国内女子プロゴルフで“子連れ参戦”が珍しくない日は来る? 若林舞衣子の14年ぶりママさん優勝から考える | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

国内女子プロゴルフで“子連れ参戦”が珍しくない日は来る? 若林舞衣子の14年ぶりママさん優勝から考える

2021年のGMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップで優勝したのは若林舞衣子。出産後のツアー優勝は、日本では若林で6人目です。今後は日本ツアーでも“子連れ参戦”が珍しくない日は来るのでしょうか。

出産後のツアー優勝は日本では若林で6人目

 勝利に酔いしれる母の腕の中、眠い目をこする息子。微笑ましい光景が繰り広げられたのは、2021年のGMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップです。

2021年GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップに優勝し、長男・龍之介くんを抱く若林舞衣子 写真:Getty Images

 主役となったのは若林舞衣子。プレーオフ2ホール目にバーディーを奪って野澤真央を下し、4年ぶりとなるツアー4勝目を飾りました。19年4月2日に長男・龍之介くんを出産。翌20年開幕戦から復帰する予定でいたのですが、コロナ禍で試合の中止が続きました。

 その間を前向きにとらえて準備をさらに重ね、復帰戦となったのは6月のアース・モンダミンカップ。2戦目の8月のNEC軽井沢72ゴルフで優勝争いをしたのが印象的でした。21年もニッポンハムレディスクラシックで2位となり、翌週のこの大会で激戦を制したのです。

 試合に出ている間は、近くに住む姉の島田香織さん一家に預けられている龍之介くんですが、最終日には生まれて初めて母の試合を見にやってきたのです。単身赴任している龍之介君の父、佳和さんも一緒でした。

 出産後のツアー優勝は、日本では若林で6人目です。そのうちの一人、山岡明美(故人)は、長女を出産後にプロとなっているので少し状況が違いますが、それ以外はいずれもプロとして試合に出る中での出産でした。

 日本ツアーで初めてママとして優勝したのは森口祐子。1984年の11月に長男を出産した後、長女出産を間に挟んで18勝しています。ツアー通算69勝の樋口久子は、88年の長女出産後に2勝を挙げています。出産が42歳と当時としてはかなり高齢だったことを考えると、心技体の強さに驚かされます。
 
 通算10勝のすべてが出産後なのは木村敏美です。若いうちに出産して復帰して活躍するという人生の青写真をしっかり描き、それを実現し、子供2人も成人して今では孫もいるほどです。92年、95年賞金女王の塩谷育代も、出産後に3勝を挙げています。

 その後、ママになってから試合に出場する選手は徐々に増えてきています。毎週ツアー会場に赤ちゃんを同伴し、ママのプレー中はパパと過ごしていた茂木宏美も何度かチャンスがありましたが、残念ながら優勝には至っていません。優勝となるとなかなか難しいことは、若林が実に14年ぶりのママさんとしての優勝だったことからもよく分かります。

米国では妊娠中や赤ちゃんを連れての参戦も珍しくない

2020年TOTOジャパンクラシックで7カ月の大きなおなかを抱えてプレーする横峯さくら 写真:Getty Images

 出産してからも仕事を続けることは、現在ではごく当たり前になっています。アスリートの場合、肉体的な負担が重く、体に大きな変化を及ぼす出産にリスクがあることは否めませんが、それでも赤ちゃんを産んでから競技を続けるアスリートは、他のスポーツでも増えてきています。競技人生が長いゴルフの世界ではなおさらです。

 改めて説明することでもありませんが、出産という大仕事の後には育児が待っています。赤ちゃんはもちろんですが、子供は大人の都合に合わせてなどくれません。生活のペースもそれに合わせる必要が出てきます。一方、アスリートの生活は心身のありようだけでなく生活のペースも“自分ファースト”が基本。まったく正反対と言ってもいいでしょう。けれども、皆、その中で折り合いをつけて戦っています。ゴルフだけが生活の中心でなくなったことを前向きにとらえる場合もあるようです。

 最近では、横峯さくらに赤ちゃんが誕生しましたが、彼女は米ツアーで子供を抱えて転戦する仲間たちを見て、赤ちゃんを産んでも試合に出続けたいと思ったそうです。アメリカでは大きなおなかを抱えてプレーするのも、赤ちゃんを連れてのツアー参戦も、30年以上前から珍しい光景ではありませんでした。それに対するケア(託児所)も用意されています。

 多忙なツアー生活のため、パートナーとの暮らしに難しさが伴うとされていた日本の女子プロの世界ですが、近頃ではそんなこともなくなってきました。それでも、まだまだツアーでの赤ちゃんは多くありません。人生は人それぞれ。さまざまな形があって当たり前ですが、ライフタイムスポーツのゴルフにおいて、女性が出産後も仕事を続けられるというのも自然な在り方の一つ。これが珍しくない光景になればいいのですが。

この記事の画像一覧へ(9枚)

画像ギャラリー

チャーリー・ウッズ 写真:Getty Images
チャーリー・ウッズ 写真:Getty Images
チャーリー・ウッズ 写真:Getty Images
チャーリー・ウッズ 写真:Getty Images
チャーリー・ウッズ 写真:Getty Images
2020年のPNCチャンピオンシップでフィストバンプするタイガーとチャーリーくんの幸せそうな1枚。この数カ月後に生死の境をさまようことになるとは思いもしなかっただろう 写真:Getty Images
大事故からの復帰戦を2021年末のPNCチャンピオンシップとしたタイガー・ウッズ。息子に何を伝えたかったのだろう? 写真:Getty Images
2021年GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップに優勝し、長男・龍之介くんを抱く若林舞衣子 写真:Getty Images
2020年TOTOジャパンクラシックで7カ月の大きなおなかを抱えてプレーする横峯さくら 写真:Getty Images

最新記事