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「ウッズvsミケルソン」犬猿…友情…今は? 残念すぎる結末だけは見たくない【舩越園子の砂場Talk】
世界のゴルフ界にくすぶり続ける火種「スーパーゴルフリーグ」問題。現役の大物プレーヤーで公に賛同の意を表している唯一の存在であるフィル・ミケルソンは、いったいどこに向かおうとしているのか? PGAツアーに忠誠を誓うタイガー・ウッズとの友情の行方は?
ゴルフ界の2大スター“ウッズとミケルソン”明らかになった本当の関係
今から30年以上前。まだ大学生だったフィル・ミケルソンが米PGAツアーのノーザンテレコムオープンでアマチュア優勝を果たし、世界を沸かせたのは1991年のことだった。翌年、ミケルソンはプロ転向し、PGAツアー参戦を開始。それから4年後の96年、タイガー・ウッズがプロ転向し、PGAツアーで戦い始めた。
以後、ミケルソンとウッズの2人が米ゴルフ界を代表する2大スター選手となっていったことは、ご存じの通りである。
2人はお互いの言動で何度も衝突した。どちらかと言えば、ミケルソンがウッズに対して口にした言葉が物議を醸し、問題化するパターンのほうが多かったように記憶しているが、言い出しっぺがどちらだったかはさておき、きっと2人は見解や性格が正反対で互いに相容れないのだろうと思われていた。
そんな2人が同組で回ることになると、スタートホールで2人が挨拶や握手を交わすかどうかに注目が集まり、1番ティー周辺が記者やカメラマンで溢れ返ったことも何度かあった。
ミケルソンとウッズは「不仲だ」「犬猿の仲だ」。長年、ゴルフ界では、そう思われていた。
そこに変化が訪れたのは2017年の秋だった。4度目の腰の手術を終え、長いリハビリ生活を乗り越えたウッズが、ヒーローワールドチャレンジで試合復帰を果たした際、戦線離脱していた辛い日々に親身になって頻繁にメールや電話で激励し続けてくれたのは「フィルだった」と明かし、周囲を驚かせた。
成績においても人気においても、ゴルフ界のビッグ2と呼ばれてきた2人は、実は不仲でも犬猿の仲でもなく、友情を温め合い、支え合っていたのだと知らされて、なんとなくうれしい気持ちになったファンは少なくなかったはずである。
そんなファンの意識を汲み取って企画されたのだろう。翌18年にはウッズとミケルソンの世紀の対決として「ザ・マッチ」の創設が決まり、11月のサンクスギビングの夜に2人の一騎打ちのマッチが開催された。
TV中継は有料放送のみだったが、マッチが始まると購入者が殺到してパンク状態になり、一時、生中継が切れるアクシデントがあったほどで、全米のみならず世界中が2人のマッチに釘付けになった。
笑顔を交えながらエキサイティングなマッチを披露したウッズとミケルソンの姿を見て、ゴルフファンはみな安堵し、ゴルフ界を率いていくリーダーは、これまでもこれからもウッズとミケルソンの2人だと誰もが信じた。
ザ・マッチは、その後もキャスティングを変えながら次々に開催され、ウッズは2度目まで、ミケルソンは4度目まで出場。昨年開催された5度目のマッチはブルックス・ケプカとブライソン・デシャンボーの対決へとすっかり内容は変化したのだが、米ゴルフ界のさまざまなモノやコトがそうだったように、このザ・マッチも、すべてはウッズとミケルソンから始まった。励まし合ってきた2人の直接対決をぜひとも見たいと大勢の人々が思ったことが、このマッチ創設の発端だった。
だが、そうやって創設されたザ・マッチを実際に戦ったミケルソンが、そのとき胸に抱いたものが、温かい友情物語より、むしろ放映権に関するお金の問題で、しかも向上のための提言というより、むしろ自身が儲けそこなっているという不満だったと知らされて、今、多くのファンが落胆させられているのではないだろうか。
PGAツアーに背を向けるミケルソンと忠誠を誓うウッズ
何回目のザ・マッチでの出来事だったのかは明かされていないのだが、ミケルソンは試合会場で自身が雇った撮影クルーをロープ内に入れて撮影し、これまた詳細不明だが、何かしらの“自身のメディア”を通じてマッチを生中継したいと申し出たところ、「PGAツアーから放映権料として1ミリオン(100万ドル=約1億1500万円)を(中継局に)支払うよう強いられた」という。
「素晴らしい1打1打を打っているのは僕らプレーヤーなのに、その僕らが自分たちを撮影するためにお金を払わなければならないのはおかしい。莫大な放映権料から得られる莫大な収益がすべてPGAツアーに行き、僕らプレーヤーには何もない、何も得られないのはおかしい。PGAツアーにはいろいろ問題あるけど、この放映権の問題こそは最大の問題だ」
さらにミケルソンは、サウジマネーをバックに付けた新ツアーの創設構想が、「PGAツアーがこうした問題点に気付き、誤った体制を正す二度とない好機になる」とまで言い放ち、新ツアーに傾倒する言動を見せ続けている。
まるで新ツアーのアンバサダーか広報官のように振る舞うミケルソンを筆頭に、デシャンボーやダスティン・ジョンソン、リー・ウエストウッドらがこぞって新ツアーへ移籍するのではないかと見られてきた。
「新ツアーへの移籍を考えている選手を僕は20名知っている」
ミケルソンのそんな言葉が巷に出回った矢先のジェネシス招待最終日、ジョンソンとデシャンボーが続けざまに声明を出し、「さまざまな噂や憶測をクリアにしたい」「新ツアーには行かない」「僕が戦う場所はPGAツアーだ」と初めて明言した。
これにより、ミケルソンが誇らしげに口にした「20名」という人数勘定に変化が起こったことは間違いない。
一方で、早い段階からPGAツアーに忠誠を誓っている選手たちもいる。その筆頭がウッズだ。
「僕はPGAツアーをサポートすると心に決めている。メジャー15勝、通算82勝を挙げてきた僕のキャリアの始まりも終わりもそこにある」
元世界ランキング1位のローリー・マキロイもケプカもジャスティン・トーマスも、現世界1位のジョン・ラームも、みなウッズ同様、「PGAツアーに忠誠を誓う」と言い切っている。
ミケルソンの45勝の栄光もファンとの相思相愛もすべてはPGAで起きたこと
しかし、せっかくウッズとの無二の親友ぶりが世の中の知るところとなったミケルソンが逆方向を向き、ウッズとミケルソンが「PGAツアーか、新ツアーか」で対極に立ってしまっていることが残念でならない。
新ツアーが本当に創設され、スタートするのかどうかは依然、定かではなく、創設されたとしても、誰がどちらのツアーを選ぶかは、その選手の自由だ。
ウッズらがPGAツアーに居続け、ミケルソンらが新ツアーに移ると決意するのなら、それはそれである。
ミケルソンの新ツアー寄りの発言や姿勢に業を煮やしたトーマスが口にした通り、「あっちへ行きたいのなら行くがいい。誰も引き留めはしない」のである。
しかし、30年もお世話になってきたPGAツアーを侮辱するようなミケルソンの言動は、あまりにも情けなく、残念でならない。
ミケルソンが大観衆の輪の中で眩しいスポットライトを浴びてきた場所は、他のどこでもないPGAツアーだ。親指を立ててサムアップし、笑顔で頷き、拍手と歓声に応え、通算45勝を挙げたのもPGAツアーだ。
サインを待つファンがいれば、30分でも1時間でもサインをし続け、キャップやフラッグを手渡しながら必ず一言、声をかけ、彼が誰よりもファンサービスに努めてきた場所もPGAツアーだ。
愛妻と実母が同時に乳がんと診断されたとき、選手も関係者もファンもみんなピンク色を身に付けて現れ、試合会場がピンク一色に染まった様子を見て、彼が身を震わせながら感謝した場所はどこだったのか?
すべてはPGAツアーだった。
そのPGAツアーを批判し、愚弄することは、彼自身の歩みや努力、コツコツ紡いできた素晴らしいストーリーまで掻き消してしまいそうで、そうなってしまうことは、あまりにも残念すぎる。
せっかく築いた財産を自ら汚さないでほしいし、消さないでほしい。
今はそう願う以外に、できることが見つからない。
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