ゴルフはビデオ裁定よりプレーヤーの合理的な判断が優先される
「えええ~っ、完全に“OB”なのに点が入ってしまった!」
サッカーFIFAワールドカップのグループステージ第3戦、スペイン代表を下した日本代表の決勝ゴール、三笘薫選手によるゴールライン間際でのアシスト、いわゆる“三笘の1ミリ”の話です。普段まったくサッカーを見ない筆者が、ゴルフ脳であの映像を見ると、そのように感じられます。ゴルフの場合、線のコース側の縁がOBか否かの境界線となるからです。

ゴルフとサッカーのルールが異なるのは、境界線だけではなく、ビデオ裁定の扱いも違います。2023年のゴルフ規則改訂を目前に、分かっているようで曖昧な「ゴルフ規則」を再確認しました。
スポーツ競技でのビデオ裁定は、サッカーの他に、相撲の物言いの場面、野球のリクエスト制度、バレーボールやテニスのチャレンジ制度などがよく知られています。
一方でゴルフ規則ではそれと異なり、ビデオ裁定よりもプレーヤーの判断が優先されることが、以下のように示されています。
〈プレーヤーが正確な決定を行うためにその状況下で合理的に期待されることを行っていれば、そのプレーヤーの合理的な判断は、たとえストロークを行った後にビデオの証拠や他の情報によりその決定が間違いであることが示されたとしても、受け入れられる。〉ゴルフ規則1.3b(2)
23年の規則改訂にあたって「球がコース上にあるのかどうか(OBなのかどうか)」を決定する場合にもこの規則が採用されることが追認されました。「そのような場所に関する決定は速やかに、かつ慎重に行われる必要があるが、多くの場合、正確にはできない」というのがその理由です。
トーナメントでは、比較的広いゴルフ場に散らばった100人以上のプレーヤーが同時に競技しているため、問題が生じるたびに録画を分析して裁定を下すという運用は現実的に不可能です。
また、プレーヤーが誠実にプレーするというのは、ゴルフの本質にも関わる大前提です。規則でもプレーヤーの誠実性を優先させているところが、紳士淑女のスポーツと呼ばれるゴルフらしさといえます。
次に、境界線と救済の扱いの違いを、白杭、黄杭、赤杭のそれぞれについて、23年からの改訂点と合わせて取り上げます。
境界線を示す杭や線そのものがそのエリアに含まれる
ゴルフコースは5つのエリアに区分され、ティーイングエリア、ジェネラルエリア(フェアウェイやラフなど)、バンカー、パッティンググリーン、そしてそれらと区分されたペナルティーエリアがあります。また、それらとは別にコース外の区域をアウトオブバウンズ(OB)と言います。それらの境界は線や杭で示されており、白、黄、赤の3種類があります。
OBのコース内との境界、また、ペナルティーエリアの他のエリアとの境界の縁は、当該のエリア側から見た外側の縁となりますので、線や杭自体はOBやペナルティーエリアの一部となります。また、球全体がOB区域やペナルティーエリア内に入っておらず、一部でもエリア外にかかっていれば、コース内となります。
ちなみに、“三笘の1ミリ”で注目されたサッカーのゴールラインはフィールドの一部なので、インプレー側ということになります。そこにボールの一部がかかっていたので、三笘選手のボールは“OB”ではありませんでした。