完全撤廃にはもはや“白旗”!? スポーツするだけで消費税とダブルで取られる理不尽税「ゴルフ場利用税」はなぜなくならない?

現役世代はラウンドするたびに取られる「ゴルフ場利用税」。スポーツするだけで消費税とダブルで課税される理不尽な制度として批判も多いですが、なぜなくならないのでしょうか? 日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏が解説します。

平成元年の消費税導入時もゴルフ場利用税だけは残った

 ゴルフをプレーするたびに「ゴルフ場利用税」を取られていることを気づいていますか? 9ホール以上のゴルフ場でプレーした場合、ゴルファーのプレー代に上乗せする形で加算されています。

あまり気にしていない人もいるかもしれませんが「塵も積もれば山となる」です

 上限は名門と言われるゴルフ場の1200円で、標準税率は800円。下限は都道府県によってまちまちで、例えば埼玉県が300円だったり北海道が400円だったりします。その値段はゴルフ場の利用料金やホール数、付帯設備などによって算出された等級によって決められています。しかし、この決め方自体が都道府県によってまちまちであるため、金額にもばらつきがあるわけです。

 先日、筆者が千葉県の某ゴルフ場でプレーした際の明細書がここにあります。プレー代の1万7500円を含んだトータルの金額に対して10%の2050円が消費税として掛かってきました。この金額とは別に、ゴルフ場利用税500円が明細書には加えられていました。明細書に2種類の税金が同居していることに気づいたゴルファーからの「消費税に利用税の追い銭かい?」というダブルの税負担に対する不満の声は、根強く聞かれるところです。

 ここでゴルフ場利用税について、少し振り返っておきましょう。その起点は、昭和29(1954)年までさかのぼります。この年に創設された「娯楽施設利用税」の対象施設としてゴルフに課税された時は地方税(都道府県税)の扱いでした。ゴルフ以外ではパチンコ、射的、麻雀、ビリヤード、ボウリングなどの施設に課税されていたのです。

 問題は平成元(1989)年に消費税が導入された際に、この娯楽施設利用税が廃止されたにもかかわらず、ゴルフだけが「ゴルフ場利用税」と名前を変えて存続されたこと。ゴルファーだけが消費税とは別にゴルフ場利用税も負担させられることになりました。ダブルで課税される構造が、ここで生まれてしまったわけです。

 その後、ゴルフ関連5団体で組織された日本ゴルフ関連団体協議会(以下ゴ連協=すでに解散)が平成10(1998)年から全国のゴルフ施設を中心に、利用税の撤廃を求める署名運動を展開。その後の5年間で延べ840万人近い署名を集めています。

 こうした運動の甲斐もあって、平成14(2002)年の税調(税制調査会)で18歳未満、70歳以上、障害者は手続き(身分証明書の提示など)で非課税とすることが決まっています。しかしその後はゴルフ界の悲願とも言えるゴルフ場利用税撤廃はかなわないままなのです。

自治体が既得権となっているゴルフ場利用税を手放すわけがない

 その原因は、何と言っても、すでにこの「ゴルフ場利用税」の味を占めてしまった地方自治体の抵抗です。(一社)日本ゴルフ場経営者協会のデータによれば、昭和32(1957)年に116だったゴルフ場数は平成14(2002)年に2460まで増加。支払われた利用税は平成4(1992)年には延べ利用者数1億200万人で1035億円に達していました。

 ゴルファーから徴収された利用税はゴルフ場のある都道府県に集められ、交付金として全体の3割が都道府県、7割が市区町村へと流れる仕組みとなっています。しかも、これが目的税ではなく一般税であるため、地方自治体にとっては使い勝手のいいことこの上ないというのが本当のところなのです。

 平成27(2015)年度決算のデータでは地方税のうち交付金が占める割合が最も多いのは、4200万円のゴルフ場利用税が入る京都府笠置町で、26.5%でした。6500万円の利用税収入がある同府南山城村が21%など、依存度の高い自治体はいくつもありました。

 当時「ゴルフ場利用税堅持のための全国市町村連盟」の代表世話人・静岡県小山町の込山正秀町長は、筆者のインタビューに「堅持しなかったら市町村は大変なことになります。中でも全体の75%は本当に弱小市町村ですから、利用税がなければやっていけません」と、持論を語っていました。代替財源が用意されない限り、もはや既得権となっているゴルフ場利用税を手放す気などさらさらないのが、地方の首長たちの本音なのです。

 しかし、すでにそれ以前からゴルフ場は預託金の返還問題で窮地に追い込まれていました。民事再生や会社更生を選択し、裁判所のお世話になる状況が頻発します。さらに“ハゲタカ”と言われた外資ファンドに買収され、客単価は大きく下がります。ネット予約で3000円を切るプレー代が提示されるコースまで出る中、低料金で頑張るゴルフ場経営者たちは数百円の利用税を外税にすることをためらうという現象が起きてきました。「外税の金額を見たお客様がどう取るか」とおもんばかり、料金内に潜らせてしまいます。低料金のゴルフ場ほど、明細を見るとゴルフ場利用税の存在は際立ってしまうからです。

 そうした中、ゴルフ場は2460コースあったといわれる2002年のピーク時(日本ゴルフ場経営者協会調べ)より300以上も減ってしまいました。ゴルフ場が減り、ゴルフ人口が減り、ゴルフ場利用税も減っていく負のスパイラル。1000億円を超えていたゴルフ場利用税の税収が4割近くまで減り、ゴルフ場の周辺では雇用も固定資産税も失われています。回り回って、結局困るのは地方自治体であるはずなのです。

東京五輪は千載一遇のチャンスだったのに撤廃派が内部分裂

「消費税とゴルフ場利用税とダブルで課税されている」「スポーツに税金をかけること自体がおかしい」と“正論”を掲げつつも「連敗街道」を歩み続けてきたのがゴルフ場利用税撤廃派。実は今年行われた東京オリンピック・パラリンピックも、ゴルフ場利用税の撤廃には追い風のタイミングと言えたのです。

 2019年に五輪1年前のテストイベントとして開催された日本ジュニアゴルフ選手権に来日したIGF(国際ゴルフ連盟)のピーター・ドーソン会長が「ゴルフ場利用税が廃止される方向に進み、接待の道具というイメージが払しょくされ、オリンピック競技の健全なスポーツとして認識されるように(日本のゴルフが)なってほしい」と発言。

 これに大いに力を得たのが、当時の自民党ゴルフ振興議連会長で超党派ゴルフ議連最高顧問でもあった衛藤征士郎衆議院議員。「国際化時代にスポーツであるゴルフに税金をかけていること自体、国辱もの」と指摘し、「五輪のゴルフ競技に出場する選手にゴルフ場利用税をかけるのか」と、早期の撤廃を主張したのです。

 しかし、そんな中、撤廃派の団結が大きく揺らぐ事態が発生していました。

 まず「一般ゴルファーから利用税を徴収するのではなく、ゴルフ場から徴収する方法へ変更する案が撤廃派の一部から出て、すでに疲弊していたゴルフ場側から猛反対の声が生まれて反対派が大混乱に陥ったんです」(当時を知る関係者)。

 さらに「オリンピックもある訳だし、一定の成果をあげたい」(スポーツ庁健康スポーツ課)との理由から、完全撤廃を一貫して主張してきたゴ連協の方針を無視する形で方針を大きく変更。自国での五輪開催というタイミングで「非課税対象の枠を『18歳未満と70歳以上』から『30歳未満と65歳以上』まで拡大する」という現実路線に舵を切りました。「事実上完全撤廃の目が消えたことで、ゴ連協の存在意義はなくなり、解散の道をたどったんです」(当時を知る別の関係者の話)。

「30歳未満と65歳以上」まで非課税枠が広がれば、120億円の減収となります。これは全体の3割に当たる都道府県分の130億円に非常に近い数字。「そのため財政の苦しい市町村分ではなく、都道府県分から引いてほしいと要望する」と、関係者は説明していました。

 しかし、この案も「代替財源が見当たらない」との理由から、結局この年(2019年)の暮れにまとまった税制改正大綱に盛り込まれることはなかったのです。同時に東京五輪のゴルフ競技に出場する選手のゴルフ場利用税は免除されることが決定しました。大会の行われる霞ヶ関カンツリー倶楽部の利用税は1日1200円。男子2日、女子1日の練習ラウンドと男女それぞれ4日間の分は、単純計算で79万2000円の減収となったわけです。

 結局要望こそ出されたものの、東京オリンピックも追い風となることはなく、2020年、21年と2年連続して、税調→税制改正大綱の流れの中で、ほとんど注目されることすらなかったわけです。

「ゴルフ場利用税」から名前を変えて目的税化する“現実路線”に

 結局、これからの方針も含めて、イチから作戦を練り直す段階まで後退してしまった感は否めません。スポーツ庁に直接、今後の動きについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「今後はどういう制度設計にするのか、(一般税ではなく)法定目的税化すべきか、名称を変えるべきか、などゴルフ場利用税のあり方をどうすべきかを検討していくことになります」

 要するに「ゴルフ場利用税」という名称を変えてイメージを一新し、利用税の使い道もゴルファーに還元されるような目的税化を視野に入れ、税調に要望を出していく、ということのようです。そのための会合が、有識者、JGA、スポーツ庁の関係者らの出席で、年明けにも開かれるとのことです。

すでに千葉県の市原市や兵庫県の三木市など、ゴルフ場と協調路線を取っている自治体もいくつかあります。まずは、ゴルフ場利用税をがっちり囲い込んで離さない地方自治体の首長さんたち堅持派と、スポーツ庁とJGAら撤廃派が、ひざを交えてじっくり話し合っていくことが大事なのではないでしょうか。前述したとおり、ゴルファーがいなくなり、ゴルフ場が減り続ければ、結局税収もなくなり、どちらも共倒れということになるのですから。

【写真】「利用税1200円」のゴルフ場 霞ヶ関CCのめったに見られない会報や名物・東10番を見る

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