一般的にやさしいと言われるのは「マレット型」だが……
ゴルフ界には、「パット・イズ・マネー」という格言があります。たとえティーショットで300ヤード飛ばしても、10センチのパットを外していては、スコアアップは望めません。つまり、ゴルフにおいてはパットの良し悪しが勝負を決める重要なものだという教訓が語られているわけです。
プロであれば勝負どころのパターを決められるかどうかが優勝できるか否かの分かれ目になるでしょうし、アマチュアであっても3パットをゼロにできたら、スコアは間違いなく良くなるでしょう。ハンディキャップや平均スコアに関係なく、パターは非常に大事なクラブなのです。
では、パターの打数を少しでも減らすにはどうすべきなのでしょう? もちろん練習を重ねて打つ技術を高めるのも1つの方法ですが、まず何より、自分に合ったヘッド形状のパターを見つけることが大切です。
パターのヘッド形状は大きく分けて「ブレード型」と「マレット型」の2つがあります。
まず「ブレード型」は、「ピン型」とも呼ばれ、細長く小ぶりで、奥行きの狭い形状のパターです。古くからある伝統的な形状で、手の平の感覚を生かして、繊細なタッチが出しやすいと言われています。タイガー・ウッズ選手や松山英樹選手が長年使用しているヘッド形状としても有名で、パターが得意なプロ、上級者に愛好者が多くいます。
対照的に「マレット型」は、ヘッドサイズが大きく、奥行きも深くなっています。ヘッドが大きい分、形状のバリエーションも非常に豊富で、オデッセイの「#7」や「2ボール」、テーラーメイドの「スパイダー」など、さまざまなモデルが存在しています。
このブレード型とマレット型を比較した時に、やさしく初心者向きなのはマレット型であると言われます。ネックの形状にもよりますが、マレット型はストローク中のフェース開閉が小さくなりやすい傾向にあり、初心者の手打ちでもボールを真っすぐ打ち出しやすくなっています。
また、ヘッドが大きい分、重心が深くなるのもマレット型がやさしいと言われる所以です。ヘッドの直進性が高く、ミスヒットしても転がる距離が変わりにくくなるからです。実際、初心者向けに販売されるクラブセットの中身を見ると、マレット型のパターが入れられていることがほとんどです。
適正パターを選ぶには「利き目」を把握しておきたい
このようにヘッド単体での性能を考えると、マレット型の方がミスに強く、やさしいと言えそうです。しかし、それだけでマレット型を選んでおけばOKと考えるのは早計です。
なぜなら、最適なパターを選ぶには、自分自身のストロークとヘッド形状の「相性」も大事になってくるからです。レベルに関係なく、ゴルファーによってはマレット型よりもブレード型の方が相性が良く、パットの打数が減る可能性もあるので注意が必要です。
このヘッド形状との相性を見極めるには、自分の「利き目」を知る必要があります。
利き目の調べ方は簡単で、家でもできますので、ぜひ試してみてください。まず、少し離れた目標物(動かないものであれば何でもOK)を両目で見ます。次に、親指と人差し指で丸を作り、その目標物を囲むように手をかざしましょう。その状態で交互に目を瞑るように、片目で目標物を見て、両目の時と同じ見え方をする方が、利き目になります。
この利き目が右か、左かによって、パターのストロークの傾向に大きな違いが出てきます。
まず、利き目が右で、ボールがスタンス中央よりも左足寄りにある場合、ボールを斜め上から見るような態勢になります。そのままの目線でボールを打つと、インパクトでヘッドが下から上に動くアッパーブローになりやすく、ロフトが寝た状態で当たります。
一方、利き目が左の場合は、同じ位置にボールがあっても、今度はボールを真上から見る態勢になるため、ヘッドが上から下に動くダウンブローの形でボールをとらえやすく、ロフトも立って当たる傾向が強くなります。たかが利き目と思うかもしれませんが、右と左のどちらが利き目かによって、ストロークの傾向が真逆になってしまうのです。
利き目が右の人がマレットを選ぶとアッパーブローになり過ぎる!?
実はこのようなストロークの違いは、ヘッド形状によっても起こります。ブレード型は奥行きが狭く、重心が浅い分、ロフトが立って当たりやすく、ヘッドの入射角もダウンブローになります。一方、マレット型は重心が深くなるので、アッパーブローにヘッドが動き、インパクトロフトは寝る傾向にあります。
こういった特性を踏まえた上で、利き目によるストロークの傾向を相殺するようなヘッド形状を選ぶと、ボールの転がりが安定し、距離感や方向性が格段に良くなります。
例えば、利き目が右であれば、ブレード型のパターを選ぶと、インパクトの入射角やロフトが適正になります。逆に、マレット型を選んでしまうと、アッパーブローかつロフトが寝てる当たる傾向に拍車がかかってしまい、ボールの手前でダフッたりと、とんでもないミスになる危険があるわけです。
このようにパターは、見た目が難しそうかやさしそうかだけを見て形状を選ぶと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。人によってやさしい、転がりが良い、距離感が合うと感じるモデルはさまざまですし、場合によっては一般的に難しいと言われる形状であることも十分に考えられます。
まずは、パターのヘッド形状による特性と利き目による特性を理解した上で、モデルを絞っていくのがおすすめです。その上で、試打を重ねて、スコアアップにつながる最適なパターを見つけてください。