ハーフで飲酒は当たり前!?
郊外のゴルフ場へはクルマで行くことが多いので、チェックアウトを終えて帰路に就く際の「高速は渋滞していないだろうか」という心配はいつものことです。

しかし、一昔前までは今とはまったく別の意味で、帰り道の運転にヒヤヒヤした経験のある人が少なからずいたといわれています。かつてはゴルフ場や高速道路の出入り口近くで、警察が検問を張ってクルマを待ち構えていることが珍しくなかったからです。
ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、そんな時代をこう振り返ります。
「確かに最近と比較すると、昔のほうがゴルフ場近くで警察官が待機していたケースは多かったように感じられます。土日を中心に、東名高速や東北道、それから常磐道などの都心方面の入り口付近で飲酒運転や酒気帯び運転を検挙するための検問がよく行われていました。警察が誰を対象とした検問をしているのかを知ることは難しいので、果たしてそれがゴルファーに向けたものだったのか断定することはできません」
「しかし、30年近く前までは飲酒運転や酒気帯び運転の定義が現在よりも曖昧だったのは確かですし、日本ではハーフターン時に取る昼食でビールなどお酒を飲むことはすっかり定番のスタイルになっていました。ですから、アルコールが血中に残ったまま運転しているゴルファーをあぶり出すのが目的という見方をしている人が多かったように思います」
警察も、春や秋には「交通安全週間」などと題した取り組みを実施していることがあるうえ、ちょうど同じタイミングでゴルフもオンシーズンに入るため、ゴルフ場を訪れる人の数は増加します。
要するに、クルマで来ているにもかかわらず、ついつい気分が良くなってハーフターンで飲酒をしてしまう人も多くなりやすいので、警察も取り締まりを強化しているのではないかと推測されていました。
検問の定番スポットを回避して帰るゴルファーも
では、警察の取り組みに対してゴルファー間で共有されていた「検問回避術」のようなものはあったのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。
「主にゴルフ場が密集している地域に近い高速道路の都心方面への入口で検問をよく見かけました。検問を実施する場所はランダムではなくある程度決まっていたため、一部のゴルファーの間では『あそこには検問が頻繁に置かれているから下道を使って避けたほうがいいぞ』といった情報が存在し、それが口コミで広まっていったことはあると思われます」
「ただし、あくまでも姑息な手段を取ろうとする少数派だけの話であって、ほとんどの常識的な人は『クラブハウスで十分な時間を過ごして、疑いなくアルコールが抜けてから帰ろう』という風に話し合っていました」
ところが、最近ではそのような飲酒の取り締まりを見る機会は少なくなってきたように感じられます。
ゴルフにお酒はつきものと長年言われてきましたが、飲酒運転が原因でさまざまな事故が起こり、厳罰化によってゴルファーに限らずドライバーたちの意識が変化したことが一番大きいのかもしれません。
2000年以降、全国での飲酒運転や酒気帯び運転の検挙数は10分の1ほどにまで減少したとのデータも存在します。そして、ゴルフ場の近辺で検問が行われなくなったのには、自らクルマを運転するゴルファーたちの秩序が昔よりも歴然と保たれるようになったからかもしれません。