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- 「曲げない男」から「超曲げない男」へ 稲森佑貴が打ち立てた驚異の記録とは?
長かった2020-21シーズンはC・キムの賞金王で幕を閉じた国内男子ゴルフ。部門別の成績を振り返ると、稲森佑貴がとんでもない記録を打ち立てていることが分かった。
歴代最高の77.63%!驚異的なFWキープ率のすごさとは
日本一曲げない男・稲森佑貴が今季、とてつもない大記録を打ち立てた。それはフェアウェイキープ率歴代最高。77.63%の数字は自らが保持していた従来の記録を4ポイント近くも上回ったのだ。
稲森はプロデビュー4年目の2015年から6シーズン連続でフェアウェイキープ率1位に輝いている。
国内男子ツアーでフェアウェイキープ率が計測され始めたのは2001年とそれほど歴史は長くないが、最長の連続シーズン1位記録である。
通算1位回数では井戸木鴻樹が7回でトップ。稲森はあと「1」に迫っている。その稲森の2015年以降のシーズン別フェアウェイキープ率は以下の通りだ。
稲森佑貴のフェアウェイキープ率
2015年 69.61%
2016年 71.66%
2017年 70.83%
2018年 73.69%
2019年 69.39%
2020-21年 77.63%
2015年までフェアウェイキープ率70%を超えたのは2005年井戸木の1例(70.32%)しかなかった。輝き続けていた金字塔を初めて超えたのが2016年の稲森。71.66%という見事な数字だった。
2年後の2018年、正確無比なティショットを武器に日本オープンで初優勝を飾る。単独首位から68をマークして逃げ切った最終日、重圧の中で稲森は驚異のフェアウェイキープ率100%をマークしてみせた。
そして、この年のフェアウェイキープ率は自ら打ち立てた記録を塗り替える73.69%だった。これ以上はないような数字かと思われたが、今季はまたもや自分を超えて新記録を達成したのである。70%超えを果たしているのは、未だ井戸木と稲森の2人だけだ。
ティショットにおいて飛距離と正確性というものは相反する関係にある。飛べば正確性は落ちるし、正確性を高めれば飛距離が犠牲になる。稲森も今季のドライビングディスタンスは266.08ヤードで100位。下には3人しかいないという位置だ。
この2つのファクターを比べると、どうしても飛距離が脚光を浴びる立場にあり、正確性は目立たない。しかし、フェアウェイを確実に捕えるという技術はゲームを組み立てる上で重要。
特に難しい舞台ではよりスコアメイクの支えになる。稲森の2勝がともにコース設定の難易度が高い日本オープンであることはその証明だ。
今季、稲森に次ぐフェアウェイキープ率2位は白佳和の69.67%だった。稲森との差は7.96ポイント。これは2位との歴代最多差である。従来の最多差は2018年の6.68ポイント。ここでも稲森は自らの記録を塗り替えていた。まさに無双状態である。
フェアウェイが広い米男子ツアーも上回る数字
最後に、もうひとつ稲森の歴史的快挙を記しておきたい。それは、初めて米ツアーを超えたというものだ。
米ツアーの舞台は日本に比べてフェアウェイがかなり広い。だから、多少の曲がりは受け止めてくれる。
破壊的な飛距離を誇るブライゾン・デシャンボーの2020-21シーズンフェアウェイキープ率は54.18%。米ツアーでは最下位に近いが、日本のランキングにあてはまれば真ん中くらいの数字なのだ。もしデシャンボーが日本でドライバーを振り回せば、フェアウェイキープ率はかなり悪くなるだろう。
米ツアーでは1980年からフェアウェイキープ率のデータがあり、かつてのトップクラスは80%以上が当たり前だった。飛距離が伸びてきた近年は下がる傾向にあり、2008年を最後に80%超えは出現していない。それでも、日本よりははるかに高い数字を残していた。
そんな米ツアーの2020-21シーズンフェアウェイキープ率1位はブレンドン・トッドの75.25%。最近の平均的な1位の数字なのだが、稲森はこれを上回ったのだ。
フェアウェイキープが難しい狭い日本のコースで広い米ツアーを超えたのだから、もうその精度はワールドクラスと言っていい。
米ツアーでミスター・フェアウェイといえば真っ先にカルビン・ピートの名が挙がるだろう。若いゴルフファンにはなじみがない名前だと思うが、1980年代を中心に米ツアーで12勝を挙げたアフリカ系米国人である。
このピートは1981年から何と10シーズン連続でフェアウェイキープ率1位を守り抜いていたのだ。稲森は現在6シーズン連続。ピートを超える日は来るだろうか。
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