ジョーダン・スピースが改造中のスイングを優勝争いの中でも貫いた理由 【石井 忍のここスゴ!】

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのはジョーダン・スピース。優勝争いの中、スイング改造中のスピースは体の動きを意識しながらプレーしていた。

以前よりもゆったりとクラブを上げるスピース

■ジョーダン・スピース/1993年生まれ、米国テキサス州出身。2012年にプロ転向し、13年に初勝利。PGAツアー82年ぶりとなる10代優勝を達成した。15年のマスターズでメジャー初制覇。同年は全米オープンにも勝ち、シーズン5勝をマーク。世界ランキング1位に上り詰めた。17年の全英オープンでメジャー3勝目。昨年のバレロテキサスオープンで4シーズンぶりの復活優勝を果たす。PGAツアー通算12勝(メジャー3勝)、その他2勝

 カリフォルニア州のペブルビーチGLで開催された米PGAツアーのAT&Tペブルビーチプロアマ。優勝したのは32歳のトム・ホジー選手でしたが、今回は2位でフィニッシュしたジョーダン・スピース選手に注目しました。

優勝争いのプレッシャーの中でも改造中のスイングに取り組み続けたジョーダン・スピース 写真:Getty Images

 スピース選手は、2013年にPGAツアーで82年ぶりとなる10代優勝で初勝利を達成。15年にはマスターズ、全米オープンで優勝するなどシーズン5勝をマークし、世界ランキング1位、フェデックスカップ年間王者に輝いたトッププロです。

 そんなスピース選手ですが、17年の全英オープンでメジャー3勝目を挙げて以降、左手をケガしたこともあって勝利から遠ざかります。復活優勝を挙げたのは昨年の4月。4シーズンぶり、1351日ぶりの12勝目でした。

 AT&Tペブルビーチプロアマでスピース選手のプレーを見ていて感じたのは、世界ランキング1位に上り詰めた頃とスイングが変わっていることです。

 以前は、テークバックの早い段階で左手首を掌屈し、その角度を終始キープ。フラット目にクラブを上げ、どちらかといえば飛ばしよりも方向性を重視するスイングでした。

 一方、最近はややアップライト気味にテークバック。しかも、以前よりもゆったりとクラブを上げています。

 以前のケガの影響なのか、理由は定かではありませんが、新しい動きにチャレンジしているのは確か。

 私は、スイング改造の中身や目的よりも、スピース選手が徹底して新しい動きにトライしていたことに興味を持ちました。

 ゴルファーなら誰でも、練習の場で新しい動きにチャレンジすることはあるはず。ただ、それを本番で試すのは勇気がいることです。

 それに、ラウンド中は感性を優先したくなり、体に馴染んだ今までの動きをしてしまうもの。しかし、スピース選手は優勝争いの中でも、新しい動きにチャレンジし続けていたのです。

スイング改造は実戦で試すことでブラッシュアップされる

 彼の取り組みは、アマチュアゴルファーの皆さんにも参考になるはずです。

 例えば、「ハンドファーストでインパクトしたいから、ダウンスイングで左のポケットをしっかり回転させる」というスイング改造に着手しているとします。

 練習である程度感覚をつかんだら、ラウンド中も素振りや実際のスイングでトライしてみてください。一回ミスショットが出ても、諦めずに続けることが大切です。

 練習でうまくできても、本番で同じ結果が出るとは限りません。実戦でトライしてみることで、新たな発見や課題が見つかります。そして、それを再び練習の場に持っていくことで、新しいスイングがブラッシュアップされていくのです。

 スピース選手は、この試合では優勝することはできませんでした。しかし、今回の経験は大きなプラスになったはず。今後の彼の活躍に期待したいですね。

■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

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ペブルビーチGLのシグネチャーホール、7番パー3 写真:Getty Images
ジョーダン・スピース 写真:Getty Images
優勝争いのプレッシャーの中でも改造中のスイングに取り組み続けたジョーダン・スピース 写真:Getty Images

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