同伴プレーヤーが倒れた時は躊躇なくAEDを使うべき
猛暑の日々が続いています。去る7月10日、東京ゴルフ倶楽部(埼玉県)で行われた関東ゴルフ連盟主催の「関東月例競技」では、プレー中のA選手が最終ホールで倒れ、帰らぬ人となりました。

倒れた人が呼びかけに応じない場合の救命措置として、真っ先に行われるのが人工呼吸と胸骨圧迫、AEDの蘇生措置。東京ゴルフ倶楽部にも、キャディーマスター室とコース内に2カ所ある茶店に1台ずつ、計3台のAEDが備えられていました。
7月10日の事故の際に、A選手が倒れたのは9番ホールのグリーン。マスター室のAEDが持ち出され、5分後には現場に届いています。私も現地に行き、9番からマスター室まで歩いてみましたが、わずか290歩の距離でした。
しかし懸命の処置もむなしく、A選手は帰らぬ人となっています。実際のところ、猛暑の中でプレー中に倒れた場合、心臓疾患だけでなく脳梗塞などで亡くなるケースもあります。その場合もAEDを使うべきなのでしょうか。
現場近くのJR笠幡駅前・誠弘会池袋病院(埼玉県川越市)の林信一医師が、こうした時の対策について話してくれました。
「倒れている原因が実際には何かという特定までに、すぐには至らないかと思うんですね。そういった意味では、やっぱり心臓に関して(倒れた)きっかけになっている可能性というのも選択肢の中に入ってくるので、それはもう躊躇なく使っていただいてよろしいかと思います」と、AEDの使用については一刻も早く使用することを勧めます。
さらにこうも付け加えます。
「倒れた原因が、残念ながら心臓のほうということではなかった場合でも『心臓が原因で止まっているということではない』というところの除外も含めての確認にはなるので、そこは(AEDを)躊躇なくつけていただいて、機械の判断ではあったとしても、使っていただいてチェックしておくというのが一つだと思います」
つまりは危険な状態に陥っている原因が心臓ではない、と除外できる点でもAEDを使用する意味はあるというご意見でした。さらに「あくまで予測なんですけど」と前置きしたうえで、林先生が警鐘を鳴らすのはプレー中の脱水症状。
「脳梗塞を起こされていたという場合、大元は脱水なんだと思うんですね。脱水になっている段階で少し休息を取られたかもしれませんけれども、水分に関しては不十分だったところがあるんじゃないかと。脳梗塞というのは、血液中の水分がなくなると、いわゆる皆さんがよく言う『血がドロドロになる』ということになるので、その分、血栓、血の塊ができやすくなります。つまる原因となるものが血管の中でできやすくなるということになるので、そういったところが一つ可能性としてあるんじゃないかなと思います」
ゴルフ場の突然死は後を絶ちません。8月18日の午後にも、兵庫県明石市の横田秀示副市長(60)が市役所の同僚5人と朝来市内のゴルフ場でプレー中に倒れ、病院に運ばれましたが約6時間後に死亡しました。
平成30(2018)年に一般財団法人日本救急医療財団が発出し、厚生労働省のHPにも掲載されている「AEDの適正配置に関するガイドライン」の中に、こんな一文があります。
「ゴルフは他のスポーツに比べ競技者の年齢が高く、ゴルフコース1施設あたりの心停止発生率は、0.1/1年と高い。また、ゴルフ場は郊外にあることが多く、救急車到着までに時間を要すると考えられることからも5分以内の電気ショックが可能となるようにコース内に複数のAEDを設置することが望ましい」

こうした中、実に25台もの乗用カートにAEDを搭載しているゴルフ場があります。山梨県上野原市の上野原カントリークラブです。同コースで稼働している乗用カート50台の半分にあたる25台、講習を受けたキャディーさんが乗るカートに搭載され、「もしもの時」に備えているわけです。
「約1200人のメンバーの平均年齢は60歳を超える」(関係者)上野原CCで倒れたゴルファーが、山梨県では初めてドクターヘリを利用し、しかも一命を取りとめたこともあり、危機意識の高いゴルフ場として知られています。