4日間で5回も直ドラを披露した渋野
米国女子ツアー「ロッテ選手権」が開催されました。2週前の「シェブロン選手権」で4位だった渋野日向子選手は、この大会でも調子の良さをキープ。
韓国のキム・ヒョージュ選手と最後まで優勝争いを演じ、2位でフィニッシュしました。
米ツアーメンバーとしての初勝利は叶いませんでしたが、シーズン前半戦でシード獲得をほぼ確実にしました。

さて、この大会で大きな話題になっていたのが、渋野選手の“直ドラ”です。
直ドラとは、ティーアップせずに芝の上のボールをドライバーで打つショットのこと。
成功すれば飛距離を稼ぐことができますが、少しでもインパクトがズレるとミスになる繊細なショットのため、プロでも試合ではあまり使いません。
そんな中、渋野選手は、今大会の4日間で5回、距離を稼ぎたいパー5のセカンドショットで直ドラを披露しました。
試合中に直ドラをしたことは、渋野選手のコンディションの良さを象徴するものでもありますが、一方で直ドラが彼女のショットのクオリティーを保っていたという側面もあります。それは、渋野選手のスイングのクセが関係しています。
彼女は、スイング中に軸を右に倒す傾向があります。この動きが大きくなると、アッパー軌道がキツくなり、ボールが左右に曲がりやすくなってしまうのです。
分かりやすく極端にいえば、アマチュアゴルファーでいう “あおり打ち”のような傾向があるわけです。
球筋を安定させるためには、スイング軸を一定にキープしなければいけません。
ましてや、わずかなズレがミスに直結する直ドラを打つ時は、軸ブレはNG。軸を右に倒して振ると、直ドラは絶対に成功しません。
渋野選手は、今大会の要所で直ドラをすることで、「軸を保つ」という意識を確認しながらプレーできたのではないでしょうか。
この意識は、直ドラ以外のショットにも有効です。軸をキープしながらスイングできれば、ヘッド軌道が安定します。
例えばアプローチショットやコントロールショットなど、強弱をつけてスイングする時でも、クラブの動きが安定して狙い通りの球筋、距離を打ちやすくなります。
アマチュアは練習でも直ドラをやらないほうがいい
「そんなに効果があるなら、やってみようかな?」と思う人がいるかもしれませんが、直ドラはアマチュアゴルファーにはオススメできません。
練習でもやらない方がいいでしょう。その理由は、アマチュアゴルファーはアウトサイドインのカット軌道でスイングするタイプが多いから。
芝の上のボールをドライバーで打とうとすると、ヘッドを上から入れやすくなります。つまり、軸が左に傾いてカット軌道がさらにキツくなってしまうのです。
カット軌道でボールがつかまらないスライサーは、逆にティーを高くして練習してみてください。
ティの高さを変えるだけで軸の管理がしやすくなり、ボールをつかまえやすくなるはずです。
渋野日向子(しぶの・ひなこ)
1998年生まれ、岡山県出身。2019年のAIG全英女子オープンでメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位と躍進した。2020-21シーズンは、日本ツアーで2勝。同年に米国女子ツアーのファイナルQTを20位で突破し、今季から米ツアーを主戦場に戦う。国内6勝、海外1勝。サントリー所属。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。