のティーでも、ティーアップする時に手が震えた」と、後に語っているほどです。それでもティーショットを打つと平静さを取り戻し、岡本は見事森口に3打差の2位でフィニッシュ。1アンダーの4位に終わったキングを逆転し、賞金女王、ロレックス・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー、試合ごとにかけられたポイントを競う、マツダLPGAシリーズチャンピオンの3冠に輝いたのです。
賞金女王の決定直後、仲の良いパティ・リゾやジェーン・ゲディスらに担がれて祝福された感動のシーンは、伝説となりました。それは岡本が追い込まれていた苦しい精神状態を、親しい仲間たちが感じ取っていたことの証明でもあったのです。
畑岡は最高のプレーをするもコ・ジンヨンがそれを上回る
ひるがえって、今回の畑岡の健闘ぶり。シーズン最終戦のCME選手権に賞金ランキング5位で臨んだ畑岡でしたが、大会には女子ゴルフ史上最高額となる150万ドル(約1億6500万円)という超ビッグな優勝賞金が用意されていたため、優勝ならばコ・ジンヨン(韓国)を逆転するチャンスもありました。
最終日は通算14アンダーでコ、畑岡、ネリー・コルダ(米国)、セリーヌ・ブティエ(仏)の4人が首位に並んでスタート。コが1番から3連続バーディーで飛び出すと、畑岡も2、3番の連続バーディーで追走します。折り返し時点でつけられた3打差を必死に詰めようと試み、最終的には9バーディー、1ボギーの64をマークして、通算22アンダーでフィニッシュしました。
ところがその上を行ったのがコ。この日だけで9アンダーの63でラウンドし、通算23アンダーで3年連続の賞金王をゲットしました。
畑岡は34年ぶりとなる日本人2人目の賞金女王に1ストローク足りずに涙をのみました。それでも賞金ランキング3位は2009年の宮里藍に並ぶ日本人歴代2番目の好成績です。畑岡選手はホールアウト後「メジャーを取りたいという気持ちは変わらない」と前を向きました。
この言葉を聞いて、筆者はある偶然に気づきました。畑岡は今年の全米女子オープンで、笹生優花とのプレーオフに敗れ、惜しくも2位に終わっています。
実は岡本も、賞金女王になった1987年の全米女子オープンでは、ローラ・デービース(英国)、ジョアン・カーナー(米国)との3人プレーオフを戦っています。岡本はデービースに次ぐ2位タイに終わっていますが、全米女子オープンは、その年の誰もが照準を絞って臨む最高峰の大会。その大会でプレーオフに残るということは、すでに賞金女王にいつなってもおかしくないだけの、実力を備えていることにもなるのでしょう。
来年の畑岡選手には、十分期待して良さそうです。
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