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- “必ず右端”で練習するフェードヒッター渡邉彩香 スライサーが真似してはいけない理由
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、「CAT Ladies」での渡邉彩香のドライビングレンジの打席選びです。
持ち球フェードは右端、ドローは左端打席が良い?
8月19~21日、神奈川県の大箱根カントリークラブで「CAT Ladies」が開催されました。この試合、私は以前からスイングを見ている大西葵選手のキャディーを務めました。今回は、試合会場のドライビングレンジで注目した渡邉彩香選手の打席の使い方について話をさせてもらおうと思います。
渡邉選手といえば、女子ツアー屈指の飛ばし屋ですよね。過去には、ドライビング女王コンテストで連覇を達成したこともありますし、今回の「CAT Ladies」終了時点でのドライビングディスタンスは247.59ヤードで10位にランクイン。今年は、5月の「ほけんの窓口レディース」で通算5勝目を挙げています。
そんな渡邉選手は、練習日から最終日まで、レンジでは常に一番右端の打席で練習していたのが印象的でした。彼女はなぜ、いつも右端の打席を好んで使うのでしょうか? それは、持ち球がフェードということが影響しています。
フェードボールを打つには、インパクト前後のクラブの軌道をアウトサイド・イン(ヘッドが外側から下りてきて内側に抜ける)にする必要があります。そのためには、体の左サイドをしっかり回転させてターゲットよりも左にヘッドを振り抜くことがポイントになります。渡邉選手は、左に振り抜くには左の空間が広いほうがイメージを出しやすいと考え、一番右端の打席に立って練習していたのです。
ちなみに、最終日、私がバッグを担ぐ大西選手と渡邉選手は同じ組でした。スタートホールは、ほぼストレートのパー4。ティーイングエリアはティーマーカーの幅が広めに設定されていたのですが、彼女は右のティーマーカーのすぐ横にティーアップしていまいた。左の空間を使って振り抜くイメージを持つため、コースでも徹底して右端に立っていたのです。
一方、大西選手はドローヒッターです。ドローを打つにはフェードと反対のヘッド軌道、つまりインサイド・アウトに振ることが大切です。渡邉選手の話から考えれば、大西選手は一番左端の打席に立ち、右の空間を使うイメージで球を打ったほうがいいように思いますよね。
しかし、彼女の場合は真ん中からやや右側の打席を使って練習をします。もともと、インから入れるスイング傾向がある大西選手は、右のスペースが広く見える左端の打席に立つと、インからヘッドを入れ過ぎてしまうんです。そのクセを修正するため、真ん中からやや右側の打席を利用しているというわけです。
スライスに悩んでいるなら左側の打席を使う
渡邉選手、大西選手のレンジ打席の選び方は、皆さんの参考にもなります。もしも、スライスで悩んでいるなら、渡邉選手とは逆に左側の打席を使うと、右にヘッドを出しやすくなり、インサイド・アウト軌道で振り抜きやすくなります。
ただし、球筋が変化してきたと感じたり、チーピンやひっかけが出るのに左打席で打ち続けるとオーバードゥ(スイング矯正を過度に行うこと)になってしまいます。その場合は、打席を徐々に右へズラしていくといいでしょう。今の自分のスイング、球筋を考慮して打席を選ぶと、効率的に上達できるはずです。
渡邉 彩香(わたなべ・あやか)
1993年9月19日生まれ、静岡県出身。2014年のアクサレディスでプロ初勝利。持ち前のドライバーの飛距離を武器に、翌年はツアー2勝を挙げて賞金ランキング6位と活躍。その後、スランプに陥るが、2020年のアース・モンダミンカップで復活勝利。今シーズンは、「ほけんの窓口レディース」で通算5勝目を飾った。大東建託所属。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
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